ジャンルを限定し、テーマに沿って書かれた短編作品を収めているアンソロジー。新しい作品や作家との出会いを求める本好きの方にも、自分好みの作品を見つけたい方にも、普段はあまり本を読まない方には読書入門としてもおすすめです。編者のセンスが出るのもアンソロジーの魅力のひとつです。短編が多いので、サクッと読める上に、ジャンルやテーマが選べるので、お気に入りに出会える確率が高いのもポイント! 新たなハラハラドキドキに出会いたいという方におすすめのミステリー小説のアンソロジーをご紹介します。
伊坂幸太郎、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一、道尾秀介(著)
出版社(レーベル):東京創元社
不可能犯罪ばかりが起こる街、蝦蟇倉(がまくら)市。商店街や高校があり、市内電車も走っているこの街は、どこにでもありそうで、どこかおかしい。自殺の名所といわくつきの崖では殺人事件が起き、ふらりと街を訪れた青年は怪しい相談屋の仕事を手伝う羽目に。蝦蟇倉警察署捜査一課に存在する不可能犯罪係、何の変哲もない置物を要求する脅迫者、10トンの銅像に圧し潰された彫刻家。この街に住む人々の日常は、いつも謎に彩られている。
人気の作家たちが贈る、不思議な街の道案内の一冊です。著者は違うけれど、作品がゆる~くつながっているのも読みやすさのポイント。この事件の裏ではあの事件が…などと頭の中で整理しながら読むのがおすすめです。
青崎有吾、斜線堂有紀、武田綾乃、辻堂ゆめ、額賀澪(著)
出版社(レーベル):東京創元社
学園ミステリアンソロジーの第二弾。1990年代生まれの作家による5つの短編を収録しています。第一弾よりも高校生の青春、恋愛の甘酸っぱさを感じるものもあれば、殺人事件が発生する作品も。この年代の作家さんの層の厚さも実感できる一冊。青崎有吾の『あるいは紙の』は、裏染天馬シリーズのスピンオフ。シリーズを楽しんでいる人も、これからシリーズを読もうとしている人も楽しめます。
阿津川辰海、井上真偽、空木春宵、織守きょうや、斜線堂有紀(著)
出版社(レーベル):中央公論新社
あなたはここから出られるか。5人の人気作家が仕掛けた、謎だらけの物語から脱け出せ! 全編書き下ろしの没入感溢れる小説集。
タイトルからも分かるように“脱出”をテーマにしたアンソロジーです。屋上、森、塔、神社、そして研究所。様々な場所からの脱出に挑むミステリーでは、物理的な脱出もあれば心理的な脱出も。脱出の捉え方にはこれほどまでに幅があるのか! とワクワクできる一冊。全く違うテイストの作品を楽しめるタイプのアンソロジーなので、好みが見つけやすいかも。
坂崎かおる、宮内悠介、青崎有吾、天祢涼、太田愛、織守きょうや(著)
日本推理作家協会(編)
出版社(レーベル):講談社
2023年発表された短編推理小説の中から、プロの読み手たちが選び抜いたミステリー小説愛好者にもミステリー入門書としてもおすすめの一冊。選定のポイントは「とにかく面白くて優れた」短編だけを詰め込んでいること。新鋭からベテランまでキャリアに関係なく、面白いミステリー小説が集まっています。
アンソロジーの醍醐味のひとつが、お気に入りの作家さん目当てで買ったけれど、偶然好みの作品にも遭遇できるところ。既読作品が含まれていても、他の作品と一緒に読むことで新たな発見ができるかもしれません。
芦沢央、阿津川辰海、木元哉多。城平京、辻堂ゆめ、凪良ゆう
出版社(レーベル):講談社タイガ
ミステリにおける“日常の謎”というジャンルを“非日常の謎”と置き換え、日々の生活の狭間に突如訪れる、刹那の非日常で生まれる謎をテーマとした6人の作家によるアンソロジー。
ほっこり系からちょっぴり不気味系、感動系にイヤミスまで。それぞれの作家の色を強めに感じられます。非日常の謎をキーワードにしているので、本全体に“不思議”な雰囲気が漂っているような印象も。
若林踏、赤川次郎、小池真理子、新津きよみ、松本清張、宮部みゆき、矢樹純(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫
様々な家族の歪みを描くミステリアンソロジー。ゾワッとする怖さが漂う一冊。長編だと読破するのにカロリーが必要そうな作品群ですが、短編のアンソロジーだからサクサク読める気も。年代の幅も広いので、さまざまな時代の“家族の闇”が味わえます。
読後に湧き上がるなんとも言えない不気味な感覚は、ちょっと味わったことがないかも…と思えど、ページを捲る手が止まらないのはストーリーにハマっている証拠かもしれません。
法月綸太郎、山口雅也、有栖川有栖、加納朋子、西澤保彦、恩田陸、倉知淳、若竹七海、近藤史恵、柴田よしき(著)
出版社(レーベル):祥伝社
不条理な事件をテーマに描いた10編のミステリーを収録。10人の作家が1990年代に描いた10作品の中には、読後すぐに読み直したくなるほどクセになるものも。不条理というだけあって、なんとも言えない結末を迎える作品もあり。1990年代という時代背景もあり、作品によっては古さを感じることも。しかしそれも味! 1990年代を存分に堪能できます。再販時の帯にあった「復刊リクエストNo.1」のフレーズも納得の一冊です。
初野晴、曽根圭介、一穂ミチ、綾辻行人、矢樹純、鮎川哲也(著)
佳多山大地(編)
出版社(レーベル):朝日新聞出版(朝日文庫)
ミステリーの名手6人が紡ぐ変幻自在なトリックに挑むアンソロジー。トリックを解明できた! と思いきや、すっかり騙されることも。でもその騙される感じが楽しく感じられるのも本作の魅力。巧妙な仕掛けに唸りながら「騙されないぞ!」と構えていても、まるっきり違う結末を見せつけられ、まさに様々な「大逆転」を体験できます。読み応えもたっぷり。鮎川哲也の犯人当てミステリの古典的名作『達也が嗤う』はミステリ好きなら一度は読んでおきたい作品です。
阿津川辰海、伊兼源太郎、大門剛明、丸山正樹、横山秀夫(著)
西上心太(編)
出版社(レーベル):朝日新聞出版(朝日文庫)
法は守るためにあるのか、人のためにあるのか。法廷で繰り広げられる駆け引き、証言から導き出される新たな事実が、やがて隠された真相を暴き出す――。
シリーズものも含めた短編もありですが、もっと読みたい! という気持ちが芽生えたなら、関連作が読める楽しみも。アンソロジーでは既読の作品が収録されている場合もありますが、面白い作品は何度読んでも面白い! と再確認できるパターンも。他の作家さんの作品と並ぶことで新鮮味を感じることもあるので、「知ってるかも」「読んだことあるかも」と気づいても読み進めることをおすすめします!
浅田次郎、綾辻行人、有栖川有栖、岡崎琢磨、門井慶喜、北森鴻、連城三紀彦(著)
関根亨(編)
出版社(レーベル):朝日新聞出版(朝日文庫)
古都には、謎が似合う。7人の名手による、京都が舞台となった色とりどりの短編ミステリーはあやしき京小路へと読者を誘います。
少し前の京都らしさをしっかり感じられる作品群ですが、京都の長い歴史を考えれば、これもごく最近の話なのかなとも感じたり…。シリーズものからの短編も多く入っていますが、シリーズ未読でも楽しめるものばかり。改めて京都という場所は“謎”や“ミステリー”が似合うと実感するはず!
青柳碧人、大山誠一郎、恩田陸、貴志祐介、中山七里、東川篤哉、麻耶雄嵩、若竹七海(著)
千街晶之(編)
出版社(レーベル):朝日新聞出版(朝日文庫)
海の中の城で起きた殺人事件、雪に残った足跡が作り出した密室、入り江という閉ざされた空間――。普遍的に人々を魅了し続ける密室という名の荘厳な非日常空間、緻密に構築されたトリックに挑む!
密室好きにおすすめの一冊。中には密室ものへのアンチテーゼとも言える作品も。作家によって密室の捉え方もいろいろとしみじみ。中山七里の『要介護探偵の冒険』はシリーズものからのスピンオフ。青柳碧人の『密室龍宮城』はやるせなさを感じるラストがクセになるかも。
徳田秋聲、石川啄木、林芙美子、田山花袋、室生犀星、宇野浩二、堀辰雄、中島敦、萩原朔太郎(著)
山前譲(編)
出版社(レーベル):河出書房新社
日本文学史に名を残す文豪が書いた「変な旅」を集めたアンソロジー。旅には不思議がつきもの、ミステリー感漂う異色の9篇を収録しています。
文豪、書影、ミステリ、旅。好きなキーワードが並び、惹かれて手に取ってみた一冊。ミステリーのように感じない作品もなきにしもあらずですが、ちょっと変わったミステリーを欲しているなら、試して見るのもよいかも。読むだけでタイトルにもある“妙”が感じられるような気がする、ちょっと変わったテイストのアンソロジーです。この不思議な感覚もミステリーって感じがして悪くないかも?!
海堂尊、中山七里、乾緑郎、安生正(著)
出版社(レーベル):宝島社
『このミステリーがすごい!』大賞受賞作家競演のアンソロジーにはバラエティに富んだ4つのミステリー作品が収録されています。
4つの違う物語ですが、それぞれの短編の間に次の作品へと繋がる1ページが入ることにより、連続した1つの物語のように感じられます。ちょっと実験的な作品という印象もあって新鮮。短編を読み終えた後には長編で読みたくなるのはさすが『このミス』大賞受賞作家陣です。
有栖川有栖、宮部みゆき、篠田真由美、柄刀一、山口雅也、北原尚彦(著)
出版社(レーベル):河出書房新社
『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』をテーマに現代ミステリーの名手6人が紡いだ事件の数々…アリス愛に溢れた書影も魅力的な傑作短篇集です。
おかしなこと、不条理なことに溢れた物語たちで不思議な気分が味わえます。読了後には『不思議の国のアリス』『鏡の国のアリス』を読み直したくなります。アリスと聞くとファンタジーという言葉が浮かびそうですが、このアンソロジーには哲学強めな作品もあり。不思議な読書体験をしたい方にもおすすめです。
陳浩基、知念実希人、陸秋槎、林千早、石黒順子、小野家由佳、島田荘司(著)
島田荘司(選)
稲村文吾(訳)
出版社(レーベル):講談社
日本×中国の作家陣のミステリーを集めたアンソロジー。100ページほどの中編もありで読み応えもあり。選者は島田荘司で書き下ろし作品も収録されています。SFやファンタジー色の濃い作品もありで、バラエティ豊かなミステリー作品が味わえます。島田荘司による「前書き」も含めて楽しみたい一冊。
綾辻行人、歌野晶午、法月綸太郎、有栖川有栖、我孫子武丸、山口雅也、麻耶雄嵩(著)
出版社(レーベル):講談社文庫
全編書き下ろしのミステリーアンソロジー。名探偵という言葉に期待は高まりますが、中には名探偵どころか、探偵とも呼べるほどではない…と感じなくもない探偵風も登場しますが、アンソロジーならそれもありかも。お気に入りを見つけるのも楽しいですが、そこまでハマらないかもと自分には合わないテイストが見つけられるのもアンソロジーならでは?! ラストに収録された綾辻行人の『仮題・ぬえの密室』をどう楽しむかで、このアンソロジーへの感想が変わるかも。
碧野圭、太田忠司、近藤史恵、斎藤千輪、新津きよみ、西村健(著)
山前譲(編)
監修:日本推理作家協会
出版社(レーベル):双葉社
極上の謎解きに加え、趣向を凝らした料理の描写も楽しむことが出来る、人気作家の短編作品を収めたミステリアンソロジー。おいしさが溢れ出している書影にも惹かれます。
食×ミステリーの相性の良さを再認識できる一冊。出版社の垣根を超えて既刊から収録しているのもアンソロジーの魅力のひとつ。食べてみたくなる料理、行ってみたくなるお店も出てくるので、ミステリ-目線以外でも楽しめます。
宮部みゆき、辻村深月、宇佐美まこと、篠田節子、王谷晶、降田天、乃南アサ(著)
細谷正充(編)
出版社(レーベル):PHP文芸文庫
女性ミステリー作家による、“イヤミス”短編を集めたアンソロジー。見たくないと思いつつ、最後まで読まずにはいられない!
書影に散りばめられた文字たちからも“イヤ~”な感じが漂います。イヤミスを読むたびに思うのは「本の中だけであって欲しい」ということ。自分の周りにこんな人がいたら…と想像するとゾッとせずにはいられない、なんとも言えない後味ですが、短編らしく適度なイヤ度な点にちょっと救われる気がします。
モーム、フォークナー 他(著) 深町眞理子 他(訳)
小森収(編)
出版社(レーベル):東京創元社
創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たなる一大アンソロジー。およそ200年にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作傑作を、書評家の小森収が選出し全6巻に集成しています。
すべて新訳で収録され、編者による150ページを超えるちょっと長めな評論も収録。文豪から短編の名手、新聞・雑誌で活躍した俊才による珠玉の短編集は、クラシカルなミステリーの世界に浸りたい方におすすめです。
坂木司、友井羊、畠中恵、柚木麻子、若竹七海(署)
山前譲(編)
監修:日本推理作家協会
出版社(レーベル):双葉社
濃厚なチョコレート、あたたかなスコーン、とろけるようなプリン…おいしいスイーツには謎解きがついてくる! デパ地下の和菓子店に訪れるお客さんの謎めいた行動の理由、家庭科準備室で消えたチョコレートの行方、オフィスで饗されるアフタヌーンティーに隠された秘密など、5人の人気作家による、スイーツにまつわる物語を詰め合わせたミステリーアンソロジー。
スイーツの甘さも相まって、ほのぼのできるミステリー。明治の頃の物語、友井羊の『チョコレイト甘し』は他の呪録作とはちょっと違う雰囲気が漂ってよき味わいが楽しめます。
横溝正史(編)
出版社(レーベル):河出書房新社
ミステリー界の大家・横溝正史が選んだ、日本の名探偵が活躍する短篇9篇を収めたミステリー入門にも最適のアンソロジーの戦前篇。
続く「戦後篇」とあわせてミステリー好きなら読んでおきたいシリーズ。書影にも惹かれますが、探偵イラスト&人物紹介付きなのもうれしい。ちなみにこのアンソロジーは、横溝正史が探偵を選出し、編集が作品をセレクトしているそう。今の感覚で読むと「?」となる展開やトリックがあることも否めませんが、そんな感覚は一旦取り除いて、思いっきりこの時代の世界観に浸って、新鮮な気持ちで楽しみたい!
好みの作家の作品ばかりについつい手が伸びてしまう、本を一冊読み切れない、極上のミステリー小説を堪能したいけれど本を読む時間がゆっくり取れないなど、様々なミステリー好きの欲を満たしてくれるアンソロジー。豪華なラインナップが楽しめるのもアンソロジーならではの醍醐味。新しい素敵なミステリー小説に出会うために、気軽に手に取ってみてはいかがでしょうか。
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