2025/03/25

【英国最新作】実際の事件に基づいた話題のドラマ2作品がすごい!イギリスでの反響は?

英国ITVで放送されて間もない話題作「英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?」(原題:A Cruel Love: The Ruth Ellis Story)と「連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義」(原題:Until I Kill You)が、ミステリーチャンネルで独占日本初放送!実際に起きた事件を描いた英国の最新ドラマ2作品の魅力をイギリスでの反響を交えながらご紹介していきます。

「英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?」


© ITV Studios Limited 2024

1作品目の「英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?」(原題:A Cruel Love: The Ruth Ellis Story)は、英国ITVで2025年3月に放送されたばかりの最新作。1955年に28歳の若さで絞首刑となった、英国最後の女性死刑囚ルース・エリスの実話をもとにしたドラマ(全4話)です。

14歳の頃から家計を支えるために働きはじめ、ロンドン最年少のクラブ支配人にまでのぼりつめたルース。しかし、恋人であるカーレーサーのデヴィッド・ブレイクリーを射殺し、死刑を求刑されます。判決にかかった時間はわずか14分。デヴィッドによる暴力や流産など事件の背景が明らかになり、情状酌量の余地がありながらも、判決から22日後には絞首刑が執行されることに…。

「三角関係のもつれ」「司法の手を借りた無理心中」などさまざまな解釈で幾度となく映像化されてきたルース・エリス事件。なぜルースはデヴィッドを殺したのか?なぜ情状酌量が認められなかったのか?犯した罪以上に重い審判が下された背景には、英国が抱える階級制度の闇、そしてナイトクラブで働くシングルマザーというルースに対する偏見が影響したともいわれています。本ドラマでは、そんな事件の裏側に隠された悲しい事実を描いています。


© ITV Studios Limited 2024

主人公のルース・エリス役は、映画「ボヘミアン・ラプソディ」でフレディ・マーキュリーの元婚約者を演じたルーシー・ボーイントン。ルースの命を救うべく奔走する弁護士ジョン・ビックフォード役は、「アガサ・クリスティー 検察側の証人」「ミスター・ベイツvsポストオフィス」などで有名なトビー・ジョーンズ。上流階級出身のルーシーの恋人デヴィッド・ブレイクリー役は、「メアリー&ジョージ 王の暗殺者」でサマセット伯爵を演じたローリー・デヴィッドソンです。

そして、ドラマ内で裁判長を演じているのは、実際にルース・エリスの裁判を担当したヘイヴァース裁判長の孫であるナイジェル・ヘイヴァース。運命を感じずにはいられない配役も含め、実力派俳優が脇を固めています。

イギリスのメディアやSNSでの評価は上々!現在と過去が行き来する独特な世界観


© ITV Studios Limited 2024

第1話の放送後のレビューでは、テレグラフ紙(The Telegraph)、インデペンデント紙(The Independent)など多くのメディアから星4つの高評価を獲得。ルーシー・ボーイントンやトビー・ジョーンズの演技に賞賛の声が集まりました。トビー・ジョーンズにいたっては、役柄がぴったりすぎて一生のハマり役になることを心配するレビューまであります。

 Jones is as superb as ever, albeit in the kind of role he’s perhaps in danger of finding himself stuck in for good:

(引用元:The Independent

訳:トビー・ジョーンズは相変わらず見事な演技を披露しているが、このような役柄から一生抜け出せない可能性もはらんでいる。

SNSでも「手に汗握るすばらしいドラマ」「ルーシーがルース・エリスを完璧に演じている」「不正・女性差別・虐待を力強く描いている」などポジティブな声が多数派です。なかには、「70年経った今でも、変わらないことが多すぎると気づかされた」という感慨深い感想もありました。

一方で、過去と現在が行ったり来たりするためやや困惑した視聴者もいたようです。例えば、第1話の冒頭はルースが死刑執行を待つ現在のシーンから始まったと思うと、次の瞬間にはルースが恋人デヴィッドを撃つ過去のシーンに切り替わっています。慣れるまでは混乱する可能性もありますが、このテンポのよい独特な世界観も魅力のひとつ。エンディングに近づくにつれて背景がすっきりと整理されていきますよ。

「英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?」の見どころ・レビュー


© ITV Studios Limited 2024

ここからは、ネタバレなしで見どころを紹介…といいたいところですが、「英国最後の女性死刑囚」というタイトル自体がネタバレな本ドラマ。ルースも逮捕後の最初の取調べで「I am guilty. I am rather confused」(私は罪を犯しました。少し混乱しています。)とはっきりと答えており、「実は無実だった」なんていう大どんでん返しもありません。

はじめから結末がわかっている、それこそがこのドラマの魅力なのです。

第1話で取り調べに応じるルースは、きれいにブリーチしたブロンドの髪に真っ赤な口紅。タバコを片手に、「カットグラスアクセント」と呼ばれる上流階級が使う明瞭なアクセントで、明確な殺意を持って殺したと毅然とした態度で語っています。しかも、幼い息子を自宅に置き去りにしてきたと言い出す始末で、ルースの印象はお世辞にもよいとはいえません。

ところが、ストーリーが進んでいくにつれ、美しく着飾った見た目も気取った話し方も、すべては自分を強く見せるための鎧のように思えてきます。そして、覆ることのない悲しい結末が待っていることを知りながらも、ルースが助かる未来を期待してしまったのは筆者だけではないはずです。

ドラマの冒頭は、死刑執行の当日。「気持ちを落ち着かせる」という注射をルースが穏やかに断るシーンからはじまり、最終話でまた同じシーンに戻ってきます。苦労してやっと華やかな地位を手に入れても階級社会の壁は越えられず、恋人の暴力ですべてを失い、司法制度にも裏切られ、ルースはどんな気持ちでその日を迎えたのか?裁判中も終始毅然とした態度を通したルースですが、まったく同じシーンでも二度目に見るときには違う感情が湧いてくることでしょう。

「連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義」


© 2023 World Productions Limited All Rights Reserved. Licensed by ITV Studios Ltd.

2作品目は、「連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義」(原題:Until I Kill You)。相手が連続殺人鬼とは知らずに交際・同棲し、瀕死の重傷を負いながらも生き延びたディリア・バルマーの自伝的著書「Living with a Serial Killer」を映像化したドラマ(全4話)です。イギリスでは2024年11月にITVで放送されました。

物語のはじまりは1991年のロンドン。カナダ人の派遣看護師のディリア・バルマーはパブで大工のジョン・スウィーニーに出会います。「I’m a “traveller”, not a “tourist”」(私は旅人、旅行者ではない)と自己紹介する自由な生き方を好むディリアは、ドイツで仕事をしていて同じく旅好きというジョンと交際・同棲をはじめることに。しかし、違和感を抱きはじめたディリアが別れを切り出すと、ジョンの態度は暴力的なものへと一変します。かつての恋人を殺したと脅すジョンに怯え、ディリアは逃げ出すことを決意するものの…。

デジョン・スウィーニーは遺体を運河(canal)に遺棄する手口から、「The Canal Killer(カナルキラー)」というニックネームで世間を騒がせたイギリスで最も悪名高い連続殺人鬼のひとりです。ドラマでは、男性から女性への暴力に対処する法制度の欠陥が描かれると同時に、PTSDに苦しみながらも、ジョンを殺人罪で有罪にするために検察側の重要証人として法廷に立つディリアの姿を描いています。


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主人公のディリア・バルマーを演じるのは、「ブリーク・ハウス」で英国アカデミー賞を受賞した実力派俳優アンナ・マックスウェル・マーティン。連続殺人犯ジョン・スウィーニーを演じるのは、「刑事モース〜オックスフォード事件簿〜」でおなじみのショーン・エヴァンスです。

英紙ガーディアンで最高評価を獲得!アンナ・マックスウェル・マーティンの演技に注目


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イギリスでのドラマ放送後の反響は大きく、英紙ガーディアン(The Guardian)が最高評価の5つ星をつけたほど。アンナ・マックスウェル・マーティンが「キャリア最高の演技を見せた」と絶賛されると同時に、ショーン・エヴァンスのモース役とはまったく異なる演技も高く評価されました。

Sweeney is played by Shaun Evans, in a marked change of pace from starring as a young Morse in the genteel Endeavour. He matches what is probably a career-best performance from Maxwell Martin: human; charming at first, but increasingly monstrous thereafter; altogether terrifying. 

(引用元:The Guardian

訳:ショーン・エヴァンスが演じるスウィーニーは「刑事モース〜オックスフォード事件簿〜」での若きモース役とは一転。はじめは魅力的な人間だが、その後どんどん怪物のように変化していく背筋が凍るような役柄を演じ、マックスウェル・マーティンのおそらくキャリアのなかで最高の演技と肩を並べている。

2025年ロイヤル・テレビジョン・ソサエティ(RTS)プログラムアワードにも、アンナ・マックスウェル・マーティンが最優秀主演俳優賞としてノミネートされています。SNSでも「ハラハラする、素晴らしいドラマ」「アンナ・マックスウェル・マーティンの演技がすごい」など好意的な投稿がほとんど。もちろん、ショーン・エヴァンスにも「名演技に感服した」と称賛の声があがっています。

「連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義」の見どころ・レビュー


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原題の「Until I Kill You」は、ジョン・スウィーニーがディリアを描いた絵のなかに書いた「May you never die until I kill you」(俺がお前を殺すまで、絶対にお前が死にませんように)というメッセージから。ジョンのサイコパスぶりが伝わる強烈な一文です。

しかし、本ドラマの魅力は、殺人鬼ではなくその被害者に焦点を当てている点だといえるでしょう。ディリアはかなり個性の強い人物で、万人受けするタイプではないところもユニークです。ディリアはジョンに襲われたトラウマからさらに刺々しさが増し、アルコールに依存するようになります。そんな崖っぷちの精神状態のなかで、苦しみながらも前へ進もうとするディリアの強さを表現したアンナ・マックスウェル・マーティンの演技は見応えたっぷりですよ。

ショーン・エヴァンスの魅力を再発見したい人にもおすすめです。若かりし日のモース役で有名なショーン・エヴァンスが連続殺人犯を演じると聞いて、驚いた人も多いのではないでしょうか?しかも、ジョン・スウィーニーは有罪となった2人の殺人罪のほかに、5人を殺害したともいわれるサイコパス。モースとはあまりにもかけ離れた役柄ですが、いざドラマを見てみると心配は無用でした。

見た目は一見ショーン・エヴァンスとは気づかないほど変わっており、英語もモースが話すオックスフォード英語ではなくコテコテのスカウス(=リバプール訛り)です。それでいて、母性本能をくすぐる笑顔は健在。女性を惹きつけるチャーミングさと猟奇的な面をあわせ持つジョンを完璧に演じています。ちなみに、ショーン・エヴァンス本人もジョンと同じリバプール出身なので、ドラマ内でのアクセントは本物です。モースが好きな人は、ぜひ字幕版で違いを聞き分けてみてくださいね。

おわりに

事実は小説より奇なり。今回はイギリスで実際に起こった有名な事件をもとにした英国の最新ドラマ2作品をご紹介しました。どちらもイギリスで放送されたばかりの話題作です。実話ベースならではの興味深い内容はもちろん、豪華な俳優陣の見応えのある演技にもどっぷり浸かってみてはいかがでしょうか?

【放送情報】

●英国最後の女性死刑囚ルース・エリス~なぜ彼女は恋人を殺したのか?(全4話)
字幕版:4/27(日)夜7:45 一挙放送
番組公式サイト

●連続殺人犯にとりつかれてしまった女ディリア・バルマーの正義(全4話)
字幕版:4/27(日)夕方4:00 一挙放送
番組公式サイト

※ミステリーチャンネルでの放送情報は、番組公式サイト、または、ミステリーチャンネル カスタマーセンターまでお問い合わせください。

 

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柴田 冴
ロンドン在住ライター|子どもの頃にアガサ・クリスティーの虜になって以来、謎解き・推理ドラマの沼にどっぷりつかっています。好きな言葉は「伏線回収」。