2024/10/17

読書の秋に読みたい&秋の夜長に観たいミステリー作品おすすめ8選<小説&ドラマ>【早川書房×東京創元社×扶桑社×ミステリーチャンネル】

「特集もっと楽しむミステリー!」第7弾のテーマは、秋の夜長に楽しみたいミステリー作品。涼しくなってくるとどこからともなく囁かれ始めるのが「読書の秋」ですね。

さて、この「読書の秋」という言葉の由来の一つと言われているのが、8世紀ごろ、唐の時代の中国で活躍した詩人「韓愈」が読んだ「符読書城南」詩です。その中の一節に「時秋積雨霽、新涼入郊墟。燈火稍可親、簡編可卷舒」という文章が。「涼しい秋となり、灯りも身近に感じられるようになったので、書物を紐解き読書を楽しむことができる」という意味になります。日本では、戦後の傷がいまだ癒えない1947年に「読書週間」が始まり、秋になったら本を手に取る…というイメージが定着していきました。

冬に向かって、少しずつ日照時間が短くなっていく…つまり「夜が長くなっていく」から「秋の夜長」と呼ばれますが、今回は、早川書房・東京創元社・扶桑社よりおすすめの、読書の秋に読みたい推理小説と、ミステリーチャンネルイチオシの秋の夜長に楽しみたいミステリードラマをご紹介します!

【秋の夜長に観たいミステリードラマおすすめ2選】

ミステリーチャンネルおすすめ①『シェトランド』


© ITV Studios Limited MMXXIII

『ヴェラ~信念の女警部』『刑事マシュー・ヴェン 哀惜のうなり』の原作者としても知られるアン・クリーヴスが英国推理作家協会主催のCWA賞を受賞したシリーズとして日本でも翻訳本が出版されている大人気シリーズです。グレートブリテン島の北東部に位置するシェトランド諸島を舞台に、ジミー・ペレス警部が、部下のトッシュ、サンディとともに島で起こる凶悪事件の解決に奔走する姿を描いています。

岸壁に荒波が打ち寄せる荒涼とした土地が舞台であり、思わず服の前を閉じたくなるような寒々しさが画面越しからも伝わってくる作品です。夏が遠ざかり、夜が長くなるこの季節だからこそ作品の世界観に浸れそうですね。

シーズン7からは、新たにルース・コールダー警部がシェトランド島に赴任。シェトランド島の出身ではあるものの、長い間島を離れていたというペレス警部との共通点も多い新たな主人公を迎えての新シーズンとなります。島民の誰もが顔見知りという、小さなコミュニティ。狭くも深い人間関係は人々の連帯感を強めるメリットも大きいですが、人々の心に住まう感情は良くも悪くも根深くなるものです。緻密な感情表現、複雑に入り組んだ人間模様、そして犯行を成功たらしめる大胆なトリック…原作小説の魅力を余すことなく映像化させたドラマです。

ミステリーチャンネルおすすめ②『警視グレイス』


© ITV Studios Ltd 2024

イギリス出身の推理作家ピーター・ジェイムズ原作の「ロイ・グレイス」シリーズを、『主任警部モース』『オックスフォードミステリー ルイス警部』の脚本家ラッセル・ルイスが脚色した正統派英国ミステリーです。最愛の妻の失踪に心を苛まれるグレイス警視が、イングランド南部の美しい海辺の町ブライトンで発生する事件を、相棒のブランソン刑事とともに解決していきます。

『ホワイト・ドラゴン』などのヒット作で知られるジョン・シムが主演を務める本作も待望のシーズン4がいよいよ日本上陸です。妻の失踪によって深い心の傷を負ったグレイス警視でしたが、部下たちの温かいサポートもあり、仕事へ打ち込むことでなんとか前に進もうとしてきました。少しずつ距離を縮めてきたクレオとも恋仲となり、ついに新たな未来に目を向けるグレイス警視。しかし、行方不明の妻の謎はまるで霧のようにグレイスから離れることはなく、新たなシーズンでもこの謎は彼を悩ませることとなります。

陰惨な凶悪事件を解決に導くグレイス警視たちの奮闘も見どころですが、シリーズを通して明かされることのなかった謎がついに明らかになるのかどうか、という点も必見の新シーズンとなっています。とにかく緻密なプロットで視聴者を翻弄するストーリーは、まさに秋の夜長にじっくりと謎解きに浸りたい方にオススメです。

【読書の秋に読みたいミステリー小説おすすめ6選】

早川書房おすすめ①『ハロウィーン・パーティ〔新訳版〕』


著者:アガサ・クリスティー 翻訳:山本やよい
出版社(文庫名):早川書房【アガサ・クリスティー文庫】

推理作家のミセス・オリヴァーが参加したハロウィーン・パーティでひとりの少女が殺された。少女が殺人現場を見たことがあると自慢していたことから口封じのための犯行かと思われたが、彼女は虚言壁の持ち主。殺人の話を真に受けるものは誰もいなかった。ただ一人ポアロをのぞいては。クリスティーらしさが詰まった傑作が新訳で登場!

<推薦文>
映画化もされた傑作が新訳で登場です。ハロウィーンの季節のいま、ぴったりのミステリです。秋の夜長にじっくりと読んで、ポアロと推理対決をしてみるのはいかがでしょう? 映画を観たという方も、改めて本作を小説で読んでみると面白いかも……?
(文:早川書房  井戸本 幹也)

早川書房おすすめ②『ターングラス 鏡映しの殺人』


著者:ガレス・ルービン 翻訳:越前敏弥
出版社(文庫名):早川書房

1881年、エセックス。医師シメオンは、叔父オリヴァーが住む島唯一の建物ターングラス館を訪れ、奇妙な事件に遭遇する。謎を解き明かす鍵は、1939年のカリフォルニアに住む一家の物語が書かれた小説の中にあるというが……。

1939年、カリフォルニア。作家のオリヴァーが、ターングラス館の執筆小屋で死体となって発見された。自殺だと結論付けられたが、彼の友人ケンはその死に疑問を抱く。ケンはオリヴァーが書いた、1881年のエセックスを舞台にした小説を読み始め……。

<推薦文>
表から読むエセックス篇では、1881年のエセックスにあるターングラス館を舞台にした物語が、裏から読むカリフォルニア篇では、1939年のカリフォルニアのターングラス館で起こった事件をめぐる物語が、それぞれ展開されます。表から読む物語と裏から読む物語が、互いの伏線となり、互いの解決篇となる未だかつてない傑作ミステリをぜひお読みください!
(文:早川書房  井戸本 幹也)

東京創元社おすすめ①『忘れられた花園(上下)』


著者:ケイト・モートン 翻訳:青木純子
出版社(文庫名):創元推理文庫

1913年オーストラリアの港にたったひとり取り残されていた少女。名前もわからない少女をある夫婦がネルと名付けて育て上げる。そして2005年、祖母ネルを看取った孫娘カサンドラは、祖母が英国、コーンウォールにコテージを遺してくれたという思いも寄らぬ事実を知らされる。なぜそのコテージはカサンドラに遺されたのか? ネルとはいったい誰だったのか? 茨の迷路の先に封印された花園のあるコテージに隠された秘密とは?

<推薦文>
モートンが書くのはどれも壮大なスケールを有する作品ばかりですが、この『忘れられた花園』はひとりの少女の出生の謎にまつわる、100年近くに及ぶ物語を彩る道具立て……秘密の庭園、お伽噺の本、古い英国屋敷といった事物がたいへん魅力的。秋の夜長に、どっぷり読書に没頭するにはもってこいの一作です。
(文:東京創元社 宮澤 正之)

東京創元社おすすめ②『裏切り (上下)』


著者:シャルロッテ・リンク 翻訳:浅井晶子
出版社(文庫名):創元推理文庫

スコットランド・ヤードの女性刑事ケイト・リンヴィルが休暇を取り、生家のあるヨークシャーに戻ってきたのは、父親のリチャードが何者かに自宅で惨殺されたためだった。伝説的な名警部だったリチャードは、刑務所送りにした人間に復讐されたというのが地元警察の読みだった。敬愛してやまない父は、なぜ殺されなければならなかったのか? 驚愕の展開が連続する、ドイツ本国で160万部超の大ベストセラーとなった傑作ミステリ!

<推薦文>
ドイツの国民的作家リンク(訳者の浅井先生いわく、日本でたとえるなら宮部みゆきのような存在だとか)が満を持して贈る女性刑事ものシリーズ。とにかく先を読みたくなる力がすごい作品です。この『裏切り』が第1作で、第2作『誘拐犯』上下巻も好評発売中。12月にはシリーズ第3作の翻訳が出ますので、ぜひこの機会に!
(文:東京創元社 宮澤 正之)

扶桑社おすすめ①『ゴスペルシンガー』


著者:ハリー・クルーズ 翻訳:齋藤浩太
出版社(文庫名):扶桑社ミステリー

ジョージア州エニグマは、行き止まりの町だ。牢には黒人の大男ウィラリーが囚われ、葬儀屋には彼が惨殺した女の遺体が安置されている。そんな町の誰もが、ゴスペルシンガーの帰還を待ち望んでいた。町出身の輝ける成功者。美しい容姿と天使の歌声を持つカリスマ。奇跡を行う者……。その彼が町に帰って来る。黒いキャデラックに乗って。アメリカ南部を舞台に、人の愚かしさと世界の混沌を、魂と臓腑をえぐる筆致で描き出す衝撃の一書!

<推薦文>
最近の扶桑社ミステリーで読み応え十分といえば、やはりこれでしょう。今年『プリシラ』という映画が公開されて、プレスリーの若いころが描かれましたが、まさに本作の主人公と出自や境遇がそっくりなんですね。そのプレスリーが自らの主演で映画化を熱望したというのがこの本。さあ、あなたもディープ・サウスの地獄にようこそ。
(文:扶桑社 吉田 淳)

扶桑社おすすめ②『ヴァイパーズ・ドリーム』


著者:ジェイク・ラマー 翻訳:加賀山卓朗
出版社(文庫名):扶桑社ミステリー

1961年、ニューヨーク。ジャズ全盛のハーレムで最も恐れられる麻薬密売人クライドはその日、自身が犯した殺人を後悔していた。殺しは今度で3度目だが、悔いたのは初めてだった。自責の念に沈むさなか、ジャズ界の庇護者パノニカから「3つの願い」を訊かれ、因縁を探る彼の思索は遠い過去へと跳ぶ。36年にトランぺッターを志し田舎からひとり大都会に出てきてからの日々、そして愛する歌姫に出会ってからの日々へと……。

<推薦文>
英国推理作家協会賞 最優秀歴史ミステリー賞受賞!
こちら、10月末に発売の最新刊となります。うちでは珍しいCWA受賞作。裏社会に生きる男と、美しき歌姫。ジャズのビートで爆ぜる愛と暴力の調べ。帯には『BLUE GIANT』原作者・NUMBER8氏の推薦!読む者を熱く震えさせるジャズ・ノワールの登場です。
(文:扶桑社 吉田 淳)

最後に

「特集もっと楽しむミステリー!」第7弾である今回は、秋の夜長に楽しみたいミステリー作品を8作品ご紹介しました!冬に向けて少しずつ夜が長くなってくるこの季節は、ドラマや小説でじっくりと謎解きに取り組んでみてはいかがでしょうか?ぜひ、過ごしやすい秋の余暇のお供に、お好きなミステリー作品を見つけてみてください。

(文:うりまる)

特集「もっと楽しむミステリー!」次回は11月公開予定ですのでどうぞお楽しみに!

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うりまる
2017年ごろから海外ドラマ・映画について執筆中。ミステリー作品ならなんでも好きですが、特にまったりとした(COZYな)ミステリーが好きです。