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お気に入りの本を何度も繰り返し読むのも楽しいですが、新作や話題の本はいち早くチェックしたいもの。ミステリー小説なら、誰よりも早く謎解きをして事件解決!という爽快感を味わうこともできます。シリーズ最新作や人気作家の最新作、そして注目のミステリー作家の作品まで、2024年も新作ミステリー小説が続々と登場。チェックしておきたいミステリー小説の新刊情報をお届けします!
発売日:2024年11月5日
本多孝好(著)
出版社(レーベル):集英社
マンションの一室で発生したある殺人事件の現場に向かった県警捜査一課の和泉。そこで出会った女性警官・瀬良の第一印象は、簡単に言えば“最悪”。しかし、上の命令で瀬良とタッグを組み殺人事件を捜査することになり、和泉は彼女の類い稀な観察力を知ることになる。二人の懸命な捜査により、事件は徐々に輪郭を現していくが、待ち受けていたのは“正しい刑罰”の在り方を問う、予想外の真相だった――。
和泉と瀬良が立ち向かった最初の事件のほか、解決の糸口が見えない誘拐事件などテンポよく読み進められる短編・中編も収録。心揺さぶる結末に息を呑む、正義を問う警察ミステリー小説です。
発売日:2024年11月20日
柳広司(著)
出版社(レーベル):幻冬舎
新聞雑誌の原稿に、翻訳、暗号文の解読……。文章に関する依頼、何でも引き受けます。どんな無理難題もペン一本で解決してみせる“売文社″のもとには、今日も不思議な依頼が持ち込まれて――。
“売文社”を舞台にペンの力で事件を解決する4編からなるミステリーで、世の不条理に知恵とユーモアで立ち向かう、驚きと感動が詰まっています。ハラハラドキドキの展開に思わずあっと声が出てしまう面白さを堪能できます。
発売日:2024年11月20日
大山淳子(著)
出版社(レーベル):講談社
冴えない容貌、天才的な頭脳……自分のことは後回しで人の幸せを第一に考える稀代のお人好し弁護士、百瀬太郎。大福亜子と、ついに結婚! しかしまだ、結婚式をあげられず……。
累計50万部突破の大人気「猫弁」シリーズ最新作にはオールスターキャストが勢揃い。次から次へと迫り来る事件を百瀬は乗り越えられるのか? が見どころのシーズン2感動の完結編がいよいよ開幕です。優しい人たちがいる世界。読むだけで心が温まる、ほっこり系ミステリーはいつもよりちょっぴり事件も謎も喜びも驚きも多めに詰まっています。
発売日:2024年11月8日
ローラ・チャイルズ(著)東野さやか(訳)
出版社(レーベル):原書房
春のうららかな午後。レモン畑で開催する「レモンのお茶会」のために、セオドシアはたっぷりのレモネードとスコーンを用意した。おとぎ話のように美しいお茶会が幕を開け、続いて行われる野外のファッションショーに会場の期待は高まるばかり。ところがナディーンとデレインの姉妹は、ショーの運営をめぐって口喧嘩が止まらない。セオドシアはため息をつきながらも、仲裁ならお手のもの。いつもどおり二人を引き離して無事に解決……と思った矢先、厨房でナディーンが遺体となって発見された――。
紅茶とお菓子がいっぱいの美味しいミステリー「お茶と探偵」シリーズ25巻は、いつもの姉妹喧嘩から始まる物語なのですが、今回の被害者には衝撃を受けるシリーズファンも多いのでは?想像するだけでも気分が上がるお茶会と事件とのギャップがミステリー心をくすぐります。
発売日:2024年11月8日
六道慧(著)
出版社(レーベル):徳間文庫
小鹿の母・多治比文緒が島脱けした! 行方は杳として知れず、帝は追捕命令を出した。同じ頃、御所には金華猫(化け猫)が現れる。真相を探るべく動き始めた小鹿と、安倍晴明・吉平の親子。折しも、入内した彰子が住む飛香舎の雨戸に奇っ怪な絵が貼られた。晴明は「申の亀」と読み解いたが、それは謀反を示唆する不吉な絵だった……。
陰陽師・安倍晴明と、“孫娘”の少女・小鹿が、怪異に挑む、書影も美しい、妖気あふれる平安後宮ミステリー最新刊!
発売日:2024年11月8日
岩井圭也(著)
出版社(レーベル):祥伝社文庫
謎解きはいつも駅から始まった――。盗作疑惑で炎上中のバンド仲間から届いた、謎めいたメール (下北沢編)。暗号のような手紙を孫娘に送り、姿を消した祖母(調布編)。自由奔放な次女が堅実な長女に渡した、不思議なバースデーメッセージ(府中編)。それぞれの文言に隠されていた真意とは一体――。
小説×謎解き。下北沢、高尾山口、調布、府中、聖蹟桜ヶ丘。5つの駅から始まる実在のスポット目白押しの、参加型謎解きミステリー。京王電鉄の実在する駅を舞台にした連作短編。登場人物と一緒に謎解きをしながら真相に近づいていく物語への没入感がたまりません!
発売日:2024年11月8日
松嶋智左(著)
出版社(レーベル):祥伝社文庫
14歳の誕生日の二週間後、梓輝也は百貨店屋上から転落死した。梓凪子は葬儀の場で、姉であり輝也の母の未央子から、死の真相を調べてほしいと依頼される。遺書はないが、警察は自殺と判断していた。因縁を抱え警察を退職し、調査会社で探偵をする凪子は、困難な調査に乗り出す。訪れたのは、学校という名の“聖域”。何かを掴みかけたその時、凪子に魔手が迫る――。
島田莊司選・ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作、待望の文庫化です。女性を主人公にしたハードボイルド感溢れる一冊。リアルな感情描写がハラハラドキドキ感を掻き立てます。
発売日:2024年12月18日
笛吹太郎(著)
出版社(レーベル):東京創元社
昨日行った居酒屋が消えた? 引き出しのお金が四万七千円も増えていた? 誰も死んでいないのに姉が四方八方に喪中はがきを送りつけていた? ミステリ談義の集まりにひとりゲストをお呼びして、毎回カフェでゆるゆると行う推理合戦。それなりにみんながんばるのだけど、いつも謎を解き明かすのは店長の茶畑さんなのだった。
気軽に謎解きを楽しみたい人におすすめ! ユーモラスなパズル・ストーリー七編を収録。短編なのでスラスラ読み進められるのもポイント。各章のあとがきにある作者おすすめのミステリーも要チェック。爽やかな読後感の肩の凝らない”ミステリー集です。
発売日:2024年11月29日
羽生飛鳥(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA
鎌倉時代、都でつつましく暮らす老侍。その正体は、かつて都中の人々に恐れられた大盗賊・小殿だった。足を洗った彼に興味を持ち、話を聞きに来た下級貴族の橘成季と仏師運慶、少年僧侶明けの明星の三人に、小殿はかつてある貴族の屋敷から真珠を盗んだ話を語る。客人三人は不可能と思える盗みを成功させた手口の謎解きに挑むのだが……。
後鳥羽院、慈円、大姫ら鎌倉時代の重要人物たちが彩る、伝説の大盗賊をめぐる大胆で華麗なスタイリッシュ歴史ミステリー。最後に明かされる真相には思わず声が漏れてしまうかも!
発売日:2024年12月6日
赤川次郎(著)
出版社(レーベル):実業之日本社
女子大生亜由美のところに殺人予告の脅迫状が誤配され、中には花嫁をかたどった紙細工の人形が入っていた。本当の宛先を訪れると、本人は翌日が結婚式というのだから大変だ。無理矢理式に出席することにした亜由美たちの前で、ケーキカットが始まろうとしていたが、ケーキにはあの紙細工の花嫁が載っていて――。
女子大生亜由美と愛犬ドン・ファン活躍する中編二作品が収録された「花嫁」シリーズ第6弾は、コメディ要素もありながら、ちょっぴり恐ろしさも漂うミステリーが展開します。
発売日:2024年10月10日
薬丸岳(著)
出版社(レーベル):幻冬舎
フリーライターの溝口省吾は、無差別通り魔事件の加害者・小野寺圭一に事件のノンフィクションを出したいと持ちかける。彼からの出版条件はただ一つ。自分を捨てた母親を捜し出すこと。母親の行方を探るため、溝口は小野寺の生い立ちを辿り始めるが……。決して交わるはずのなかった人生が交錯した時、慟哭の真実が明らかになる!
物語は渋谷スクランブル交差点で発生した無差別通り魔事件の被害者・浜村明香里と、その事件を追うライターの溝口省吾の二人の視点で進んでいきます。タイトルにもなっている“罪の境界”を越えるか、超えないか。超えてしまう要因、超えてしまった後の罪の償い方。いろいろと考えさせられる社会派ミステリーです。
発売日:2024年10月3日
塔山郁(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
小学6年生の男子生徒がクラスメイトを毒殺した。男子生徒は、同じ毒で服毒自殺を遂げ、犯行動機がはっきりしないまま事件は幕を閉じる。30年後、ある人物が当時の関係者たちを訪ね歩くと、思いも寄らぬ事実と驚愕の真実が明らかに――。
30年の時を経て覆されていく真実。インタビュー形式で当時のことを語っていくのですが、インタビュアーが誰なのかも推理しながら読み進めていくのですが、証言をする元生徒たちの印象の変化が読み手を惑わせます。“時効”を迎えていることも相まって、黒幕や真相がわかると同時に、やるせなさも込み上げてきます。
発売日:2024年11月8日
C・A・ラーマー(著)高橋恭美子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
ミステリをこよなく愛する〈マーダー・ミステリ・ブッククラブ〉に新たなメンバー四人が加わった。顔合わせを兼ねた読書会。課題書はクリスティの『そして誰もいなくなった』。亜熱帯雨林の山中に建つ過去にタイムスリップしたかのような山荘に泊まりこみで行うのだ。ところが現地に到着してみると、散歩中に大きな石が落ちてきたり、翌日支配人が死体で発見されたり、さらに電話線が切断されて外部と連絡がとれず、山荘の周囲では山火事が起きて……。
山荘で展開するクローズド・サークル・ミステリー。誰もが怪しく感じられる描写にクリスティっぽさを感じながら読み進められます。本国ではシリーズは第6作まで発表されているとのこと。まだまだブッククラブの面々とミステリーを楽しめる時間が続きそうで、ワクワクが止まりません。
発売日:2024年12月2日
ケイティ・ブレンド(著)坂本あおい(訳)
出版社(レーベル):海と月社
キティ・コリンズ29歳。美人でお金持ちの人気インスタグラマー。だけどそれは表の顔。実は、かなりワケあり。“切れ味抜群〟のダークヒロイン、ここに誕生!
英国で 15万部超の 大ヒットを記録した〝個性派〟ベストセラー小説、待望の邦訳が登場です。クラブ帰りのある夜、しつこくつけてきた男をうっかり殺しちゃったと始まるシリアルキラーの物語。友情と恋愛、そして殺人。イギリス人の女性たちを虜にしたケイティ・ブレンドのデビュー作です。
発売日:2024年10月11日
ジャナ・デリオン(著)島村浩子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
先の事件で心に傷を負ったフォーチュン。それでもシンフルは平常通り――なのに、またもや事件が起こった。今度は町の中年女性が、ネット上でロマンス詐欺に遭ったのだ。こんな卑劣な犯罪は許せない! 犯人はたぶん町の住民とふんだフォーチュンとスーパーおば(あ)さまふたりは、義憤にかられて立ちあがる。さらに、町一番の善人に予想だにしない悲惨な出来事が起き、保安官助手のカーターは激怒中、三人は慎重に探りはじめる……はずだったのだけれど。
シンフルのパワフルトリオが懲りずに大暴れ、好評〈ワニ町〉シリーズ、待望第8弾では、ロマンス詐欺犯罪に挑む物語が展開します。思わずクスッとなる行動や会話は今回もてんこ盛り。チャーミングな書影もシリーズファンにはグッと刺さるポイントかも。
発売日:2024年10月4日
斜線堂有希紀(著)
出版社(レーベル):実業之日本社
銃乱射事件で閉鎖された遊園地・イリュジオンランドへ、廃墟コレクターの資産家・十嶋庵が二十年ぶりに人々を招く。廃墟マニアの元コンビニ店員・眞上永太郎をはじめとした招待客が、廃園の所有権を賭けた宝探しに挑戦する最中、串刺しになった血まみれの着ぐるみが見つかって……。
全編リライトで文庫化された驚愕の廃墟×本格ミステリー長編は、巨大すぎるクローズドサークルで発生した連続殺人事件の真相に迫る物語です。廃墟になった遊園地という舞台もミステリー好きの心をくすぐります。
発売日:2024年11月6日
山本巧次(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
マンションの建設現場で約二百年前の人骨が発見された。肋骨の一本に刺し傷のような痕があり、どうやら他殺体のものであるらしい。骨と遺留品を鑑定した科学分析ラボの宇田川から依頼され、時空旅行者のおゆうこと関口優佳は、まだ事件化していない殺人について江戸で調査を始める。一方、南町奉行所の同心・伝三郎からは、紙問屋の若旦那が旗本の奥方と不義密通しているという噂を聞き……。
東京・四谷で発見された江戸時代の人骨。タイムトラベラーのおゆうは、江戸でまだ発覚していない殺人事件の調査を開始します。今回は現代から未来ではなく、現代から過去に行く物語が展開。依頼される側の宇田川から依頼を受けるというのもいつもと矢印が違って新鮮に感じられます。
発売日:2024年11月20日
久住四季(著)
出版社(レーベル):東京創元社
デートに誘ったはずが「家電量販店に行こう」と言われ、憧れの女性と開店前行列に並ぶことになった大学生の青年。その日遭遇したある謎解きの顛末から、彼は人の優しさについて思いを巡らすことになる。
日々の暮らしのなかにふと入り込んだ謎とその真相を鮮やかに描いた、人の死なない謎解き作品5編を収録した作品集です。“人が死なない”ため、事件解決後の読後感もすっきり&ほっこり。特別な思惑がない、いい人ばかりの環境でも謎解きミステリーが展開できるという発見をうれしく思える一冊。
発売日:2024年11月14日
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):実業之日本社
理事長の娘・朝比奈麗華は大のミステリ好き。密室盗難事件、プールサイド昏倒事件…etc、今日も学園で起きる事件を解決しようと現場に出向く。相棒の探偵部員・石橋くんは、昼行灯のような捜査ぶりだが、あるとき突然推理が冴えわたりはじめ……。
ユーモアミステリの永久定番〈鯉ケ窪学園〉シリーズに新たなバディ登場! 〈鯉ケ窪学園〉シリーズが20周年を迎えた東川篤哉が贈る、爆笑必至の本格ユーモアミステリー。ホームズ&ワトソンのバディ感も漂わせる新たなコンビの活躍をもっと見たい! と感じる読者も多いかも。学園で起こる謎はいつも通り不可解なのもシリーズの魅力になっています。
発売日:2024年11月20日
D・M・ディヴァイン(著)野中千恵子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
勘当されて以来四年ぶりに実家を訪ねたマークが見つけた、父パトリックの手紙の下書きは一体何を意味しているのか。当の父は死体となり新聞社で発見される。どうやら父はロイストン事件の再調査をしていたらしい。それは教師をめぐるスキャンダルで、弁護士として事件に関わったマークは、父の意向に逆らって義弟を告発したために勘当されたのだった。父を殺した犯人を突き止めようと、マークの推理が始まる!
気になる、惹かれるキャラクター描写が補作では際立っている印象。巧みなトリックと心理描写が光る物語の展開ですが、ミステリー好きなら、犯人も仕掛けも割と早い段階で気づき始めるはず。それでもオチまで十分に堪能できる一冊です。
発売日:2024年11月8日
中山七里(著)
出版社(レーベル):宝島社
凄惨な殺害方法と、稚拙な犯行声明文で世間を震撼させた「カエル男連続猟奇連続殺人事件」。事件のキーマンである有働さゆりは医療刑務所から脱走し、行方知れずのままだった――。その頃、精神疾患を抱える殺人犯を無罪にした人権派弁護士が何者かに殺害される事件が発生。遺体のそばには、あの稚拙な犯行声明文が残されていた。捜査一課の渡瀬と古手川はカエル男の犯行を視野に入れて捜査を進めるも人権派弁護士の殺害は続く。これまでと異なる動きを見せるカエル男に翻弄される渡瀬は、ある人物からひとつの提案を受け……。
刑法第39条vs連続殺人鬼の物語がついに完結です。猟奇的な社会派ミステリーにもかかわらず、ラストには感動し、涙が出そうになる人もいるのでは? もしかしてまだ続編がある? という思いがよぎったところでまさかの結末が。完結編と聞いても、なぜか終わった気がしないのは、この物語、そしてカエル男というキャラクターのパワーなのかも。
発売日:2024年11月25日
澤村御影(著)
出版社(レーベル):角川文庫
高槻ゼミの一大イベント、それはゼミ合宿。9月の初め、尚哉は仲間たちと西湖に赴く。先輩方の中間発表、BBQに花火と様々なイベントをこなし、高槻の発案で、尚哉たちは青木ヶ原樹海へ行くことに。そこには意外なあの人がいて……。
高槻先生の過去にちょっと進展が?! というところで終わってしまい、早くも続きが気になる民俗学ミステリーシリーズ第11弾は大筋のストーリーに踏み込んだ構成に。怪異解決でほのぼのとした雰囲気に突入?! かと思った瞬間に、一気に過去の謎に踏み込む展開からの「ここで終わり?!」な締めくくりに心がザワつきます。
発売日:2024年12月4日
友井羊(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
スープ屋「しずく」店主の麻野は料理の腕前に劣らず、店に持ち込まれる謎や事件に対する推理力も評判だ。店の常連客で麻野の恋人の理恵は、同じく常連客でセレブの片山が催すホームパーティーに招かれた。しかし、片山が披露したダイヤモンドが少し目を離した隙に消失。なぜか犯人捜しを拒む片山に違和感を抱いた理恵たちは、麻野に相談を持ちかけるが……。 全4話の絶品スープ・ミステリー。
累計55万部突破の大人気『スープ屋しずく』シリーズ最新刊。出てくるスープが毎度おいしそうでほっこりできるミステリー。スープが体にじんわりと沁みわたるように、少しずつ進展している関係性も見どころ。
発売日:2024年8月8日
雫井脩介(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫
小児病棟で起きた点滴殺傷事件。4人の子供の点滴にインスリンが混入され、2人の幼い命が奪われた。物証がないまま逮捕されたのは、生き残った女児の母親。取り調べで自白するが、後に否認。娘を懸命に支えていた母親は冷酷な殺人犯なのか?
ひょんな事から弁護を任されることとなる伊豆原が勝算のない裁判に挑む!母親を信じたいけれど、信じてよいのか。無実に違いない、いや、無実であってほしいと心が揺さぶられながらなかなか真相に辿り着けない上巻。淡々と事件に挑む伊豆原とモヤモヤ、ヒヤヒヤな気持ちを抱えながらグイグイと引き込まれていく読み手の対比にも面白さを感じる一冊。
発売日:2024年8月23日
サイモン・モックラー(著) 冨田ひろみ(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
1967年末。ある火災の調査のため、精神科医のジャックは、CIAから依頼され、顔と両手に重度の火傷を負い、記憶を失ったコナーという男と向かい合っていた。北極圏にある極秘基地の発電室で出火し、隊員2名が死亡。彼は唯一の生存者だという。火災現場の遺体の一方は人間の形を残していたが、もう一方は灰と骨と歯の塊。なぜ遺体の状態に差が出たのか。
米軍極秘基地からの撤退が決まり、残っていた3人が巻き込まれた原因不明の火災と不可解な遺体。撤退するはずの3人に何が起きたのか。精神科医のジャックが探偵のように密室で起きた謎の事件に迫っていくも、なかなか真相に辿り着かない。二転三転しながら真実が明らかになり、伏線の存在に気づくことで、より深みを感じる良質の時代ミステリー。
発売日:2024年8月22日
エヴァ・ドーラン(著) 玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
ロンドンの集合住宅の一室。女性がひとり。死体がひとつ。見知らぬ男に襲われ、身を守ろうとして殺してしまったと女性は語る。死体は名も明かされぬまま、古びたエレベーターシャフトに隠された……。
過去に遡る章と未来へ進む章が交互に展開していくミステリー。はじまりと終わりに向かっていく物語は、最終章で全貌が明らかに。「終着点」がどうなっているのか。登場人物の心理描写も細かく描かれていて、読み応えあり。しかーし、寄り添えるキャラがいるかどうかは別の話だが、それも本作の仕掛けになっている。心地よい衝撃が味わえる物語。
発売日:2024年8月7日
下村敦史(著)
出版社(レーベル):幻冬舎
社長室で社長が殺された。それに「関わる」メンバーが7人ある廃墟に集められる。未亡人、記者、社員2人、運転手、清掃員、被害者遺族。やがて密室のスピーカーからある音声が流れる。「社長を殺した犯人だけ生きて帰してやる」。犯人以外は全員毒ガスで殺すと脅され、7人は命をかけた自供合戦を繰り広げる。
生き残れるのは犯人だけというクローズドサークルもの。生き残りをかけて真実と事実が入り乱れ、不毛な言い争いを繰り広げるデスゲーム。犯人候補、改め、犯人になりたい候補全員が推理を披露するも、そこに事実はナシ。だけど事実はどこかにあって…というややこしさがたまらない!
発売日:2024年8月30日
桜庭一樹(著)
出版社(レーベル):東京創元社
かつて、名探偵の時代があった。ひとたび難事件が発生すれば、どこからともなく現れて、警察やマスコミの影響を受けることなく、論理的に謎を解いて去っていく正義の人、名探偵。そんな彼らは脚光を浴び、黄金時代を築き上げるに至ったが、平成中期以降は急速に忘れられていった。それから20年あまりの時が過ぎ、令和の世になった今、YouTubeの人気チャンネルで突如、名探偵の弾劾が開始された。その槍玉に挙げられたのは、名探偵四天王の一人、五狐焚風だった。
普通の人になっていたかつての名探偵と助手が20年後の再会を経て動き出す物語。過去の事件を振り返りながら旅をする元名探偵&元助手のコンビ。人間ドラマ的要素を味わいながら、正しさとは何かを考え、やっぱりミステリーには名探偵&助手が必要だと思わずにはいられません。
発売日:2024年8月30日
アン・クレア(著) 谷泰子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
故郷の雪山に帰ってきたエリーは、姉のメグと看板猫のアガサとともにミステリー好きの集う書店、ブック・シャレーを切り盛りしていた。ある日、山腹と麓をつなぐゴンドラ内で男の刺殺体が発見される。男は直前に書店を訪れ、アガサ・クリスティ『春にして君を離れ』のサイン入り初版本と不可解なメモ書きを残していた。時を同じくして店からは従業員の女性が姿を消した。ふたつの事件は関係があるのか。
ミステリー好きの知恵を借りて事件を推理していくエリーとメグ。ミステリー好きとしてはクリスティの初版本がどう事件に絡んでくるのかが気になるポイントになるはず。看板猫がアガサというのもミステリー好きの心をくすぐります。
発売日:2024年8月6日
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):小学館文庫
宝生麗子の後輩にど天然な新米刑事・若宮愛里が加わり、警視庁に栄転した風祭警部は大きなミスを犯して国立署に舞い戻り、新たなメンバーで難事件に挑む。
大ヒットシリーズ、ユーモアミステリーの待望の新章がスタート。執事探偵・影山の推理と毒舌が冴えわたる、本格ミステリ全5編を収めています。このシリーズのポイントは“ユーモア”。ありえないトリックも、驚きの真相も、なぜか納得してしまうのはユーモアのおかげ。姿勢を正して読むというよりは、ゴロンと寝転んで読みたい気軽なミステリー。
発売日:2024年8月7日
クレオ・コイル(著) 小川敏子(訳)
出版社(レーベル):コージーブックス 原書房
ついにビレッジブレンドが撮影ロケ地に選ばれた!往年の大スター、ジェリー・サリバンがコーヒーハウスにやってくるとあって、クレアは大喜び。ジェリーは大スターのオーラを放ちながらもとても気さくな人物で、すぐにバリスタたちとも打ち解けた。何もかもが順調に進むかに思えたのに、撮影初日から、不運な事故ばかりが続き……。
ニューヨークのコーヒー店「ビレッジブレンド」を舞台に展開する、コージー・ミステリーの人気シリーズ第20弾。シリーズでは好奇心とバイタリティで捜査活動に首を突っ込む主人公クレアが、家族や友人、恋人と協力しながら事件の解決へと導いていきます。巻末には作中に登場した(キーワードとなった)料理やデザートなどのレシピが紹介されているのもうれしい!
発売日:2024年8月9日
神永学(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
少女の幽霊に取り憑かれた友人から相談を受けた晴香。死者の魂が見える赤い瞳を持つ大学生・斉藤八雲に話そうとするが、素直に伝えられない。晴香は亡き姉への後悔を幽霊に重ね、一人で調査を行うが――。時を同じくして、少女連続誘拐殺人が続発。事態は急転する。
累計750万部突破の「心霊探偵八雲シリーズ」の完全版第二弾。すべて見直し、すべてを改稿したというだけあって、読んで知っているストーリーでも深みを増し、内容は一層濃いものになっています。出番が増えた?と感じるキャラもいて、ご褒美気分も味わえます。シリーズ未読の方は、完全版から入るのもあり!
発売日:2024年7月12日
森博嗣(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
妻の依頼は、浮気調査だった。夫は、数多くのヒットソングを生み出した作詞家。華やかな業界だが、彼自身は人づき合いをしない。そのため彼に関する情報は少なかった。探偵による監視が始まった。浮気の兆候はない。だが妻は、調査の続行を希望。そして監視下に置かれた屋敷で、死体が発見される。
Xシリーズから時系列を引き継いで小川令子&加部谷恵美の二人を中心に展開するシリーズの番外編。ミステリーでありながら、死生観について考えさせられる物語。書影、タイトルの響きの美しさに惹かれる方もいるのでは?読後にはなんともいえない切なさが込み上げてきます。
発売日:2024年8月6日
碧野圭(著)
出版社(レーベル):大和書房
季節の野菜を活かしたランチと予約制ディナーが人気の菜の花食堂のオーナー・靖子先生は、おいしい料理を作るだけじゃなく、言葉にできない悩みや困った出来事の奥にある大切なものを見抜き、謎と心を解きほぐしてくれる――。
おいしい料理×日常の謎。小さな食堂と料理教室を舞台にやさしくてほろ苦い日常ミステリーが展開します。シリーズ第6弾には5つの物語を収録。謎解きはもちろん、季節の食材や料理にも興味が湧く一冊。ミステリー小説では登場人物がどうしても怪しく見えてしまうもの。しかし、菜の花食堂に集う人々がみんないい人なので、心穏やかに謎解きができます。
発売日:2024年9月3日
ケン・ウェバー(著) 片岡しのぶ ほか(訳)
出版社(レーベル):扶桑社
町で有名な男性医師は、毎週木曜に大酒を飲む。今週も酔いつぶれた木曜日、なんと医師の妻が遺体となって発見された。酒の勢いで医師が殺したのか?だが、本人は酔っ払って正体をなくしている。はたして医師の犯行なのか。
ミステリークイズの大定番。本国では何度も装いを変えて再発売され、日本でも30年以上にわたって好評を博したロングセラー。5分間で読める、バラエティに富んだショートストーリー、全37編を収録。このシリーズはミステリー小説を読む脳を鍛えるのにピッタリ。長編を読む時間がない!というときのミステリーファンは謎解きの満足度をたった5分で味わえます。
発売日:2024年8月9日
夕木春央(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
友人と従兄と山奥の地下建築を訪れた柊一は、偶然出会った家族と地下建築「方舟」で夜を過ごすことに。翌日の明け方、地震が発生し、扉が岩でふさがれ、水が流入しはじめる。いずれ「方舟」は水没する。そんな矢先に殺人が起きる。だれか一人を犠牲にすれば脱出できる。タイムリミットまでおよそ1週間。生贄には、その犯人がなるべきだ。――犯人以外の全員が、そう思った。
犯人が分かった上でもう一度読みたくなるクローズドサークルミステリー。極限状況での謎解きを楽しんだ読者に待っているのは驚きの真相。繰り広げられる頭脳戦、ラストで暴かれる人間性。エピローグまでしっかり読んでラストの衝撃を味わい尽くしたくなる!
発売日:2024年9月4日
このミステリーがすごい!編集部(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
累計140万部突破。宝島社の大人気ショートショートシリーズ最新刊。最初の1行は全員同じ。「人を殺してしまった」で始まる物語を、『このミス』大賞作家が全作書き下ろし!ゾクッとするどんでん返しから意味が分かると怖い話まで超ショートストーリーを25作品収録。殺害方法は自由自在というユニークな試みにワクワクが止まりません。
「チーム・バチスタ」シリーズ海堂尊、「さよならドビュッシー」中山七里らの手がけた物語が3分で読めるという贅沢な構成。最初の1行はみんな同じなので、どこから読んでも楽しめます。
発売日:2024年7月12日
川瀬七緒(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
「服を見ればすべてがわかる」と、噂されるほどの鋭い洞察力を持つ服飾ブローカー・桐ヶ谷京介に新たな事件解決の依頼があった。依頼主は警察と京介の橋渡し役を担う南雲警部。南雲は12年前、勤務中に捨て子を発見した。その子は施設で育ち、少年になった今、南雲に母親探しを頼んできたのだ。南雲は発見当時にその子が身につけていた大人もののTシャツを京介に預ける。京介の神懸かった推理が始まる……。
仕立屋探偵・桐ヶ谷京介が挑む6つの事件を描く連作短編集。会話のテンポも良く読みやすい短編集です。ミステリー要素はもちろん、服飾トリビアに加えて人体の知識が知れるのも面白い。他のミステリー作品を読む際にも役に立ちそうな情報が満載です。
発売日:2024年9月4日
リチャード・コールズ(著) 西谷かおり(訳)
出版社(レーベル):早川書房
英国の田舎町チャンプトンの司祭ダニエルは悩んでいた。教会のトイレ設置をめぐって住民が真っ二つに割れてしまったのだ。そんな中、裕福な地元の名士が夜の教会で殺された。住民をまとめあげ、犯人を突き止めるには司祭が適任。狡猾な犯人にダニエルが挑む。
舞台は英国の田舎町。まずこの設定でワクワク。噂好きの村人、古くから住む地主の家など、ミステリー小説好きの心をくすぐります。司祭として偏りなく人と接しようとするダニエルのキャラクターも好印象。ダニエルの母親オードリーがちょっぴり破天荒という設定も面白みを添えています。
発売日:2024年9月11日
青柳碧人(著)
出版社(レーベル):双葉文庫
(C) 青柳碧人/双葉社
おじさんにクッキーとワインを届ける途中、赤ずきんはピノキオの右腕を拾いました。実はピノキオが、体をばらばらにされていて、赤ずきんはそれらを集める旅に出ます。ところが、殺しの犯人として逮捕されてしまったのです……。ピノキオのほか、親指姫や白雪姫、笛吹き男に三匹の子豚など、世界の童話の主人公がいろいろな事件に登場!
世界のみんなが知っている童話をベースにした連作本格ミステリ第二弾。賢すぎる赤ずきんちゃんが主人公のパロディミステリー。ファンタジーでぶっ飛んでいるかと思いきや、意外とリアルに感じられる物語。実は実写に向いてるかも!?なんて思ったりもしちゃいます。スラスラ読める読みやすさも魅力です。
発売日:2024年9月11日
アンソニー・ホロヴィッツ(著) 山田蘭(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
テムズ川沿いの高級住宅地リヴァービュー・クロースで、金融業界のやり手がクロスボウの矢を喉に突き立てられて殺された。昔の英国の村を思わせる敷地で住人たちが穏やかに暮らす、この理想的な環境を乱す新参者の被害者に、住人全員が我慢を重ねてきていた。誰もが動機を持っているといえる難事件を前にして、警察は探偵ホーソーンを招聘するが……。
関係者全員が同じ動機を持つ、解決不可能とも思われた事件に挑むホーソンとホロヴィッツ。読めばハマると話題の大人気シリーズ第五弾です。謎に次ぐ謎に翻弄されるも、読了後すぐにまたページを捲りたくなる中毒性の高いシリーズ。謎を解き明かしたいと思いページを捲りながらも、終わって欲しくないという気持ちが湧き出て、葛藤しながら読み進める魅惑のミステリーです。
発売日:2024年7月3日
マーティン・エドワーズ(著) 加賀山卓朗(訳)
出版社(レーベル):早川書房
ヨークシャー北部の古い村、モートメインの岬の突端にあるモルグ館と呼ばれる館。名探偵レイチェル・サヴァナクと新聞記者のジェイコブは、館の主人で犯罪学者のレオノーラから館で催されるパーティに招待される。殺人を犯しながらも、法で裁かれなかった者たちが集うパーティの真の目的を探るうち、レイチェルが直面する意外な殺人事件とは。
舞台は1930年代初め。探偵レイチェルの美しくちょっと危険で謎めいた雰囲気がとてもいい!相棒的存在の新聞記者ジェイコブも仕事熱心でちょっぴり危うさを持ち合わせているという興味深いキャラクター。完全犯罪の真相が明らかになるラストは圧巻です。
発売日:2024年7月22日
サミュエル・アウグスト・ドゥーセ(著) 宇野利泰(訳)
出版社(レーベル):中公文庫
天才法医学者ワルター・スミルノはある晩、女優アスタ・ドゥールの殺害事件に遭遇。容疑者として、かつての恋人スティナ・フェルセンが挙げられる。名探偵レオ・カリングの手を借り、不可解な謎に挑むのだが……。
江戸川乱歩や横溝正史に多大な影響を与えたとされる有名な一冊。書かれたのは1917年で乱歩所蔵の原書を1963年に翻訳した作品の復刻版とのこと。アガサ・クリスティーの「アクロイド殺害事件」の元ネタかも?とも言われている、ミステリー小説ファンにはたまらない1冊。探偵役の仕掛けた心理戦にゾクゾクさせられます。
発売日:2024年5月15日
桜木紫乃(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
17年前、弟を行方不明で失った松崎比呂は、刑事となって釧路に帰ってきた。その直後、釧路湿原で青い目の他殺体が発見される。先輩刑事の片桐周平と捜査を進めると、そこには激動の時代を生き抜いた女の一生が深く関わっていた――。
直木賞作家・桜木紫乃の長編ミステリーで、北海道警釧路方面本部シリーズ第一弾。刑事の比呂のパートと、女性キクのパートが交錯しながら物語が展開。二人の女性の生き様、美しくも不気味さも感じる湿原の描写に惹き込まれます。第二弾『氷の轍』は6月に発売、7月には第三弾『起終点駅(ターミナル)』、8月の第四弾『霧(ウラル)』へと続きます。桜木紫乃初期作品をシリーズとして気持ち新たに毎月楽しめるのがうれしい!
発売日:2024年4月3日
東野圭吾(著)
出版社(レーベル):幻冬舎文庫
父の死に疑問を持つ美令と父の自供に納得できない和真。事件の蚊帳の外の二人は‶父の真実″を調べるため、捜査一課の五代の知恵を借り禁断の逢瀬を重ねる。過去と現在、東京と愛知、健介と達郎を繋ぐものは何か。やがて美令と和真は、ふたり愛知へ向かうが、待ち受けていた真実は――。
東野圭吾の傑作が待望の文庫化。上下巻同時の発売です。複雑な展開、上下巻というボリュームでも真相をいち早く知りたくなり、イッキ読み必至。登場人物のリアルで繊細な心の動きに、時に違和感を感じ、揺さぶられながら、ページをめくる手が止まりません。物語の舞台となる門前仲町界隈もふらりと訪れたくなります。
発売日:2024年6月27日
柳瀬みちる(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
「漱石カレー」など文豪をモチーフにした「文豪カレー」が好評の、神保町「喫茶ソウセキ」。突如、店が何者かに投石されるなどの嫌がらせを受け始める。店主の千晴や、店の常連で人気作家の葉山たちは、過激な発言で人気の文学系VTuber・大辛シムロに目をつける。シムロはなぜか葉山を恨んでいて——。
太宰治や林芙美子、坂口安吾ら文豪たちの古書を読み、美味しいカレーを作りながら謎を解き明かすシリーズ第2弾です。今回の謎解きは「林芙美子の原稿の真贋を見極めること」。古書をヒントに店主の千晴とイケメン人気作家の葉山がタッグを組み、事件の真相を追う!
発売日:2024年5月9日
碧野圭(著)
出版社(レーベル):PHP文芸文庫
書店員の椎野正和は、ある朝届いた積荷の中に、少年犯罪者の告白本を見つけて驚く。それは十七年前に女子中学生が惨殺された事件で、正和の同級生が起こしたものだった。しかも正和は共犯と疑われたのだ。書店業界が「売るべきか売らないべきか」と騒然とする中、その本を読んだ正和は、ある違和感を覚えるのだが――。
ベストセラー『書店ガール』シリーズの著者が贈る、書店を舞台にしたミステリー。出版・書店業界の裏事情が巧みに盛り込まれた、本好きにたまらない内容になっています。2021年刊行の『書店員と二つの罪』の改題です。
発売日:2024年5月7日
新川帆立(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
亡くなった町弁のクライアントを引き継ぐことになってしまった剣持麗子。都内の大手法律事務所で忙しく働くかたわら、業務の合間に一般民事の相談にも乗る羽目に……。『元彼の遺言状』のヒロインが徹夜で謎解きをするミステリー短編集が文庫版で登場!
剣持弁護士、働きすぎ!と心配にならなくもないですが、夜中に呼び出されたり、事件に巻き込まれたり、普段請け負っている企業案件とは違って、なんだかチマっとした事件であっても、結局華麗に解決してくれる安心感と爽快感がクセになります。
発売日:2024年6月5日
似鳥鶏(著)
出版社(レーベル):ポプラ文庫
「役立たたない」ことが好きなクイズ研究会会長の高校2年生のライと、大学受験に向けて効率重視で「役立つこと」が好きな同級生のキヨ。クラスでは交わることもなく、対照的な性格の二人だが、夏休みの間、ひょんなことから謎解きに挑む姉妹を手伝うことになる。謎解きの先で待つものとは——。
夏休みという響きにもキュンとなる、青春恋愛ミステリーです。爽やかさや切なさもあるストーリーですが、謎解きは意外と難しい!しかも結構な数が盛り込まれているので、しっかり頭を使う一冊になっています。ラストのラストまで謎解きの要素アリ。
発売日:2024年5月15日
高田崇史(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
茨城県山中の寂れた神社の宝物庫で大瓶に入った白骨死体が発見される。その話を友人の小松崎から聞いたフリージャーナリストの桑原崇は、大瓶と神社の祭神に興味を抱き、茨城へ。現地では、さらに瓶の中から新たな遺体が発見されたという報せが――。
高田崇史のQEDシリーズの最新作。「ベイカー街の問題」など珍しいテーマもありながらも、基本的には日本の歴史や神話への興味を湧き立たせてくれるシリーズです。1998年から続き、本作で23巻目となるシリーズでは、主人公・桑原崇が事件と共に、古文・歴史・人物に隠された謎を解いていきます。QEDとは「以上、証明終了」を意味するQ.E.D.が由来。
発売日:2024年4月22日
愛川晶(著)
出版社(レーベル):中公文庫
神楽坂は筑土八幡町の工事現場で、猫が小判を掘り出した。飼い主の噺家は一躍時の人に、寄席は大入り満員。しかし小判が発見された土地のオーナーの娘が誘拐されてしまい――。
落語家になり損ねた過去を持つベテラン刑事・平林定吉と、食欲と腕力には自信ありの新人刑事・三崎優子、そして落語界の隠れた名探偵・林家正蔵師匠が街の事件を解決する、昭和50年代が舞台の落語ミステリ×警察小説第3作。落語と事件の絡み具合と心地よいオチがなんとも絶妙で、何度も読み返したくなります。
発売日:2024年4月24日
本岡類(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
15年ぶりのクラス会にキツネ面の男が乱入し、散弾銃を発砲した。SATにより射殺された犯人は、なんと恩師だった。幹事の有馬に託されたメッセージは「ごんぎつねの夢を広めてくれ」。次第に見えてくる恩師の過去、名作「ごんぎつね」にまつわる哀しい史実、消えたかつての同級生の秘密……。探索の果て、周到な計画と謎の原稿に隠された真相が明らかになる!
童話『ごんぎつね』をベースにしたミステリー。小学生の頃に教科書で読んだ『ごんぎつね』には実は違うラストがあったという裏話も織り交ぜながら、物語が展開。事実なの?フィクションなの?とハラハラする臨場感が味わえます。
発売日:2024年4月24日
シャロン・ボルトン(著) 川副智子(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫
卒業を間近に控えたパブリック・スクールの優等生6人が自動車で逆走。母娘3人の命を奪う大事故を起こしてしまう。20年後、一人で罪を被り刑期を務めあげたメーガンが、国会議員、辣腕弁護士ら、いまや成功を収めている5人の前に姿を現す。彼らと交わした“約束”を果たさせるために……。
身代わり契約の果ての惨劇を描く予測不能な物語が展開します。なぜメーガンは一人で重い罪を背負うことを決めたのか。それが気になってページをめくる手が止まりません。20年後、メーガンを前にした社会的地位を得た優等生5人の自己保身にかなりイライラし、感情移入できるキャラはいない…と感じるのに、物語にはグイグイと引き込まれていく、凄まじいパワーを持った作品です。
発売日:2024年5月22日
コナン・ドイル(著) 小池滋(監訳) 北原尚彦(編)
出版社(レーベル): 中公文庫
幻のデビュー作『ササッサ谷の怪』から、ストランド・マガジン最後の掲載作品『最後の手段』まで。名探偵シャーロック・ホームズの生みの親、コナン・ドイルの幻のデビュー作を文庫化した本作には、希代のストーリーテラー、ドイルの魅力を再発見する名短篇全十四編を収録しています。
ドイルといえばシャーロック・ホームズ。ホームズが活躍するシリーズは制覇しているけれど、ドイルのデビュー作は読んでいないという人も少なくないかもしれません。というのも『ササッサ谷の怪』の翻訳版は1982年に出版されただけ。今回刊行された短編集は、ドイルの原点、そして新たな魅力を知るきっかけになる一冊としておすすめです。
発売日:2024年5月29日
芦沢央(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
棋士を目指して13歳で奨励会に入会した岩城啓一だったが、20歳をとうに過ぎた現在もプロ入りを果たせずにいた。9期目となった三段リーグ最終日前日の夕刻、翌日対局する村尾が突然訪ねてくる。今期が昇段のラストチャンスとなった村尾が啓一に告げたのは……。
将棋をテーマに夢を追うことの恍惚と苦悩、誰とも分かち合えない孤独を深く刻むミステリ5編を収めた短編集。短編ながら、一編一編読み応えあり。将棋の世界を生きる人たち、棋士だけでなく駒師にもスポットを当てた物語もあり、将棋をあまり知らなくても十分に楽しめます。
発売日:2024年4月30日
米澤穂信(著)
出版社(レーベル):東京創元社
小市民を志す小鳩君はある日轢き逃げに遭い、病院に搬送された。目を覚ました彼は、朦朧としながら自分が右足の骨を折っていることを聞かされる。翌日、手術後に警察の聴取を受け、昏々と眠る小鳩君の枕元には、同じく小市民を志す小佐内さんからの「犯人をゆるさない」というメッセージが残されていた。小佐内さんは、どうやら犯人捜しをしているらしい……。
「小市民」シリーズ、15年ぶりの最新作にして最終作では、主人公の一人、小鳩君の入院から始まります。入院中の小鳩君がベッドの上で推理を繰り広げる現在パートと、三年前のある轢き逃げ事件捜査が描かれる過去パートが交互に展開していきます。小鳩君と小佐内さんの出会いのエピソードは必見です。
発売日:2024年5月29日
大神晃(著)
出版社(レーベル):新潮文庫nex
ヤンデレな恋人・翠の婚約者として連れていかれた彼女の実家は、山奥に立つ霊是一族の“天狗屋敷”。失踪した当主の遺言状開封、莫大な山林を巡る遺産争い、棺から忽然と消えた遺体。奇怪な難事件を次々と解決するのは、あやしい“なんでも屋”!?
横溝正史へのオマージュに満ちたミステリー。ちょっとぶっ飛んだキャラの翠さんも本作の見どころかも。割と凝ったトリックが仕掛けられていますが、一族の遺産相続にまつわる物語でも、犬神家ほどのドロドロ感はなく、さらっと読み進められます。
発売日:2024年5月15日
赤川次郎(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
映画の撮影現場で、映像に関わるすべてを記録し、管理する。スクリプターの東風亜矢子は、いい映画を作るため、正木監督の無茶なリクエストに応えて奔走する日々だ。だが今回は、資金調達が難航し、撮影に入れない。頭を抱える監督の前に、高校時代の憧れの同級生が現れて……。
映画の裏に名探偵あり!大人気ミステリー第2弾の文庫版が登場。お仕事ものとしても楽しめるライトなミステリーで読みやすく、ミステリー初心者にピッタリの一冊です。登場人物は多いですが、人物像が混乱することはありません。最後はスッキリ前向きになれるのもGOOD!
発売日:2024年6月26日
結城真一郎(著)
出版社(レーベル):新潮文庫
「ゆーちゅーばー」を夢見た島育ちの仲良し小学生四人組の末路。マッチングアプリでパパ活。リモート飲み会と三角関係。中学受験と家庭教師の大学生。精子提供と殺人鬼。日常に潜む「何かがおかしい」。その違和感にあなたは気づくことができるか。
第74回日本推理作家協会賞受賞の『#拡散希望』は、第22回本格ミステリ大賞にもノミネートされた注目作。現代日本の<いま>とミステリの技巧を融合した珠玉の5篇を収録した一冊が文庫版で登場。YouTubeやアプリなどが登場する物語では、いまどきのミステリーという感覚が味わえる気がします。
発売日:2024年4月5日
竹田人造(著)
出版社(レーベル):早川書房
AI裁判官が法廷を仕切るようになった日本。不敗と名高い弁護士・機島雄弁はハッキングを駆使して勝訴を掴み、事件の真実へと迫る――。
AIが裁判官を務める近未来の日本。AIがテーマだと、そんな現実世界が来るか来ないかの方向へ気持ちが行きがちですが、本作はちゃんとミステリー。法廷とAIが絡み、さらに近未来を舞台にしているので、用語的に少し難しいものも登場しますが、コミカルとシリアスのバランスがとてもよく、テンポよく読み進められます。主人公にちょっとダークさも漂い、クセありのキャラクターも登場。さらにバディものとしても楽しめる上に、逆転劇もあり。ミステリーに欲しい要素が詰まっています。
発売日:2024年6月6日
平原直美(著) 芹澤恵(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫
1944年、シカゴ。父母とともにカリフォルニア州の強制収容所を出てシカゴに着いた日系二世のアキ・イトウは、一足先に収容所を出てシカゴで新生活を始めていた姉ローズが前日にクラーク・アンド・ディヴィジョン駅で列車に轢かれて死んだと知らされる。警察の自殺説に疑問を感じたアキは、真相を求めて自ら調査を始めるが……。
日系米国人作家が贈る歴史ミステリーは2021年NYTベストミステリー選出、2022年メアリー・ヒギンズ・クラーク賞受賞、同年マキャヴィティ賞最優秀歴史ミステリー小説賞を受賞した話題作です。戦時中の日系人たちの境遇にスポットを当て知られざる歴史を掘り起こした渾身の新シリーズ第1弾。エドガー賞、マキャビティ賞、アンソニー賞にノミネートされた前作『ヒロシマ・ボーイ』にて幕を閉じた「庭師マス・アライ事件簿シリーズ」もぜひ。
発売日:2024年6月5日
ルパート・ホームズ(著) 奥村章子(訳)
出版社(レーベル):早川書房
舞台は殺人技術を教えるマクマスターズ校。学校の場所は厳重に隠されており、生徒たちでさえもそのありかは知らない。さらに、マクマスターズ校に入学した生徒が外界に戻る方法は二つしか存在しない。無事に卒業するか、死体となって運び出されるかだ……。
タイトルや帯を見て「惹かれる…」という読者も多そうな一冊。上司を殺したいほど憎むクリフが入学したのは殺人技術を教えるマクマスターズ校。クリフは無事に卒業し、目的を果たすことができるのか。ダークでアカデミックな雰囲気が漂う中、所在地さえも分からない学校で教えられる殺人技術。設定だけで「買い!」って思わせてくれる本との出会いは、読む前からワクワク気分が味わえます。
発売日:2024年4月11日
六道慧(著)
出版社(レーベル):徳間文庫
少女・小鹿は、清少納言の実の妹であるとして貧民街から引き取られ、御所の中宮定子付きの針女(下働き)として仕えることに。定子は一条天皇の寵を受けつつも、父の関白・藤原道隆の死や左大臣・藤原道長の台頭により不安な日々を過ごしている。そんな折、ひょんなことから、小鹿は稀代の陰陽師・安倍晴明に弟子入りすることとなった。
大河ドラマの影響で平安後宮に興味が湧いている方も多いのでは? 本作は80歳の安倍晴明と清少納言の妹、15歳の小鹿が活躍する怪異に満ちた平安後宮ミステリー。安倍晴明、清少納言をはじめ、藤原道長、一条天皇、定子となじみのある名前が並びます。斬新な設定と想像を超えた大胆な展開を、思いっきり楽しむのがオススメ。
発売日:2024年4月3日
新藤元気(著)
出版社(レーベル):宝島社文庫
特殊捜査班の熊谷は、海老名市内にある養護施設がほぼ全焼した現場に臨場。科捜研物理係の久龍小春とともに事件性の有無を判断するため、出火原因の調査を行う。出火の原因は煙草の不始末。さらにその煙草を始末したのは行方不明の少年・立花望であること、別の場所では、彼が書いたと思われる遺書も見つかって……。望が生きていると予想し調査に乗り出したこはると熊谷。二人を待ち受ける、事件の意外な真相とは!?
登場人物が何かしらの悩みや背景を持っているので、ヒューマンドラマ的な要素も楽しめます。サクサク読み進められますが、謎は想像以上に盛りだくさん。さまざまな視点からあれこれ考えながら事件が見られるのもポイントです。
発売日:2024年5月22日
坂口安吾(著)
出版社(レーベル):中公文庫
ジャンルとしてはエッセイになりますが、「分断随一の探偵小説通」として知られる坂口安吾の事件評論や裁判傍聴記、愛好する探偵小説を論じたエッセイをご紹介。こちらは文庫オリジナルとなっています。坂口安吾は『不連続殺人事件』や『安吾捕物帖』などのミステリ作品も手掛けている一方で、自らを「安吾タンテイ」と名乗り、帝銀事件、下山事件、チャタレイ裁判など実際の事件について大胆な推理も展開しています。戦後の難事件を推理し、クリスティーやクイーン、横溝正史らの探偵小説を論じる一冊。安吾探偵をご堪能あれ!
発売日:2024年1月31日
恩田陸(著)
出版社(レーベル):講談社
全寮制の学園では、特殊な事情を抱える生徒が、しばしば行方を晦ます。ヨハンの隠れた素顔、校長の悲しき回想、幼き日の理瀬、黎二と麗子の秘密、月夜に想いを馳せる聖、そして水野理瀬の現在。理瀬と理瀬を取り巻く人物たちによる、幻想的な世界へ誘う六編が収録された、累計100万部突破の「理瀬シリーズ」初の短編集です。
ゴシック・ミステリの金字塔シリーズ初のスピンオフ短編集。シリーズ独特の幻想的な世界観へと誘う一冊。理瀬と深い縁があり、シリーズ途中からイメージが大きく変化したヨハンが主人公の物語もあり。情景が浮かぶ文章はもちろん、装丁&挿絵の美しさも堪能できます。
発売日:2024年1月31日
赤川次郎(著)
出版社(レーベル):新潮社
大学受験の朝、駅で射殺事件を目撃しながら通報を怠った麻紀。やがて親友の恋人として再び姿を現した犯人は職業的殺人者だったーー。一方、事件を追う刑事のことみは現役大臣の秘書と交際するうち、大臣の特殊な性癖と周囲の不審な事件を知り、密かに調べを進める。
「小説新潮」連載を単行本化した殺人の構図と人間の暗部が読者を打ちのめす傑作長篇です。人気作家のミステリーが読みたい、面白いミステリー小説を探している、ライトにミステリーを楽しみたい、そんな方におすすめ。展開が早いのでテンポよくサクサクと読み進められます。
発売日:2024年2月29日
アントニイ・バークリー(著) 藤村裕美(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
4階建てフラットの最上階で女性の絞殺死体が発見された。警察は物盗りと断定。一方、捜査に同行した小説家ロジャーは、フラットの住人による巧妙な計画殺人と推理し、被害者の姪を秘書に雇って調査に乗り出し……。
名探偵vs警察捜査、火花散る推理合戦にワクワク。さらにバークリー作品は“クスクス”できるのも魅力のひとつ。本作でも迷探偵として親しまれているロジャー・シェリンガム探偵の名推理が炸裂しています。謎解きに加えて、人の描写や会話が面白いのもおすすめポイントです!
発売日:2024年2月6日
遠藤かたる(著)
出版社(レーベル):宝島文庫
何を読もうか迷った時は、受賞作品を選ぶのもおすすめ。2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリを受賞した本作は、大阪で活動する3人組女性地下アイドル「ベイビー★スターライト」の物語。尊大な事務所社長、グループ内での人気格差、恋人から暴力を受けているセンター……。様々な問題を抱えて危機的な状況にあった彼女たちにさらなる問題が起きる。メンバーのひとりが事務所で人を殺してしまったのです。彼女の罪を隠蔽するため、三人は死体を山中に埋めることを決意して――。
「バレちゃうのか」「もうダメなのか」とずっとハラハラながらも、テンポがいいのでどんどん読み進めることができ、物語の世界に没入できます。
発売日:2024年2月9日
北村薫(著)
出版社(レーベル):文藝春秋
「アイ・ラブ・ユー」を「月が綺麗ですね」と漱石が訳したとされる伝説はいかに生まれたのか?夏目漱石、芥川龍之介、松本清張……文豪の謎を国語教師のお父さんが見事に解決!
文藝編集者として出版社に勤める娘が仕事の現場で行き当たった「謎」を、高校の国語教師のお父さんが解決する〈中野のお父さん〉シリーズ第4弾。お父さんの博識ぶりに唸るシリーズですが、シリーズを追うごとにうんちくが増えている感がありましたが、今回はおなじみの人気作家ばかりが並び、親近感のある文学的な謎解きが堪能できる一冊。
発売日:2024年2月29日
B・S・ジョンソン(著) 青木純子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
年齢も視力も聴力も痴呆度もすべてが異なる8人の老人と寮母1人が見る、各人にひとつの真実。同じ一夜の同じ一場面が、9人それぞれの章の同じページ、同じ行に浮かび上がる。9つの章が同時進行する変わったスタイルで描かれる傑作実験小説です。
視点となる人物の視力、聴力、痴呆の問題により、独特の混乱、煙に巻かれた感があり、ミステリー濃度を強めます。「老いるとは」についても考えさせられる一冊。9人のうちホーム入居者は8人で寮母が1人。なぜか老いていないはずの寮母が一番不健全に見え、妙にリアルです。
発売日:2024年2月14日
中山七里(著)
出版社(レーベル):小学館
東京地裁に勤める高遠寺円は、中国製のAI裁判官のテスト運用を担当することになった。AIの驚くべき精度に歓迎ムードが高まる中、18歳少年による父親殺しが起きる。難しい裁判のためデータを入力し、AI裁判官にシミュレートさせてみると「死刑」という判決が下される。果たして、人工知能に罪は裁けるのかーー。
人間が作り、人間が使うAI。やはり人間は自分の頭で考え続けなければいけないと思わずにはいられません。AIはすでに未来のものではなく、どう使うかという現実に直面している今、読んで考えるべき一冊です。
発売日:2024年3月14日
麻根重次(著)
出版社(レーベル):講談社
松本市役所の市民相談室に勤務する六原あずさは、相談者の妻が密室から転落死する現場を目撃する。被害者が死の間際につぶやいた「ナツミ」を追って、刑事である夫の具樹は捜査を始めるが、なかなか手がかりを摑めずーー。
第16回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。装丁に一目惚れ、さらに帯には「ばらのまち福山ミステリー文学賞」選者で広島県福山市出身のミステリー作家・島田荘司のコメントが。これは読むべきミステリー小説の新刊だと手に取りたくなります。
発売日:2024年3月6日
浅瀬明(著)
出版社(レーベル):宝島文庫
ビジネスセンスを備えた人材の育成を目指す木津庭商科大学では、学食等での支払いのみならず、家賃の支払いや単位の売買にも使用できる「ポイント」を獲得するため、学生たちがしのぎを削っていた。家庭の都合により、残り半年で卒業しなければならなくなった2年生の降町歩は、不正にポイントを稼ぐ者たちを摘発する「監査ゼミ」に所属する。家庭教師サークルを装いガールズバーを運営していると噂が出ているサークルに調査に行くが、逆に取り込まれて……。
2024年第22回『このミステリーがすごい!』大賞文庫グランプリ受賞作。前倒しで大学を卒業するために奮闘する学生の話ですが、この先の社会で通用するような考え方もあり。実践的なことが学べるライトなミステリーです。騙し騙されのコンゲーム、エンタメ要素もあり、若者の成長物語としても楽しめます。
発売日:2024年3月6日
堂場瞬一(著)
出版社(レーベル):文春文庫
87歳の元小学校教師が殺された。自首してきた男性も87歳で、ベテラン刑事・岩倉剛にとって過去最高齢の容疑者だった。60年前からの知り合いだというが、なぜか動機だけは頑なに語ろうとせず……。
「ガンさん」こと55歳のベテラン刑事・岩倉剛が活躍する警察小説「ラストライン」シリーズ第6弾。ガンさんが自分史上最高齢の容疑者と対峙します。事件の真相、深い闇。「罪の年輪」というタイトルがずしりと重くのしかかります。
発売日:2024年3月15日
神永学(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
幽霊マンション、ポルターガイスト……。複雑怪奇な連続事件と、電脳空間に暗躍する謎の人物〈フェルマー〉を、赤い瞳の大学生・斉藤八雲と天才数学者・御子柴岳人、心霊透視と数学解析の異能バディが迎え撃つ!
累計750万部突破のシリーズ最新文庫で八雲と御子柴のコラボ第2弾。二人の出会いの物語が描かれます。八雲シリーズおなじみの映画同好会がどうしてできあがったのかも明かされ、シリーズ愛読者がムフフとなれる一冊です。見どころは八雲と御子柴のやりとり。なんだか笑っちゃうやりとりにクセは強めでもほっこりします。
発売日:2024年3月6日
中山七里(著)
出版社(レーベル):祥伝社
浦和医大法医学教室に、餓死した女性のミイラ化死体が運び込まれた。女性は20年以上引きこもっていたという。解剖を行った光崎教授は、空っぽであるはずの胃から意外なものを見つけて……。ミイラ化した死体は何を語るのか。
「ヒポクラテスシリーズ」第5弾では、引きこもり、老老介護、8050問題など身近な社会問題をテーマに、分かりやすい伏線で解決へと誘ってくれます。事件は解決するものの結末はちょっぴり苦め。ページを開いて目に飛び込んでくる各章のタイトルについた数字4桁に謎解きの始まりかとワクワクするも、読後に改めて目にすると、印象がガラリと変わります。
発売日:2024年2月21日
東川篤哉(著)
出版社(レーベル):ポプラ社
幽霊がやったとしか考えられない!両親が営む探偵事務所の手伝いで不思議な出来事を目にした中2男子の晴人は、自称・天才発明家のアラサー博士にオカルト事件を相談するが……。事件の犯人は幽霊?それとも人間?
『謎解きはディナーのあとで』の東川篤哉が描く、ユーモアたっぷりの連作短編ミステリー小説。街のオカルト事件に挑む異色の凸凹コンビの活躍が楽しめます。登場人物の覚えやすいネーミングに「この世界観好き!」とハマるかも。オカルトが絡むこともあり、ちょっと突飛なトリックが出てくるのも、このテイストならアリ。気軽にミステリーを楽しみたい方におすすめです。
発売日:2024年1月31日
雨穴(著)
出版社(レーベル):飛鳥新社
謎の空間、二重の扉、窓のない子供部屋、この家、何かがおかしい。知人が購入を検討している都内の中古一軒家には「謎の空間」が存在していた。不可解な間取りの真相とは……。
間宮祥太朗、佐藤二朗がW主演を務めた2024年公開のヒット映画『変な家』の原作は、謎の覆面作家・雨穴のデビュー作。文庫版にはキーマンとなる設計士・栗原による「文庫版あとがき」も収録されています。インターネットを中心に活動する作家で、ウェブライター、YouTuberとしても活動している雨穴がYouTubeに投稿したバズ動画が小説となり、すべての謎が解き明かされます。なのに怖さと不気味の余韻が残る1冊です。
発売日:2024年1月23日
内田英治(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川ホラー文庫
恋愛に奥手な輪花は、親友の勧めでマッチングアプリを始め、吐夢と出会うが、彼はプロフィールとは別人のような不気味な男だった。同じ頃、“アプリ婚”をした夫婦を狙う猟奇的な連続殺人事件が……。
土屋太鳳主演、佐久間大介、金子ノブアキ共演、日本アカデミー賞最優秀作品賞受賞の『ミッドナイトスワン』(2020年)で監督を務めた内田英治がメガホンを取り、2024年に公開された映画の原作。マッチングアプリといういまどきのツールをテーマに出会いに隠された恐怖を描く新感覚サスペンス・スリラー。誰をそして何を信じればいいのか。ゾワゾワ感がたっぷりと味わえます。
発売日:2024年1月22日
森見登美彦(著)
出版社(レーベル):中央公論新社
舞台はヴィクトリア朝京都。洛中洛外に名を轟かせた名探偵ホームズが、まさかの大スランプ!? ホームズとワトソンはこの摩訶不思議な大迷宮(スランプ)を抜け出せるかーー。
森見登美彦ならではの面白設定が展開。シャーロック・ホームズの物語となれば、ホームズを読んでいないとダメ?と思っている方はご安心を。ファンタジー要素ありのドタバタコメディとして楽しめる一冊になっています。そしてホームズ好きな方たちは、「あのホームズが…」という視点で戸惑いながらも楽しめます。舞台が変わっても、相棒ワトソンとのバディ関係は健在です。
発売日:2024年2月9日
柚月裕子(著)
出版社(レーベル):徳間書店
事件現場で収集した情報を解析・プロファイリングする機動分析係に配属された森口泉。だが配属当日、会計課から約1億円が盗まれた。混乱する中、さらに殺人事件が発生。組織の闇に泉の正義が揺れる!
シリーズ第1作の『朽ちないサクラ』は2024年に杉咲花主演、萩原利久共演で映画化。シリーズ第2作の本作では刑事となった森口泉が警察組織に巣くう不条理の数々に挑みます。信念の強すぎる泉とちょっとクセありのチームメンバーが頼もしい。ドキドキしながら一気に読み進められる一冊。晴れて警察官なるどころか、自身の能力に目覚めた泉が、今後どのような活躍を見せるのか、楽しみにしたいシリーズです。
発売日:2024年1月24日
アガサ・クリスティ(著)
出版社(レーベル):早川書房
毎週火曜日、元警察官や弁護士、作家など謎解きに自信がある人が集まって推理合戦をする〈火曜クラブ〉。難事件に誰もが頭を抱える中、ミス・マープルは豊かな人生経験と鋭い知性で、毎回さらりと謎を解き……。メンバーの中でも一番地味なふつうのおばあさんが誰にも負けない推理力を発揮する13作品を収録した短編集!
ミステリーの女王の作品を読んでみたいけれど、なかなか手が出せない。本を読むのは苦手だけど名作には触れておきたい。そんな方におすすめしたいこの本は、小学校高学年から中学生向けなので、読みやすく、分かりやすい。安心して手を出せる一冊です。読みやすさ、分かりやすさはありますが、ミス・マープルの推理は本格派のまま。この一冊を入り口にして、マープル・シリーズに足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
発売日:2024年3月6日
サラーリ・ジェンティル(著) 不二淑子(訳)
出版社(レーベル):早川書房
オーストラリア在住の推理作家ハンナは、ボストン在住の作家志望者レオにメールで助言を仰ぎ、ボストン公共図書館を舞台にした新作に取り組んでいた。レオのメールに刺激を受けるが、その内容は次第に不穏さを増していき……。
本書のメインはハンナが書くスリラー小説。「作中作」が登場する作品で舞台は図書館。本にまみれる作品です。そしてハンナとレオのメールのやりとりが興味をそそります。レオは「作中作」にも登場するので、時々、疑ったり、混乱しながら読み進めるのもミステリーならではの楽しみ方。2023年エドガー賞(アメリカ探偵作家クラブ賞)メアリ・ヒギンズ・クラーク賞ノミネート作、手にしてみてはいかがでしょうか。
シリーズものや追いかけている作家の最新作は、迷わず手にするものですが、「新しいミステリー小説を読みたい」となんとなく思った時には、気軽に読めるものからスタートするのもあり。新刊でお気に入りの作家やシリーズを見つけたら、そこから遡って読破するのもおすすめ。新たな作家、新たな切り口、新たなシリーズ。なにか新しいものを求めているという方は、まずは新刊からチェックしてみてはいかがでしょうか。
ミステリードラマもチェック!
ミステリーチャンネルでは、アガサ・クリスティーが生み出した名探偵「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」や、「シャーロック・ホームズの冒険」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのミステリードラマを放送しています。
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