「特集もっと楽しむミステリー!」Vol.11のテーマはクリスマス。東京創元社、扶桑社、ミステリーチャンネルから、窓越しに雪景色を眺めながら、暖かい飲み物とともに楽しみたい作品ばかりが集まりました。少し早めのクリスマスプレゼントとして、心まで温まる作品をご堪能ください!
© ITV PLC
愛する自宅で平和で静かなクリスマスを迎えようとしていたポワロは、シメオン・リーと名乗る大富豪から、自身の屋敷でクリスマスを過ごし、命を守ってもらいたいという依頼を受ける。親族が勢ぞろいするシメオン・リー邸では、腹に一物抱える親族を前にシメオンが不和の種をまいては彼らの動揺する姿を見て楽しんでいた。しかしポワロが到着したその晩、シメオンは喉をかき切られてこの世を去る。ポワロは、現場に駆け付けたサグデン警視、そしてクリスマス休暇で暇を持て余していたジャップ警部とともに事件の捜査に乗り出すことに…。
ポワロさんが活躍するクリスマスエピソードというと、ほかにも『盗まれたロイヤル・ルビー』がありますが、家族が寄り集まってクリスマスを祝うという同じ設定でもここまで雰囲気が変わるか、というほどに違いますね。世知辛い家族間の確執から始まり、血なまぐさい殺人が起こり、最後にはわずかばかりの家族再生の兆しを見せて終わる、という世界でも珍しいクリスマスエピソードだと思いますが、原作では登場しないジャップ警部がいい感じに物語をマイルドにしてくれています。
ドラマではすっかりおなじみの彼ですが、本作でもわりと初めの方から登場しており、彼の謎めいた夫人とその家族が一瞬登場するなど、実はファンとしては貴重なシーンも多いエピソードとなっています。愛と温もりあふれる妻の家族に早くもついていけていないジャップ警部を、殺人事件の捜査のためといって救い出すのがなんともポワロさんらしいと思います。
ミステリーチャンネルで、12/28(土)朝8:20より放送
「名探偵ポワロ」番組公式サイト
© BBC Studios 2023
『ブラウン神父』シーズン1からゲスト出演してきた聖ヴィンセント修道院のシスター・ボニファス。2022年から正式に彼女を主人公とするスピンオフ作品としてスタートした『シスター探偵ボニファス』の、2023年12月にイギリスで放送されたクリスマス特別エピソードです。
クリスマスが近づき、シスター・ボニファスとサム・ギレスピー警部補は不本意ながら実家に帰省することに。二人を乗せた汽車はグレートスローターを出発して順調に走り出したものの、記録的な寒さと大雪の影響を受けて、線路の途中で立ち往生してしまう。瞬く間に降り積もる雪を前に、救助はいつ来るのかと焦る乗客たち。おまけに盗難事件まで発生し、状況は悪くなるばかり。運よく(?)乗り合わせた警察官として、サムは事態を収拾できるのか?
一方、グレートスローターでも裸で凍死した男性の遺体が見つかり、捜査に当たるフェリックスとペギー。すべては無事にクリスマスを迎えるために、いつものメンバーが寒さに耐えながら事件解決のために奔走する…。
雪に閉ざされた列車、特別な事情を抱える乗客、不自由な空間で起きる不可解な事件…。どことなくアガサ・クリスティーの『オリエント急行殺人事件』を彷彿とさせる舞台となっています。物語の謎も特別エピソードらしい作りこみで、アリバイを整理し、動機を探り、可能性を一つずつ排除していく、という推理作品ならではの楽しみを味わうことができるはずです。聖ヴィンセント修道院の実験室を飛び出したシスターですが、狭く寒い列車であっても彼女の叡智に陰りはなく、どこであっても化学の知識でサムをサポートしていきます。
クリスマスエピソードらしい温もりのあるストーリーと、いくつもの伏線が最後に一つに収束していく謎解きの達成感、その両方を楽しめるスペシャルなエピソードとなっています。
ミステリーチャンネルで、12/21(土)夕方4:00より放送
「シスター探偵ボニファス クリスマスSP」番組公式サイト
著者:R・D・ウィングフィールド 翻訳:芹澤 恵
出版社(文庫名):東京創元社
ここ田舎町のデントンでは、もうクリスマスだというのに大小さまざまな難問が持ちあがる。日曜学校からの帰途、突然姿を消した少女、銀行の玄関を深夜金梃でこじ開けようとする謎の人物。続発する難事件を前に、不屈の仕事中毒にして下品きわまる名物警部のフロストが一大奮闘を繰り広げる。構成抜群、不敵な笑い横溢するシリーズ第1弾!
<推薦文>
ドラマ版も大人気のフロスト警部シリーズ記念すべき第1作は、まさに書名どおりクリスマスシーズンが舞台の物語。本来なら小さな町はお祝いムード一色のはずが、次から次へと厄介な事件が発生します。それら事件をフロスト警部がぼやいたり下ネタを言ったりしつつ、場当たり的に対処していくさまをどうぞお楽しみください。
(文:東京創元社 宮澤 正之)
著者:マージェリー・アリンガム 翻訳:猪俣 美江子
出版社(文庫名):東京創元社
小学校時代の同級生が病死したという死亡欄を見たわたし、アルバート・キャンピオン。卑劣ないじめっ子だった豚野郎(ピッグ)の葬儀に出席して半年後、事件の捜査に協力を求められたわたしは、警察署で見た死体に驚愕した! 本邦初訳の傑作に、十数年後の同じ地域が舞台の忘れがたい名作と、クリスティによる著者への心温まる追悼文を併録。英国ミステリの女王の力量を存分にご堪能あれ。
<推薦文>
「今は亡き豚野郎の事件」(すごい題名!)とその後日譚である表題作を収めた短編集。ともに英国ミステリならではの魅力にあふれた傑作で、合わせて読むことでさらに魅力が増します。そして、アガサ・クリスティによる著者アリンガムの追悼文が本当に名文なので、クリスティ愛読者の皆様にもぜひ読んでいただきたく思います。
(文:東京創元社 宮澤 正之)
著者:レオ・ブルース 翻訳:小林 晋
出版社(文庫名):扶桑社ミステリー
本格黄金期を代表する英国の探偵小説作家レオ・ブルースの「全」短編を世界で初めて網羅! クリスマス・パーティの夜に起きた秘書殺しの謎を、名探偵ビーフ巡査部長が快刀乱麻の名推理で解決する「ビーフのクリスマス」、遺産相続をめぐって練り上げられた策謀を暴く「逆向きの殺人」など、短い紙幅に「魅力的な謎の提示」と「合理的解決」という本格ミステリーの醍醐味が凝縮された、珠玉の全40編。ぜひ年末年始のお供にどうぞ。
<推薦文>
図書館で発掘された未完のタイプ原稿9編まで含めた、世界初の「完全版」。内容としては、もともとは50年代、日刊新聞のために書かれた犯人当てやトリック当てのショート・ミステリーですので、ちょっとしたひまつぶしに読むにも最適の一冊です。『ポワロのクリスマス』を意識した気配もある著者の代表的短編をお楽しみに。
(文:扶桑社 吉田 淳)
著者:レオ・ブルース 翻訳:小林 晋
出版社(文庫名):扶桑社ミステリー
ケント州の「死者の森」で、頭部を銃で撃たれた死体が発見される。地元警察が自殺として処理するつもりだと考えた被害者の妹は、警察を退職して私立探偵を始めたビーフに事件の再調査を依頼する。一方、その一年前、ウェリントン・チックルは一冊の日誌を書き始めた。「私は殺人を実行する決心をした。……そして、ここが肝要な点なのだが、――私には動機がないのだ」
<推薦文>
ビーフ巡査部長ものから、もう一冊、こちらは長編をご紹介します。クリスマスイヴの決行に向けて綴られる殺人計画の手記。「動機なき芸術殺人」の謎に名探偵ビーフが挑みます。冒頭から口の悪いビーフが、事件簿の筆記者である「ぼく」に「お前の書き方が悪いから俺が主役の本が売れないんだ」と難癖をつけててもう最高です。
(文:扶桑社 吉田 淳)
「特集もっと楽しむミステリー!」第9弾の今回は、クリスマスがテーマのミステリー作品を6作品紹介しました。暖かい部屋で素敵な飲み物とともに、充実したホリデーシーズンを過ごすお供として、ぜひお気に入りの一作を見つけていてください。
(文:うりまる)
ミステリーチャンネルのおすすめ番組をチェック!
12月のミステリーチャンネルでは、アガサ・クリスティー作品を大特集!
今年は、新たに映像化された「殺人は容易だ」をミステリーチャンネル独占日本初放送!さらに定番の人気作「名探偵ポワロ」や「ミス・マープル」も一挙放送でお届け!また、「ブラウン神父」のスピンオフシリーズ「シスター探偵ボニファス」から、クリスマスSPとシーズン3が登場!
また、ミステリーチャンネルでは、「アガサ・クリスティー検定」を公開中!ぜひチャレンジしてみてください!
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