隙間時間にも手に取りやすい短編小説。ミステリー小説なら、短時間でスパッと事件が解決し、爽快感も味わえます。仕掛けられたトリックを見破り、散りばめられた伏線を読み解こうと集中するあまり、頭も使うし、体力もいるので長編ではちょっと疲れてしまうことも。たっぷりと読書時間が取れないけれど、大好きなミステリー小説には常に触れていたい、サクッと読めるミステリー小説で謎解きの醍醐味を堪能したい、そんな方におすすめの海外の傑作短編ミステリー小説をご紹介します。
ミステリー小説初心者の場合、自分の好きな作家を知るために、まずは短編から挑戦してみるのがおすすめです。作家縛りで“傑作選”などとあれば、一冊でいくつもの名作を楽しむことができます。一編ごとに独立しているものもあれば、連作短編集のように一編でも楽しめる上に、物語がリンクし、ラストに真相が明らかになるタイプも。ミステリー小説好きなら、隙間時間にサクッと読んでさまざまな事件を解決し、ミステリー小説脳を鍛える練習にも。ちなみに、ミステリークイズのロングセラー『5分間ミステリー』シリーズ(カナダの元大学教授ケン・ウェバー著)も謎解き脳を鍛えるのにおすすめです!
ジェフリー・ディーヴァー(著)池田真紀子(訳)
出版社(レーベル):文春文庫
名探偵リンカーン・ライムに持ち込まれたプロの殺し屋による殺人。だが、現場には犯人の痕跡が何もない――。「犯人は現場に必ず微細な証拠を残す」という原理を裏切る難事件を描く「ロカールの原理」をはじめ、多彩などんでん返しで驚愕させる16の物語。
「騙される快感」に浸れる傑作短篇集で、「どんでん返し×16」というコピー通り、物語の数だけどんでん返しを味わえます。どんでん返しのパターンが被っていない、とにかく楽しませてくれる一冊です。
モーム、フォークナーほか(著)小森収(編)深町眞理子ほか(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
江戸川乱歩編『世界推理短編傑作集』刊行から五十余年。創元推理文庫が21世紀の世に問う、新たなる一大アンソロジー。三世紀、およそ二百年にわたる短編ミステリの歴史を彩る名作傑作を、書評家の小森収が選出、全6巻に集成。
第一巻となる本作には、モームやフォークナーなどの文豪、サキやビアスといった短編の名手、ウールリッチやコリアなど新聞・雑誌で活躍した俊才による珠玉の12編がすべて新訳で収録。編者によるボリュームたっぷりの評論も収められています。クラシカルなミステリーの雰囲気に浸りたい方におすすめ。
リチャード・ラング(著)吉野弘人(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
目撃者、看守、前科者、薬物中毒者、密入国者の親戚──。さまざまな形で犯罪に関わりを持ってしまった人々の孤独と希望を、美しく切なく真摯に描く。CWA賞最優秀短編賞受賞作を含む10編の傑作短編集。
登場人物たちの静かな叫び、恐怖感や悲壮感がじわじわと…気づけばずっしりとのしかかってくるような感覚に陥ります。リアルに感じる息苦しさや閉塞感のみならず、純文学のような文章の美しさも本書の魅力です。
アントニー・マン(著)玉木亨(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
二転三転するスター暗殺劇の意外な顛末を描いた英国推理作家協会短篇賞受賞作のほか、刑事の相棒に赤ん坊が採用され一緒に捜査を行う物語、買いものリストだけで成り立つ異色作やミステリ出版界の裏事情を語る一篇など多彩な12作を収めた傑作短篇集。
ちょっと変わった語り口や構成に不思議な世界観。ユーモアのある文章で読んでいて楽しくなる一冊です。買いものリストだけで構成された「買いもの」はアイデアの勝利!といった印象の一篇で、読み手の想像力を掻き立てます。
フレドリック・ブラウン(著)越前敏弥(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
奇抜な発想と予想外の結末が光る短編10作と、殺人で終身刑になった男の無実を証明しようと奮闘する刑事を描く名作中編「踊るサンドイッチ」を収録。『真っ白な嘘』に続く、推理短編の魅力たっぷりの『復讐の女神』改題新訳版。
ミステリーでありながら、ユーモアがありクスッと笑えます。心があたたかくなるようなラストが魅力の一篇もあれば、皮肉のこもった一篇もあり。話に無駄もなく、オチが秀逸なのも魅力で、小洒落た感があるところにも惹かれます。
O・ヘンリー(著)小鷹信光(訳)
出版社(レーベル):河出書房新社(河出文庫)
短篇小説、ショート・ショートの名手O・ヘンリーがミステリーの全ジャンルに挑戦!彼の全作品から犯罪をテーマにした作品を選んだユニークで愉快なアンソロジー。
短編小説の名手と呼ばれている筆者の300以上もある短編作品の中からミステリー要素の入った28篇を収録。ミステリー好きならロバート・L・フィッシュのシュロック・ホームズとも並び評されるシャーロック・ホームズのパロディ、シャムロック・ジョーンズシリーズの3作をぜひ。
※品切れ/重版未定。電子書籍のみの取り扱いとなることご了承ください。
アーサー・コナン・ドイル(著)北原尚彦(編)
出版社(レーベル):論創社
今なお読み継がれるシャーロック・ホームズ物語。アーサー・コナン・ドイルが生み出した偉大なる名探偵の事件簿より13編を厳選し、明治・大正時代の翻案・翻訳を原作の重複なく収録。
編集はシャーロック・ホームズ研究家の北原尚彦氏。明治から大正にかけてのホームズ翻訳をセレクトした一冊。日本で初めて翻訳された短編も収録されている点にも注目。言葉や言い回しが違っていることで、少々読み難さを感じるかもしれませんが、当時の背景、空気などを味わいながら堪能するのがおすすめです。
レオ・ブルース(著)小林晋(訳)
出版社(レーベル):扶桑社
世界初紹介の未発表草稿10編を含む本格の巨匠が遺した全短編を完全網羅。本格の醍醐味が凝縮された珠玉の短編全40編。図書館で発掘された未刊のタイプ原稿から直接邦訳した世界初紹介9編を含む11編と発見者による解説を含む「完全版」。
長くても30P程度、平均5~15Pという短めの作品が40編収録されている超短編集です。サクサク読めるものばかりですが、少々毒も感じられるのでイッキ読みよりも小分けにして読むのがおすすめ。別のシリーズに登場するキャラも出てくるので、レオ・ブルース作品ガイドブックのように使えるかも?!
ウィリアム・フォークナー(著)高橋正雄(訳)
出版社(レーベル):中公文庫
70編を超える作品を残している実は短編の名手であるウィリアム・フォークナーによる短編集。アメリカ南部にある架空の町ジェファソンを舞台にした短編8篇を収録しています。
表題作『エミリーに薔薇を』はアンソロジーなどにも取り上げられることも多い有名な古典ミステリーでフォークナーが雑誌に発表した最初の短編小説。読み進めていくとゾクゾクとした感覚が湧き上がり、どこか不安で居心地の悪さを感じながらも物語に引き込まれていきます。ラストに待ち受ける驚きは何度読んでも面白い!
ロバート・ロプレスティ(著)高山真由美(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
ミステリー作家のレオポルド・ロングシャンクス(通称シャンクス)が素人探偵になって数々の謎を解いていく前作の連作短篇集『日曜の午後はミステリ作家とお茶を』と違い、独立した短編だけを集めた連作じゃない短編集。
正統派推理短編、私立探偵小説、ヒストリカル、ブラックユーモアなど、テーマのバリエーションも豊富。作品ごとに「著者よりひとこと」と作品解説とあとがきが入り、それを読むことで納得度も増すような構成になっています。
イーデン・フィルポッツ(著)武藤祟恵(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
エラリー・クイーンや江戸川乱歩が認めた傑作など、巨匠の逸品6編を収める必読の短編集で、全収録作品新訳・初訳となっています。
ミステリーの仕掛けや内容には少々古さを感じますが、読みやすさ抜群の新訳版です。ミステリーとしての面白さはもちろん、風景描写、心理描写にも味わいがあり惹き込まれます。文学的な雰囲気を感じる古典ミステリーが好みという方には特におすすめです!
G・K・チェスタトン(著)南條竹則(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
塔から消えた宝石。毒殺された貴婦人。人を食らう怪樹。不可能犯罪と謎解きの魅力に溢れた作品を新訳で贈る本邦初訳の戯曲「魔術」ほか全5編を収めた日本オリジナル短編集。
戯曲以外の4編は短編のミステリー小説で、前編に恋愛エピソードが絡んでいます。詩的な雰囲気を楽しむような作品が多いのも本作の特徴。古典ミステリーはどの訳本を読むのかで印象が変わりがち。読みづらさを感じたことのある作品も新訳版が出たらトライしてみて損はなし。そんなことを改めて感じさせてくれる一冊です。
フレドリック・ブラウン(著)小森収(編)越前敏弥、高山真由美ほか(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
『短編ミステリの二百年』の編者が選りすぐり、巨匠の名作短編を前菜(オードブル)、メインディッシュ、デザート…とフルコース形式で贈る、本邦初訳作を含む全13編。
オーソドックス、奇妙、じわじわと面白さが押し寄せてくる系、ひねりのあるオチなど、様々な味のミステリーが収められた一冊です。短編集ですがフルコース仕立てなので、満足度もなかなかのもの。なのにどこか肩の力が抜けた感じが漂う短編集で、読みやすさは保証付き。
エドワード・D・ホック(著)木村二郎(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
ニック・ヴェルヴェットは当代きってのプロの泥棒。つねに依頼を受けて動く彼が盗むのは、価値のないもの、もしくは誰も盗もうとは思わないものだけ。報酬は一件につき二万ドル。そんな型破りな条件にもかかわらず、彼のもとには依頼が次々に舞い込んでくる。ターゲットはプールの水、おもちゃのネズミ、プロ野球チーム、使い古しのカレンダー等……それらをニックはどうやって盗む? そして依頼者はなぜ盗ませようとする?
短編の名手ホックが創造した唯一無二の怪盗ニック、その全仕事を発表順に配して贈る全15編収録の全集第1弾です。1話20Pほどでテンポ良く読み進められます。盗みの方法となぜその依頼が来たのかと1話の中に2つの謎が盛り込まれる興味深いお話たちです。
サラ・ピンスカー(著)市田泉(訳)
出版社(レーベル):竹書房
奇想の海に呑まれ、たゆたい、息を継ぎ、泳ぎ続ける。その果てに待つものは――。静かな筆致で描かれる、不思議で愛おしいフィリップ・K・ディック賞を受賞した13の短編を収録した異色短篇集。
書影に惹かれて買った一冊。イラストから受ける印象とは違い、なんとも不思議で奇想天外な物語がずらり。背景を細かく鮮明に描写していないスタイルのためわかりにくい部分もなきにしもあらずですが、ちょっとずつ輪郭が見えてくる感じがクセになります。音楽モチーフの作品が多いのが特長で、想像力を掻き立てるラストの雰囲気もGOOD!
ドロシー・L・セイヤーズ(著)宇野利泰(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
ピーター・デス・ブリードン・ウィムジイ卿は十五代デンヴァー公爵の次男。クリケットの名手にしてワイン通、書物蒐集と音楽、そして犯罪の探究を趣味とする貴公子だ。クリスティと並び称されるミステリの女王セイヤーズが創造したピーター卿は、従僕を連れた優雅な青年貴族として世に出たのち、作家ハリエット・ヴェインとの大恋愛を経て人間として大きく成長し、古今の名探偵の中でも屈指の魅力的な人物となった――。
貴族探偵の活躍する中短編から代表的な秀作7編を選んだ作品集です。ちょっぴりサイコスリラー的要素のある作品が多めですが、殺人のないミステリーも多いので気持ちがズドーンと落ちずに読み進められるのもポイント。会話や話運びの巧さも魅力です。
アガサ・クリスティー(著) 加藤恭平(訳)
出版社(レーベル):早川書房
街中で知り合い、親しくなってゆく金持ちのオールドミスと青年レナード。ある夜、そのオールドミスが撲殺され、状況証拠は容疑者の青年に不利なものばかり。金が目当てだとすれば動機も充分である上に、彼を救えるはずの妻が、あろうことか夫の犯行を裏付ける証言をして…。
ミステリーの女王、アガサ・クリスティーの法定サスペンス。後にアガサ自ら戯曲化しています。1957年にはビリー・ワイルダー監督により『情婦』として映画化。2016年には英BBCがドラマ化。小説とドラマではフィーチャーされる人物が違うため、作品の印象は変わるかもしれませんが、原作で有名な2転、3転する衝撃のどんでん返しは、ドラマ版でも違った味わいで楽しめます。
エラリー・クイーン(著) 中村有希(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
エラリー・クイーンの記念すべき第1短編集。大学に犯罪学の講師として招かれたエラリーが学生たちと推理を競う「アフリカ旅商人の冒険」をはじめとする名探偵の謎解きを満喫できる全11編の傑作がズラリ並ぶ新装版。
旧訳版、新訳版は読み手によって好みが分かれるものですが、読みやすさという点では新訳版が個人的にはおすすめ。少々古めいた言い回しも、長く愛される名作という印象があって惹かれますが、それがミステリー小説を手に取る際の壁になっている方は、ぜひ新訳版から挑んでみてはいかがでしょうか。短編でもしっかりと本格謎解きが堪能できます。
ジョン・ディクスン・カー(著) 宇野利泰(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
5編の中短編が収められていて、表題作『妖魔の森の家』はジョン・ディクソン・カーの別名義、カーター・ディクスンの推理小説に登場する名探偵サー・ヘンリー・メリヴェール卿が初登場。ミスリードとどんでん返しが楽しめ、心地よい裏切りが堪能できます。カーの作品は凝ったトリックが印象的ですが、物語の面白さも惹かれるポイントです。
『第三の銃弾』のみがやや中編。最後に登場する作品なので、カーの物語に慣れてきたところで中編へ。謎めく設定と予想外な展開が重なる面白さに触れ、中編をクリアしたら、ぜひ長編もチェック。密室殺人第一人者とも言われる本格推理作家で、江戸川乱歩や横溝正史らの作品に影響を与えたとされています。ミステリー×オカルトの組み合わせが好きな方には特におすすめです。
コナン・ドイル(著) 延原謙(訳)
出版社(レーベル):新潮文庫
世界一有名な名探偵シャーロック・ホームズシリーズの短編集一冊目。シリーズは多くの出版社から違う訳書が出ていることからも、ホームズ人気を物語っています。もし、まだ小説に触れたことがないという方は、短編を読み比べて好みの訳版を見つけるのもおすすめです。シリーズとしては『シャーロック・ホームズの冒険』は長編の『緋色の研究』、『四つの署名』に続き3番目に出版されたもの。ですが、発表順に時系列が並んでいるシリーズではないのですし、ホームズシリーズ人気が出たのは『シャーロック・ホームズの冒険』からなので、ここから読んでも問題なし。お気に入りの訳書を見つけてから、遡って長編2冊を読む。そして、その後発売されるシリーズを順番に追うと入りやすいかもしれません。
女性嫌いのホームズにとってオンリーワンの女性、アイリーン・アドラーが登場する『ボヘミアの醜聞』を含む全10編(出版社によって収録数に違いあり!)。シャーロック・ホームズを主人公にした映像作品はたくさん制作されていますが、原作に近い世界観を味わいたいなら、原作に忠実であることを意識して作られた英国グラナダTV製作のドラマ版『シャーロック・ホームズの冒険』がおすすめです。
アイザック・アシモフ(著) 池央耿(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
弁護士、暗号専門家、作家、化学者、画家、数学者の6人からなる<黒後家蜘蛛の会>。月に一度開かれる晩餐会では、毎回不思議な謎が出題され、6人は素人探偵ぶりを発揮。しかし、常に真相を言い当てるのは、晩餐会の会場となるレストランで給仕をする物静かなヘンリーだった。
SF作家のアイザック・アシモフによる安楽椅子探偵もの。個性的な6人ではなく、控えめな給仕のヘンリーが謎を解くという設定がまず面白くて爽快。ゲストが持ち込む謎というのも身近な感じがして楽しめます。おすすめポイントはそれぞれの知識を披露し合い、皮肉混じりに騒々しく展開する6人の会話。謎は解けないけれど、知的さが漂う掛け合いで独特の面白さがあります。
ハリイ・ケメルマン(著) 永井淳/深町眞理子(訳)
出版社(レーベル):早川書房
通りがかりに漏れ聞いた一言だけを頼りに推論を展開し、殺人事件の犯人を指摘したニッキイ・ウェルト教授。純粋な推理だけを武器に、些細な手がかりから難事件を鮮やかに解き明かし、次々と解決していく。
米澤穂信や有栖川有栖、恩田陸ら人気作家がオマージュしている作品としてもよく知られています。ニッキイ教授独特の言い回しはちょっと独特ですが、人間味が感じられクセになるタイプ。表題の短編『九マイルは遠すぎる』は、1947年に「エラリー・クイーンズ・ミステリ・マガジン」の短編小説コンテスト入選作品で、ケメルマンのデビュー作です。
G・K・チェスタトン(著) 中村保男(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
小柄で不器用、丸く間の抜けた顔。頭が切れるとは思われないブラウン神父が事件の真相を口にすると、世界は一変する。奇妙な痕跡を残す二人連れの神父を追う名刑事。その背景には何が? 奇想天外なトリック、痛烈な風刺とユーモアが堪能できるブラウン神父初登場の『青い十字架』を含む12編の短編集。
シャーロック・ホームズやエルキュール・ポアロと肩を並べる名探偵の一人とされています。ホームズやポアロと違うところは、職業が探偵でないこと。その名の通り神父さんです。罪を犯した人に寄り添う姿が印象的です。後に相棒となる探偵・フランボウとの出会いからの流れも興味深い!
J.L.ボルヘス(著) 鼓直(訳)
出版社(レーベル):岩波文庫
夢と現実のあわい(あいだ、すきま)に浮び上る「迷宮」としての世界を描いて、二十世紀文学の最先端に位置するボルヘスの短編集。宇宙の隠喩である図書館の物語『バベルの図書館」やわれわれ人間の生とは、他者の夢見ている幻に過ぎないのではないかと疑う『円環の廃墟』などの代表作を収録。
映画監督のクリストファー・ノーランはボルヘスの『円環の廃墟』や『隠れた奇跡』から映画『インセプション』(2010)の着想を得たとされています。短編はサクッと読めるのがいいところですが、ちょっぴり難解で独特な世界観のボルヘスは、もしかしたら入りにくいかもしれません。しかし、頑張って読破すると、知識を増やしてからまた挑戦したい、何度も読み返したいと思える、そんなタイプの短編集です。
フレドリック・ブラウン(著) 越前敏弥(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
雪の上の足跡をめぐる謎を描いた『笑う肉屋』、緊迫感溢れる『叫べ、沈黙よ』など、奇抜な発想と予想外の展開が魅力の全18編からなるフレドリック・ブラウンの短編集。短編集ですが300ページを超える分厚い本になっています。江戸川乱歩編の名アンソロジー『世界推理短編傑作集』にも選出された『危ないやつら』も収録されています。ミステリー作家がおすすめするミステリー作品となれば、ぜひチェックしておきたい!
筆者のフレドリック・ブラウンは、ミステリーだけでなくSFやファンタジー作品も手掛けているので、短編集に収められた全18編はバラエティーに富んでいてさまざまな味が楽しめます。奇抜な着想、軽妙な話術で読み手を惹きつけます。
ジェフリー・ディーヴァー(著) 池田真紀子 他(訳)
出版社(レーベル):文春文庫
原題は『Twisted』。ひねりにひねった短編全16編を収録しています。邦題となっている『クリスマス・プレゼント』は本書のために書き下ろした短編です。ディーヴァーといえば、『ボーン・コレクター』で始まるベッドから一歩も動けない四肢麻痺の科学捜査官リンカーン・ライムを主人公にした<リンカーン・ライム>シリーズでお馴染み。
長く続く<リンカーン・ライム>シリーズを読破するには気合も時間も必要。ディーヴァー作品に触れたことがない方には入門編としておすすめです。贅沢なほどの仕掛けが施されていて、タイトル通り、ひねりにひねられているため、華麗に騙されます。謎を解くのも楽しいですが、ミステリー小説は心地よく騙されるのも醍醐味。『クリスマス・プレゼント』にはリンカーン・ライム&アメリア・サックスも登場するので、<リンカーン・ライム>シリーズの入り口にぜひ!
スタンリイ・エリン(著) 田中融二(訳)
出版社(レーベル):早川書房
隠れ家レストラン“スビローズ”で供される料理はどれもが絶品ばかり。雇い主ラフラーとともに店の常連となったコステインは、滅多に出ないという“特別料理”に焦がれるようになるが…。エラリイ・クイーン絶賛の表題作をはじめ、アメリカ探偵作家クラブ賞受賞作『パーティーの夜』を含む10編を収めた短編集。
描写が巧みで、意外と先が読める展開が多いのですが、本書の魅力はブラックなオチと読後の“ゾクゾク”とちょっぴりイヤな後味。しかし、読めば読むほどその後味が心地よく感じていく一冊です。
クリスチアナ・ブランド(著) 深町眞理子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
アガサ・クリスティー、エラリー・クイーン、ディクスン・カーらと共にミステリー黄金期を支えた作家の一人で、英国推理作家協会の会長を務めたことも。児童文学作家としての顔を持つブランドの傑作短編集は、皮肉な結末が楽しめる一冊。ブラックなオチが好きな方におすすめです。
好きなものをちょっとずつ。まさにビュッフェスタイルで楽しめる短編集。ブランド作品に触れたことのない人は「食べてみようかな」くらいのノリで読んでみるのもいいかもしれません。重鎮の作家は読み始めるタイミングが難しいと構えてしまい、意外と読んでいないというケースも。短編集なら、味を知る感覚で気軽に入れるはず!
ロアルド・ダール(著) 田口俊樹(訳)
出版社(レーベル):早川書房
ある日、突然夫に別れを告げられた妻は、思わず夫の頭に一撃を喰わせてしまった。目の前には刑事である夫の死体が転がっている。もうすぐ夫の仲間の警官たちがやってくるに違いない。さて、妻は凶器をどうする?短編ミステリーのスタンダードとして有名な『おとなしい凶器』を含む全11編収録の短編集。
児童文学の名作、『チャーリーとチョコレート工場』で知られるロアルド・ダールは、脚本家としても活躍。映画『007は二度死ぬ』(1967)や『チキ・チキ・バン・バン』(1968)などのヒット作品の脚本も手掛けています。短編集ではシニカルでブラックな世界が楽しめます。文体から漂う不気味さがなんともいえない味わいです。
ダフネ・デュ・モーリア(著) 務台夏子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
アルフレッド・ヒッチコックの映画で有名な表題作『鳥』を含む全8編の中短編を収録した一冊。ヒッチコックはデュ・モーリアの長編小説『レベッカ』も映画化しています。『レベッカ』は2020年にはベン・ウィートリー監督が再映画化。デュ・モーリエ自身で戯曲化もしています。
恋愛小説家として才能を発揮する一方で、ミステリーやサスペンスでも傑作を生み出している、才能豊かな作家の一人。短編集ではそれぞれの作品に個性があり、どんなジャンルもテーマも書ける才能を目の当たりにするはず。『鳥』では、映画とはまたひと味違う閉塞感が堪能できます。
エドワード・D・ホック(著) 木村二郎(訳)
出版社(レーベル):東京創元社
橋の途中で消え失せた馬車、行き止まりの廊下から消え去った強盗、誰も近づけない空中で絞殺されたスタントマン等々、次々と発生する怪事件。全編不可能犯罪を扱った、サム・ホーソーンもの初期作品12編とD・ホックの代表作『長い墜落』を収録。
D・ホックが世に送り出した長編はほんの数作で、短編ミステリーを多数手掛けています。主人公は若き青年医師のサム・ホーソーンですが、物語は、歳をとったホーソーンが昔話をする回想スタイルで進んでいきます。不可能犯罪のスペシャリスト、サム・ホーソーンの謎解きと古き良きアメリカの田舎暮らしぶりが楽しめる味わい深い一冊です。
ジェイムズ・ヤッフェ(著) 小尾芙佐(訳)
出版社(レーベル):早川書房
毎週金曜の夜、刑事のデイビッドは妻を連れ、ブロンクスの実家へママを訪れる。ディナーの席でいつもママが聞きたがるのは捜査中の殺人事件の話。ママは“簡単な質問”をいくつかするだけで、何週間も警察を悩ませている事件をいともたやすく解決してしまう。
デイビッドのママは世間一般の常識や人間心理を見抜く目、そして豊富な人生経験のみで事件を解決する安楽椅子探偵です。ママの作る美味しい料理とちょっぴりのお説教、嫁と姑の絡みも一緒に楽しみながら、いつの間にか鮮やかに事件を解決するママの推理力に酔いしれてみて!
短編でもじっくりと引き込まれるミステリーが楽しめる作品ばかり。ミステリーのトリックやパターンをたくさん知ることができるのも短編集のいいところ。隙間時間に読むはずが、気づけばどっぷり…なんてことにもなりかねませんが、いろいろな短編集に触れて、好みのミステリー作品、作家を探してみてはいかがでしょうか。
ドラマもチェック!
ミステリーチャンネルでは、本記事にも登場した「シャーロック・ホームズの冒険」や「ブラウン神父」を初め、小説が原作のミステリードラマを放送しています。
<ミステリーチャンネルについて>
世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル 文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!
<ミステリーチャンネルご視聴方法>
ミステリーチャンネルは、スカパー!、J:COM、ひかりTV、auひかり、全国のケーブルテレビでご視聴頂けます。
詳しい視聴方法はこちら
スカパー!でのご視聴を希望の場合、ご自宅のテレビでCS161/QVCを選局してスカパー!が映ることをご確認ください。映ることが確認できましたら、B-CASカードをご準備頂き、WEBで簡単に加入お申し込みができます。お申し込み後は約30分でご視聴可能になります。
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