2024/08/21

法廷ミステリー小説おすすめ24選【人間ドラマを楽しみながら法律の知識も身につく!】

真実はどこにあるのか。被告は有罪なのか無罪なのか。法廷を舞台に検察側と弁護士側が事件の真相を解き明かすべく繰り広げる審理や裁判が読者を引き込む法廷ミステリー小説。主人公は弁護士、検察官、被告人、事件関係者など様々で、視点が変わることで物語の展開にもそれぞれの魅力があります。真実を追い求める主人公たちの葛藤も描かれ、事件をめぐる人間模様に“真実がすべてでなはい”という思いを抱いてしまうことも。緊張感と人間心理を深く味わい尽くせるおすすめの国内、海外の法廷ミステリー小説をご紹介します。

法廷ミステリー小説のおすすめポイント

法廷ミステリーは誰が主人公になるのか、誰の目線で物語が描かれるのかで、物語の楽しみ方、感情移入するキャラクターも変わってきます。舞台は法廷…と聞くと、少しハードルが高い印象も受けますが、扱う事件も法律も様々ですし、何より、法廷ミステリーの主役は法律でなく、事件をめぐる人間模様です。小説を通じて法律に触れることで、知らなかった法律を知るきっかけにもなります。法廷で繰り広げられる審理や裁判での張り詰めた緊張感、真相に近づいていくハラハラ・ドキドキ感を堪能しながら、“真実とはなにか”を考えさせられる。法廷ミステリーは頭と心を刺激してくれます。

おすすめの法廷ミステリー小説 海外編14選

『推定無罪(上)』

スコット・トゥロー(著) 上田公子(訳)
出版社(レーベル):文春文庫

地方検事選挙が白熱する街で起きた女性検事補殺し。逮捕されたのは、被害者と不倫関係にあった敏腕検事。果たして彼は有罪か無罪か?

日本では1988年に刊行された本作は、同年のミステリーベスト1に選ばれ80万部を売り上げた伝説のベストセラー(原作は1987年刊行)。白熱の法廷戦、豊穣な人間ドラマ、ラストに待つ驚愕の真相に「これぞ!不朽の名作!」と唸らずにはいられません。作者のトゥローが元検事補で弁護士ということもあり、リアルな描写で読者を引き込みます。ハリソン・フォード主演で1990年に映画化。ハリソン演じる主人公の主席検事補ラスティの苦悩、緊張感はたっぷり伝わる映画に。『推定無罪』の20年後を描いた『無罪 INNOCENT』もあわせて読むのがおすすめ。

『検察側の証人』

アガサ・クリスティー(著) 加藤恭平(訳)
出版社(レーベル):早川書房

街で知り合い親しくなった金持ちのオールドミスと青年レナード。ある夜そのオールドミスが撲殺された。状況証拠は容疑者の青年に明らかに不利。金が目当てだとすれば動機も充分。しかも、彼を救えるはずの妻がなんと夫の犯行を裏付ける証言をして……。

見事な展開と2転3転のどんでん返しで行き着く結末に脱帽。ミステリーの女王、アガサ・クリスティーの短編小説をもとにクリスティー自身が戯曲化しています。舞台劇としてブロードウェイやロンドンでロングランされ、1957年にはビリー・ワイルダー監督が映画化(タイトルは『情婦』)。アメリカでは1982年に、イギリスでは2016年にドラマ化。目の前で繰り広げられる裁判劇。まるで傍聴席にいるような感覚が味わえる一冊です。

『コリーニ事件』

フェルディナント・フォン・シーラッハ(著) 酒寄進一(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

67歳のイタリア人、コリーニが殺人容疑で逮捕された。被害者は大金持ちの実業家で、事務所を開いたばかりの新米弁護士ライネンは国選弁護人を買ってでる。しかし、殺されたのはライネンの亡くなった親友の祖父だったと判明。知らずに引き受けたとはいえ、ライネンは少年時代に世話になった恩人を殺した男を弁護する立場になる。

正義とは、法とは、弁護士の役割とは――と、ライネンの苦悩、心情に寄り添いながら考えさせられます。ページ数は200ページ程度とかなり薄めですが、読後の充実度はかなり高め。濃い物語が味わえます。この小説で語られた“法律の落とし穴”がきっかけに、法律が見直されることになるという国家を揺るがした世界的ベストセラーです。2019年にドイツで映画化。

『密造人の娘(新版)』

マーガレット・マロン(著) 高瀬素子(訳)
出版社(レーベル):早川書房

34歳、独身。デボラ・ノットが持っているのは、熱い正義の心と、酒の密造人の娘という汚名――。弁護士デボラは迷宮入りとなっていた殺人事件の調査を知人に依頼された。自身、地方裁判所の判事に立候補し、激しい選挙戦の最中だが、必ず犯人を見つけ出す!

アメリカ探偵作家クラブ賞、アンソニー賞、アガサ賞、マカヴィティ賞の4賞を受賞した本作の舞台はアメリカ南部。因習にまみれた地域独特の社会構造と人間関係が絡み合う物語が展開。本国では20作近く発売されたシリーズですが、翻訳本が読めるのは4冊程度というのが残念。正義感あふれるタイプのヒロインが好き、という方には特におすすめです。

『ユダの窓』

カーター・ディクスン(著) 高沢治(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

結婚の許しを乞うため恋人メアリの父親エイヴォリー・ヒュームを訪ね、書斎に通されたジェームズ・アンズウェル。話の途中で気を失ったアンズウェルが目を覚ましたとき、密室内にいたのは胸に矢を突き立てられて事切れたヒュームと自分だけだった――。

殺人の被疑者で圧倒的に不利な立場のアンズヴェルの弁護を担当するのは10数年ぶりに法廷に立つヘンリ・メルヴェール卿です。次々と新たな事実が明らかになる展開で完璧な密室トリックを解明しいていきます。メルヴェール卿が本職の弁護士として活躍します。小さな証拠から事実を推測し、相手を論破していく法廷劇。シンプルで爽快な物語です。

『高慢と偏見、そして殺人』

P・D・ジェイムズ(著) 羽田詩津子(訳)
出版社(レーベル):早川書房

紆余曲折の末、エリザベスとダーシーが結婚してから六年。二人が住むペンバリー館では平和な日々が続いていたが、ある嵐の夜、一台の馬車が森から屋敷へ向けて暴走してきた。馬車に乗っていたエリザベスの妹リディアは、半狂乱で助けを求める。家人が森へ駆けつけるとそこには無惨な死体。そのかたわらには放心状態のリディアの夫ウィッカムの姿が。殺人容疑で逮捕されるウィッカム。そして、事件は一族の人々を巻き込み法廷へ!

著者P・D・ジェイムズがジェーン・オースティンの古典に挑みます。オースティンの『高慢と偏見』を読んでいなくても、エリザベス、ダーシーの人物像がしっかりと描かれているので(あらすじまとめのような箇所あり!)、物語の世界観にスッと入り込めます。『高慢と偏見』以外のオースティン作品の登場人物もチラリと姿を見せ、オースティンファンも楽しめます。時代考証、謎解き、心理描写。すべてがすばらしく面白みがたっぷりと詰まっています。

『死刑判決(上)』

スコット・トゥロー(著) 佐藤耕士(訳)
出版社(レーベル):講談社文庫

死刑執行まで1ヶ月、弁護人アーサーの前に現れた真犯人と名乗る男。レストランで3人が惨殺され、冷凍庫詰めにされた10年前の事件は振り出しに戻った。麻薬にはまり収賄罪で逮捕された美貌の元判事、野心家の辣腕女検察官、一匹狼の刑事。時を経て、再び交錯する人生の行方。10年前の判決は冤罪だったのか、それとも――。

スコット・トゥロー読者にはお馴染みの架空の都市キンドル郡を舞台に繰り広げられるリーガル・サスペンス。トゥローはシカゴ連邦検察局に検事補として在職中に『推定無罪』を発表。以降、『立証責任』『有罪答弁』など傑作を世に送り出しています。エンターテインメント性が高く、深く味わい深い人間ドラマが堪能できます。

『たとえ天が墜ちようとも』

アレン・エスケンス(著) 務台夏子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

高級住宅街の路地で女性の遺体が発見された。刑事マックスは、目撃者の証言から被害者の夫である刑事弁護士プルイットに殺人の疑いをかける。プルイットは、長年ともに働いた仲間で引退した弁護士ボーディに潔白を証明してくれと依頼。ボーディは弁護を引き受けたが、それは命の恩人である親友のマックスと敵対することを意味していた。

一つの事件に真っ向から挑む親友同士のマックスとボーディ。迷いと決意に揺れながらもお互いの正義をぶつけ合う姿が胸を打ちます。それぞれの立場で事件が描写されることにより、寄り添うべきはどちらなのか、何が真実なのかと読者も心が揺れまくります。著者エスケンスの刑事弁護士25年の経験が余すことなく活かされているのもポイントです。

『弁護士アイゼンベルク』

アンドレアス・フェーア(著) 酒寄進一(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

凄腕の女性刑事弁護士ラヘル・アイゼンベルクのもとに、ホームレスの少女から弁護の依頼が持ち込まれる。少女の友人のホームレスの男が若い女性を殺害し、死体を損壊した容疑で逮捕された件だという。驚いたことに、その男はアイゼンベルクの元恋人という衝撃の事実が判明。若くして名声を得た物理学教授の彼が、なぜ路上生活を送り、殺人の被疑者となったのか。

二転三転する物語の展開、見せ場も分かりやすくしっかりと描かれ、テンポよく読み進められる一冊。敏腕女性弁護士が真実を追いかける殺人事件の被疑者は元恋人。まず、この設定が面白い!含みを残す結末に次回作への期待を抱かずにはいられない、弁護士アイゼンベルクシリーズ第1弾。第2弾『突破口 弁護士アイゼンベルク』でも登場人物の恋愛模様、恋人関係が絡んできます。

『ザ・プロフェッサー』

ロバート・ベイリー(著) 吉野弘人(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫

アラバマ大学ロースクールの老教授トム。法学者として順風満帆な人生を過ごしてきたトムは今、愛する妻を失い、友人の裏切りから不名誉な形で職を追われ、自身も癌を患っている。絶望の中、彼の前に現れたのはかつての恋人。娘夫妻と孫を大手運送会社のトラック事故で失った彼女は、トムに「法廷で真相を知りたい」というのだが……。

真実と悪、師弟愛、スポーツと友情。挫折を繰り返しながらも最後まで“正義”を諦めない骨太な登場人物たちに胸が熱くなる、エンターテインメント性高めで物語全般に“熱”が漂う痛快法廷ミステリーです。爽快なラストまで、アメリカンテイストに溢れる楽しい一冊。

『評決の代償』

グレアム・ムーア(著) 吉野弘人(訳)
出版社(レーベル):早川書房

数か月にわたる裁判の末、誘拐殺人事件の被告に下された判決は「無罪」だった。陪審員たちには世論から猛烈な誹謗中傷が浴びせられることに。それから十年後。当時の陪審員で、現在は弁護士として活躍するマヤのもとに、かつての事件の新たな証拠が見つかったとの連絡が入る。

映画の脚本家が手がけた限りなく有罪に近い男を無罪にした陪審員たちの葛藤とその後を描くヒューマンドラマ濃いめの法廷ミステリー。過去パートと現在パートが交互に描かれ物語が展開していきます。真実を明らかにすることが正義なのか、陪審員制度とは何なのか、読者にも判断を問いかけ、いろいろと考えさせる作品です。

『依頼人』

ジョン・グリシャム(著) 白石朗(訳)
出版社(レーベル):小学館文庫

十一歳の少年マークは、自殺寸前の弁護士から、有名な上院議員の死体の隠し場所を聞かされる。その情報はFBIが追い求めていたトップシークレットだった。FBIは秘密を明かせと迫る。しかし、そうすればマークも家族もマフィアに狙われることになる。決断を迫られ、悩んだマークは全所持金一ドルで、女性弁護士レジーに弁護を依頼する。

ジョエル・シューマカー監督、スーザン・サランドン、トミー・リー・ジョーンズ、ブラッド・レンフロ共演で1994年に映画化。映画もヒットした名作で、原作者のジョン・グリシャムは初版が最も多い人気作家でありながら、本作は小学館文庫版も新潮社文庫版も入手困難となっています。弁護士、ミシシッピー州下院議員も務めた作者が描くアメリカ社会の裏の現実に注目。『法廷事務所』や『ペリカン文書』などもあわせて読みたい!

『復讐法廷』

ヘンリー・デンカー(著) 中野圭二(訳)
出版社(レーベル):早川書房

その時、法は悪に味方した。娘を強姦・殺害した男が法の抜け穴を突き、放免されたのだ。父親は憎むべきその男を白昼の路上で射殺し復讐を遂げるが、自首した彼に有罪判決が下ることは確実。しかし、信念に燃える28歳の弁護士ゴードンはこの父親を救うべく勝ち目のない裁判に挑むのだった。

法の正義とは、と読む者に熱く問いかけてくる一冊。こちらも現在、入手困難となっている法廷ミステリーです。凶器もあり、目撃者もいる。しかも犯人は堂々と自白しているにもかかわらず、放免されてしまいます。規範と同情の間で葛藤する12人の陪審員の姿は他人事ではない。法の矛盾と正義のあり方に警鐘を鳴らす傑作です。

『証言拒否』

マイクル・コナリー(著) 古沢嘉通(訳)
出版社(レーベル):講談社文庫

大手銀行副社長撲殺の容疑で逮捕されたのは、ローン未払いを理由に家を差し押さえられたシングルマザーのリサ。彼女は仲間を募って銀行の違法性に抗議するデモを繰り返す有名人。高級車リンカーンを事務所代わりに金を稼ぐ、ロスきっての人気弁護士ミッキー・ハラーは社会的に注目を集める容疑者の弁護に乗り出す!

弁護士ミッキー・ハラーシリーズ第4作の上巻。依頼人のリサは正直助けてあげたいとは思えない感情移入しにくいタイプのキャラクターですが、いざ、裁判が始まると、そんなことは気にならず弁護側VS検察側が繰り広げる緊迫のバトルシーンに釘付けになります。どんどん追い込まれるハラーが、この苦境にどう立ち向かうのか、楽しみな思いを胸に下巻へ。

おすすめの法廷ミステリー小説 国内編10選

『ソロモンの偽証―第Ⅰ部 事件―上巻』

宮部みゆき(著)
出版社(レーベル):新潮社文庫

クリスマス未明、一人の中学生が転落死した。柏木卓也、14歳。彼はなぜ死んだのか。殺人か、自殺か。謎の死への疑念が広がる中、“同級生の犯行"を告発する手紙が関係者に届く。さらに、過剰報道によって学校、保護者の混乱は極まり、犯人捜しが公然と始まった。

ひとつの死をきっかけに膨れ上がる人々の悪意、それに抗し真実を求める生徒たちを描き、読者を物語に引き込むミステリーの傑作。生徒の数も多く、さらにはその家族まで登場。登場人物が多めで読むのに労力を要する箇所もあり。ミステリーに慣れていない方は、前後編で制作された映画版(主演はオーディションを勝ち抜いた新人女優が役名と同じく藤野涼子の名でデビュー)や全8話の連続ドラマ版(上白石萌歌主演、宮沢氷魚、山本舞香共演)などで物語の一部を把握してから読むのもアリ。韓国でもドラマ化されています。

『不知火判事の比類なき被告人質問』

(C) 矢樹純/双葉社
矢樹純(著)
出版社(レーベル):双葉社

フリーライターの湯川和花は殺人事件の裁判を傍聴するのだが、結審直前に衝撃的な被告人質問を目の当たりにする。左陪席の不知火春希裁判官が予想外の質問を被告に投げかけ、悲しすぎる事件の真相を自白のもとに晒して法廷の景色を一変させてしまう。こうした不知火判事の質問は「他に類を見ない質問」と法曹関係者の間で囁かれていた――。

誰も見たことのない衝撃の逆転裁判が始まります。どんでん返しの新女王とされる著者が放つ法廷ミステリーで、5つの裁判が収録された短編集です。短編集な上に、裁判を傍聴し記事にするライターの視点で描かれているので、法廷もの初心者にも読みやすいのもポイント。5つ目の裁判は前の4つを踏まえての物語となっているので、それまでのストーリーを自分がどこまで理解していたのかを確かめることができる面白さもあります。

『贖罪の奏鳴曲』

中山七里(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

弁護士の御子柴礼司は、ある晩、記者の死体を遺棄した。死体を調べた警察は、御子柴に辿りつき事情を聴く。だが、彼には死亡推定時刻は法廷にいたという“鉄壁のアリバイ”があった――。

主人公はどんな罪状でも執行猶予、減刑、時には無罪も勝ち取る弁護士、御子柴礼司。シリーズ第1作となる本作を原作にしたドラマ(主演は三上博史)と、シリーズ第1作から第4作『悪徳の輪舞曲』を原作にしたドラマ(主演は要潤)があります。ともに連続ドラマでの制作となっています。真犯人の意外性に著者らしさを感じます。

『検事の信義』

柚月裕子(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

検事の佐方貞人は、介護していた母親を殺害した罪で逮捕された息子の裁判を担当することになった。事件発生から逮捕まで「空白の2時間」があることに不審を抱いた佐方は、独自に動きはじめるが――。

『最後の証人』『検事の本懐』『検事の死命』に続く、正義を貫く検事、佐方貞人シリーズ第4作は全4編で構成された短編集。シリーズを原作としたスペシャルドラマを経て、ドラマシリーズ化。主演は上川隆也。第3話「正義を質す」では『孤狼』シリーズとクロスオーバー。柚月作品ファンにはたまらない演出となっています。

『13階段』

高野和明(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

犯行時刻の記憶を失った死刑囚。その冤罪を晴らすべく、刑務官・南郷は、前科を背負った青年・三上と共に調査を始める。手掛かりは、死刑囚の脳裏に甦った「階段」の記憶のみ。処刑までに残された時間はわずかしかない。2人は、無実の男の命を救うことができるのか。

タイムリミットものや重厚な物語がお好みの方におすすめの一冊。人が人を裁くことの難しさ、重さをずっしりと体感しながら、終始緊迫感が漂う中で二転三転する展開にページを捲る手が止まりません。本作は著者のデビュー作で、江戸川乱歩賞を選考委員の満場一致で受賞した話題作。2003年に反町隆史&山﨑努W主演で映画化。

『法廷遊戯』

五十嵐律人(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

法曹の道を目指してロースクールに通う、久我清義と織本美鈴。二人の過去を告発する差出人不明の手紙をきっかけに不可解な事件が続く。清義は異端の天才ロースクール生の結城馨に相談を持ちかける。真相を追う三人だったが、それぞれの道は思わぬ方向に分岐して――。

イヤミス要素ありの法廷ミステリー。メフィスト賞受賞の現役弁護士である著者による法律描写、公判中だけでなく休廷中の様子も描かれ、「無辜ゲーム」というマニアックで非現実的なゲームを扱いながらも法律用語に馴染みのない読者にも分かりやすく勉強にもなる一冊。2023年に永瀬廉主演、杉咲花、北村匠海共演で映画化。これは現実の話なのか、模擬裁判での話なのか。二転三転にとどまらず、四転五転する新たな事実にブンブン振り回されます。

『裁判員法廷』

芦辺拓(著)
出版社(レーベル):文春文庫

ある日、あなたのもとに届いた一通の呼出状。それは裁判員候補者として選ばれたという通知だった。裁判など、もちろん生まれて初めての体験。茫洋とした弁護士、森江春策と敏腕検事、菊園綾子が火花を散らす法廷で、あなたは無事評決を下すことができるのか。

裁判員制度をモチーフにした3編の連作集です。読者が“あなた”として裁判員として裁判に参加している“てい”で物語が展開していきます。裁判員になったつもりで楽しむのがおすすめ。2009年にテレビドラマ化。主人公の弁護士・森江役は中村梅雀。陪審員制度が導入されるという設定のもとで執筆した『十三番目の陪審員』(シリーズ6作目、長編としては5作目)もあわせて読みたい!

『真実の檻』

下村敦史(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

亡き母は、他の人を愛していた。その相手こそが僕の本当の父、そして、殺人犯。しかし逮捕時の状況には謎が残っていた――。

文庫版は2016年発売の単行本を加筆・修正し刊行。『闇に香る嘘』の著者が放つ家族の絆と法廷の闇に迫る渾身のミステリーのテーマは冤罪。冤罪が生み出される構造を詳細に描き出し、メディアやネット、世論の動きなど、リアルを感じる物語となっています。重いテーマながら、長編に3つの短編を組み込ませる構成で物語の理解度が高まり、サクサク読み進められます。

『半落ち』

横山秀夫(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

「妻を殺しました」。現職警察官・梶聡一郎が、アルツハイマーを患う妻を殺害し、自首。動機も経過も素直に明かす梶だが、殺害から自首までの2日間の行動だけは頑なに語ろうとしない。梶が完全に“落ち”ないのはなぜなのか、その胸に秘めている想いとは。

梶の自首以降の時間を警視、検事、記者、弁護士、裁判官、刑務官の6人が追いかける構成で物語が展開していきます。タイトルの“半落ち”とは「一部自供した」という意味の警察用語。2004年に寺尾聰主演で映画化。2007年には主演椎名桔平でテレビドラマ化もされています。6人それぞれの立場や思惑が交錯するリアリティ溢れる描写に引き込まれます。

『猫弁と魔女裁判』

大山淳子(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

事務所に来ない。最愛の婚約者との挙式の相談もすっぽかした。天才弁護士の百瀬は、青い瞳をした女性国際スパイの強制起訴裁判にかかりきりになっていた。それはまさか、幼い百瀬を置き去りにしたあの人なのか。百瀬によって幸せをつかんだ皆が、一心不乱に仕事をする彼の力になろうと立ち上がる。

まだまだ続きが読みたい人気シリーズの最終巻(シリーズは全5巻)、と思っていたら、『猫弁と星の王子』で第2シーズンとしてシリーズが再開。現在までに4巻が刊行されています。注目ポイントは最終巻にしてついに百瀬太郎が法廷に立つところ。原作者が脚本を務めたドラマ、猫弁シリーズは吉岡秀隆主演で2作放送されています。

最後に

映像化作品としても人気の高い法廷ミステリー小説。ベストセラーも多く、映像作品もヒットする傾向が高いのも特徴のひとつです。物語を楽しみながら勉強にもなる点も法廷ミステリー小説の魅力。今回紹介した以外にも名作から新作までおすすめしたい作品が盛りだくさん。映像化が控える作品も多いので、チェックしておきたいジャンルのひとつです。

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ライター/タナカシノブ
2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。