クローズドサークルとは「絶海の孤島」「雪山の山荘」「田舎の館(屋敷)」など、外界との交通や連絡手段を絶たれた閉鎖空間で起こる事件や謎を題材にしています。「この中に犯人がいる」そんな空間に一緒に閉じ込められるのを想像しただけでハラハラドキドキ。外の世界とは連絡が取れない=助けが来ない=自分たちで解決しなければいけないということで、閉じ込められた人物たちによる心理戦も展開していきます。クローズドサークルのミステリー小説のお手本的存在がアガサ・クリスティーの「そして誰もいなくなった」です。もはやジャンルの代名詞ともなっていて、今となっては古典的ですが、何度読んでもミステリーの手法の斬新さを堪能できます。多くのオマージュ作品を生み出しているタイトルだけに、最初に読んでおきたいクローズドサークル小説です。
出版社:早川書房
著者名:宮園ありあ
舞台は18世紀のフランス、ルイ16世が国を治めていた時代。ルイ16世のいとこで王妃マリー・アントワネットの元総女官長マリー=アメリーが、ヴェルサイユ宮殿の施錠された刺殺体に遭遇。殺されていたのはパリ・オペラ座の演出を務めるブリュネル。その傍には陸軍大尉ボーフラッシュが意識を失って倒れていて…。刺殺体に遭遇した知性あふれる公妃&刺殺体の傍に倒れていたカタブツ陸軍大尉のコンビが現場に残された血の伝言と、遺体の手に握られた聖書の謎に挑みます。どうせ閉じ込められるなら、美しい宮殿がいい!表紙に惹かれて読んでみたら…ドロドロ血生臭い物語が展開していきます。第10回アガサ・クリスティー賞優秀賞受賞作です。
※2024年1月にハヤカワ文庫JAにて文庫化予定
出版社:実業之日本社
著者名:知念実希人
雪深き森で、燦然と輝く、硝子の塔。地上11階、地下1階、唯一無二の美しく巨大な尖塔へミステリーを愛する大富豪の呼びかけで招かれたのは刑事、霊能力者、小説家、料理人など、一癖も二癖もあるゲストたち。そして、この館で次々と惨劇が起こる。散りばめられた伏線、読者への挑戦状、圧倒的リーダビリティ、そして驚愕のラスト。作中で触れられるミステリーも気になり、小説を読みながら読みたい別の本が増えていきます。“招かれる”という設定に閉じ込められそうな予感がして、冒頭からゾクゾクします!
出版社:東京創元社
著者名:方丈貴恵
VRミステリーゲームの試遊会が探偵とその人質役の命をかけた殺戮ゲームへと一転。生き延びるにはVR空間と現実世界の両方で起きる殺人事件を解き明かすしかないという事態に。VR空間と会場のメガロドン荘、二重のクローズドサークルで繰り広げられるデスゲーム。脳をフル回転して挑みたい謎解きです。以前ならVRはゲームや映画の中での話という印象が強かったですが、近年の技術の進歩によりバーチャルでもリアリティを感じるのがポイント。VRならではのトリックも秀逸です!
出版社:講談社
著者名:東野圭吾
早春の乗鞍高原のペンションに集まったのは、オーディションに合格した俳優志願の男女7名。豪雪に襲われ孤立した山荘での殺人劇。その舞台稽古が始まると1人また1人と現実に仲間が消えていく。彼らの間に疑惑が生まれ始めて…。果たしてこれは本当に芝居なのか。殺人劇の恐怖の結末とはーー。王道のクローズドサークル小説ですが、登場人物が俳優志望ということで、演技なのか事実なのかと疑う謎が1段階加わる感じにワクワクします。
出版社:早川書房
著者名:トム・ミード
翻訳:中山宥
舞台は1936年、ロンドン。高名な心理学者リーズ博士が、自宅の書斎で何者かに殺されているのが発見された現場は密室状態。凶器も見つからず、死の直前に博士を訪れた謎の男の正体も分からない。この不可能犯罪に、元奇術師の探偵ジョセフ・スペクターが挑みます。15章からエピローグが袋とじとなる、読者への挑戦状付きの本格ミステリー。1936年という時代だからこそ成り立つ物語&トリックですが、ちゃんとその時代にも閉じ込められる読みやすさで世界観へと誘ってくれます。
出版社:文藝春秋
著者名:米澤穂信
「ある人文科学的実験の被験者」になるだけで時給十一万二千円がもらえるという破格の仕事に応募した十二人の男女。とある密室空間に閉じ込められた彼らは、実験の内容を知り驚愕。それはより多くの報酬を巡って参加者同士が殺し合う犯人当てゲームで…。閉じ込められて監視されて、さらに怪しげなルールまで加わり、凶器まで与えられ、恐怖は増すばかり。一人、一人と殺されていくというクローズドサークルらしい展開と、実験期間の7日という制限時間がハラハラドキドキを掻き立てます。
出版社:講談社
著者名:森博嗣
孤島のハイテク研究所で、少女時代から完全に隔離された生活を送る天才工学博士・真賀田四季。彼女の部屋からウエディング・ドレスをまとい両手両足を切断された死体が現れた。偶然、島を訪れていたN大助教授・犀川創平と女子学生・西之園萌絵が、この不可思議な密室殺人に挑みます。今となっては古さも感じるテクノロジーですが、物語には古さを全く感じません。天才の思考とは…考えながら楽しめる作品。ドラマにもアニメにも漫画にもなった人気原作です。
出版社:講談社
著者名:阿津川辰海
高校の合宿をぬけ出し、隠棲した文豪の館を訪れた田所と葛城。館で仲良くなった少女が死体で発見され、葛城は真相を推理しようとするが、館には山火事が迫る。タイムリミットは35時間。生存と真実、選ぶべきはどっちだ!!密室ものにタイムリミットが乗ってくるだけでスリル度がアップします。ただ、本作の登場人物はちょっと感情が薄め。何かを意味する冷静さなのかといろいろと疑いながら読み進めてしまいます。若さゆえ、独りよがりの動機、正義も退く時の怖さを掻き立てます。
出版社:東京創元社
著者名:有栖川有栖
四国山中に孤立する芸術家の村へ行ったまま戻らないマリア。英都大学推理研の一行は大雨のなか村への潜入を図るが、ほどなく橋が濁流に呑まれて交通が途絶。川の両側に分断された江神・マリアと、望月・織田・アリスの双方が殺人事件に巻き込まれ、各々の真相究明が始まります。読者への挑戦が3つも添えられた、犯人当ての限界に挑めるミステリーです。よく知られたトリックにひと工夫。たったそれだけで!と感激する瞬間に何度も味わえます。
出版社:講談社
著者名:辻村深月
雪降るある日、いつも通りに登校したはずの学校に閉じ込められた8人の高校生。開かない扉、無人の教室、5時53分で止まった時計。凍りつく校舎の中、2ヵ月前の学園祭の最中に死んだ同級生のことを思い出す。でもその顔と名前がわからない。どうして忘れてしまったんだろうーー。ホラーテイストも感じるちょっと不気味な終わり方も、思い出せそうで思い出せないもどかしさと高校時代特有の閉塞感へのゾワゾワ感。この閉塞感こそがクローズドサークルの醍醐味かも。学校が楽しいか楽しくないかで世界の見え方って変わるんだなと、高校生にとっての学校という存在を考えさせられます。
出版社:東京創元社
著者名:東川篤哉
天才建築家・十文字和臣の突然の死から半年が過ぎ、未亡人の意向により死の舞台となった異形の別荘に再び事件関係者が集められたとき、新たに連続殺人が勃発。嵐が警察の到着を阻むなか、館に滞在していた女探偵と若手刑事は敢然と謎に立ち向かいます。瀬戸内の孤島に屹立する、銀色の館で起きた殺人劇をコミカルに描くミステリー。もちろん本格ミステリーとしてもしっかり楽しめます。大掛かりなトリックのスケールにも感動。舞台となる別荘の形に注目!
出版社:講談社
著者名:夕木春央
地震によって山奥の地下建築に閉じ込められた柊一たち。水が流入しはじめ、地下建築の水没までおよそ1週間。地下建築から脱出するためには、1人のうち誰か1人を犠牲にしなければならない。そんななか、殺人事件が起こり…。倫理観に訴えるクローズドサークルミステリー。方舟平面図を手にした極限状態での謎解きが楽しいだけに、冷静に状況判断を進めてきた犯人の真相が明かされた時の衝撃はかなりのもの。
出版社:宝島社
レーベル:宝島社文庫
著者名:日部星花
扉も窓も開かず、破ることすらできない。携帯電話は圏外で、固定電話もなぜか繋がらない。事件現場に立ち入ると、その空間を強制的に“クローズドサークル”にしてしまう呪いを持った高校生・袋小路鍵人。解除するには、事件の真相を究明しなければならなくて…。校内で呪いが発動するたび、行動をともにする美少女・時任さんの推理力を頼りに、閉鎖状況から脱出すべく事件解決を目指す学園ミステリー。クローズドサークルで起きている事件、ではなく事件が起きたらクローズドサークルになるという逆転の発想にグッと心を掴まれます!
出版社:宝島社
レーベル:宝島社文庫
著者名:朝永理人
自室で毒入りコーヒーを飲んで自殺したとされている箕輪家長男の要。「遺書」と書かれた便箋こそ見つかったものの、その中身は白紙。十二年後、十三回忌に家族が集まった嵐の夜、今度は父親の征一が死亡。傍らには毒入りと思しきコーヒーと白紙の遺書という要のときと同じ状況で…。道路が冠水して医者や警察も来られないクローズドサークル下で、過去と現在の事件が重なり合う!サクサク読めるけれど、誰と誰の会話なのか、誰の視点で見ているのかを考えながら読み進めないと、気づいた時にはもうすでに謎の渦に導かれてしまっている…となってしまうかも。
出版社:東京創元社
著者名:エリック・キース
翻訳:森沢くみ子
探偵学校の卒業生のもとに、校長の別荘での同窓会の案内状が届いた。吊橋でのみ外界とつながる会場にたどり着いた彼らが発見したのは、意外な人物の死体。さらに吊橋が爆破され孤立した彼らを、殺人予告の手紙が待ち受けていて…。密室などの不可能状況で殺されていく卒業生たち、錯綜する過去と現在の事件の秘密とは。著者はゲーム会社でパズルゲームのデザイナーをしていたこともあり、ゲームシナリオのような感覚で読み進められます。
出版社:早川書房
著者名:アガサ・クリスティー
翻訳:山本やよい
小柄なベルギー人が神業ともいうべき推理を見せる「名探偵ポアロ」シリーズの代表作。オリエント急行に乗ったポアロはアメリカの富豪が殺される事件に遭遇し、捜査を開始。出身国も職業もさまざまな乗客から聴取した結果、それぞれのアリバイが成立するのですが…。何度も読み、犯人もラストも知っている状態でも先の展開にハラハラドキドキ。ポアロの冴えすぎな推理が心地よい。謎解きが展開する最終章だけでも何度も読みたくなる傑作中の傑作です。
出版社:早川書房
著者名:ギルバート・アデア
翻訳:松本依子
1935年、英国ダートムア。吹雪のため、人々はロジャー・フォークス大佐の邸に閉じ込められた。やがてゴシップ記者がその場にいた全員の秘密を握っていることを示唆し、彼への憎しみが募るなか、悲劇が起きて…。アガサ・クリスティーへのオマージュを込めた作品だけあって、随所にクリスティーを感じます。田舎町で、雪で、クリスマスで、密室。ポイントをおさえすぎた設定で新しさは感じないかもしれませんが、これぞ海外古典ミステリー!と納得しながら楽しめる作品です。
出版社:早川書房
著者名:井上悠宇
自殺、他殺、事故死など、寿命以外の“死”が見える志緒。そんな彼女を悲しませぬよう、僕は死が予期される秀桜高校文芸部の卒業生4人を、密室状態の孤島に閉じ込めて救う!ファンタジーっぽさも感じるSFテイストありの日常ミステリーなので読みやすくておすすめ。単なるクローズドサークルではなく、特定の人物に見える予兆を回避するために“逆”クローズドサークルをする設定がおもしろい。誰も死なないミステリーであれば、犯人でさえも救われる?という期待を持ちながら読み進められます。
出版社:宝島社
著者名:小西マサテル
七十一歳となった元小学校校長の祖父は現在、幻視や記憶障害といった症状の現れるレビー小体型認知症を患い、介護を受けながら暮らしていた。しかし、小学校教師である孫娘の楓が、身の回りで生じた謎について話して聞かせると、祖父の知性は生き生きと働きを取り戻す。孫娘の持ち込む様々な「謎」に挑む老人。日々の出来事の果てにある真相とは。認知症の祖父が安楽椅子探偵(事件現場に出向くことなく、刑事や関係者に話を聞くだけで事件を解決する探偵)となり、不可能犯罪に対する名推理を披露。初心者向けの読みやすさとミステリー好きの古典作品へのオマージュのバランスもGOOD!
出版社:実業之日本社
著者名:西村健
路線バスで各地を巡りながら、人と出会い、日常の謎を追う。謎を解き明かすのは、元刑事・炭野の妻・まふる夫人。最後に彼女が挑んだのが、フィッシング詐欺常習犯の行方で…。路線バスを駆使して逃亡する犯人は、いったいどこへ向かうのか。1章ごとに主役の違う8章の短編集でサクサク読めます。バスという密室空間にいながらも、街並みや歴史を楽しみながら旅をするように楽しめるほのぼの系ミステリー。土地勘があるとより物語に没入でき、面白みが増します。
謎解きの要素が強いクローズドサークルのミステリー小説は、真相解明時の爽快感もたまりません。クローズドサークルのミステリー小説は定番から新感覚まで傑作揃い。一度ハマったら抜け出せない。怖いけれど入りたくなる。そんなクローズドサークルのミステリー小説の沼へと足を踏み入れてみてはいかがでしょうか。
ミステリーチャンネルでは、アガサ・クリスティー原作の大人気シリーズで、デビッド・スーシェ主演の「名探偵ポワロ」を放送しています。上でご紹介している「オリエント急行の殺人」は、シーズン12第4話(通算64話目)で放送!ぜひ映像化作品も併せて、ご覧ください。
【ミステリーチャンネル放送情報】
●名探偵ポワロ(全70話)
二カ国語版:12/25(月)朝6:00スタート~29(金)
★字幕版オンデマンド見逃し配信あり
ギネスも認めた史上最高のベストセラー作家、アガサ・クリスティー原作の大人気シリーズ!世界中のファンを魅了したデビッド・スーシェ主演作!
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世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」「SHERLOCK シャーロック」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!