イギリスのベストセラー作家P・D・ジェイムズ原作のミステリーシリーズ『刑事ダルグリッシュ』のシーズン3がいよいよ4月からミステリーチャンネルにて独占日本初放送!今回は、2025年で生誕105年を迎えたベストセラー作家P・D・ジェイムズについて触れながら、これまでに映像化された作品と、シーズン3の見どころやシリーズの魅力を紹介していきたいと思います。
1920年イギリス・オックスフォード生まれのP・D・ジェイムズ(Phyllis Dorothy James White)は、1962年 にアダム・ダルグリッシュ警部を主人公とするシリーズの第一作目『女の顔を覆え』で作家デビューを果たします。その後発表した『ナイチンゲールの屍衣』『黒い塔』『死の味』はイギリス推理作家協会が主催するCWA賞において、シルバー・ダガー賞を受賞しました。彼女の著作の多くは日本でも翻訳されていますね。
(「刑事ダルグリッシュ」シーズン1)
©New Pictures for Acorn TV and Channel 5, UK in association with All3Media International
過去に映像化された作品も多く、実は「アダム・ダルグリッシュ」シリーズは過去に二回ドラマ化されています。一度目は、『我が職業は死』(1983)から始まったテレビシリーズで、主演はロイ・マースデンが務めました。二度目は、『孤高の警部ジョージ・ジェントリー』の主演でおなじみ、マーティン・ショウがダルグリッシュ警部役を演じたミニシリーズで、『神学校の死』(2003)と『殺人展示室』(2005)の二作品が製作されています。
ちなみに、P・D・ジェイムズが生み出したもう一人の名探偵、コーデリア・グレイが主人公の『女には向かない職業』も映像化されており、1982年に発表された映画版では、ピッパ・ガードが主演を務めました。70年代以降、多くのテレビ映画やドラマで活躍した俳優であり、『名探偵ポワロ』シーズン4第1話「ABC殺人事件」にもゲスト出演しています(ミーガン・バーナード役)。
1997年から1998年にかけて放送されたドラマシリーズ版の主演はヘレン・バクセンデイル。アメリカの大人気シットコム『フレンズ』(1994-2004)のシリーズ中盤から登場し、メインキャラクターの一人であるロスと結婚した知的なイギリス女性エミリー役のイメージが強いでしょうか?『アガサ・クリスティー ミス・マープル』シーズン4第1話「ポケットにライ麦を」では、謎めいた屋敷の管理人ミス・ダヴ役を演じていましたね。…そうです、滅多に笑顔を浮かべないただのミステリアスな女性かと思いきや、ラストで実はとんでもない人物だったことが明らかになるあの人です。
さて、今なお世界中で愛される緻密なミステリーを世に送り出してきたP.D.ジェイムズ。彼女の代表作は、やはりアダム・ダルグリッシュ警部が活躍する本シリーズ『刑事ダルグリッシュ』です。1970年代のイギリスを舞台に、ロンドン警視庁犯罪捜査課の警部であるダルグリッシュが数々の難解な事件を解決していく姿を描いています。
本作は一つのエピソードを二部構成で描くスタイルで、シーズン1では、先ほど紹介した『ナイチンゲールの屍衣』『黒い塔』『死の味』、シーズン2では、『わが職業は死』『正義』『殺人展示室』が製作されました。シーズン3の収録作品も含め、すべて過去にハヤカワ・ポケット・ミステリで出版されたことのある作品ですので、お手に取ったことのある方も多いのではないでしょうか?どのエピソードも、嘘が嘘を呼ぶ濃密な人間関係の中で起こる陰惨な事件と、その中で寡黙に真実を追い求めるダルグリッシュ警部の覚悟と葛藤が丁寧に描かれています。
(「刑事ダルグリッシュ」シーズン3)
© NEW PICTURES LIMITED 2024
警察内でも屈指の難事件を任される名刑事である一方、詩人としても高く評価される繊細な感性の持ち主でもある主人公アダム・ダルグリッシュを演じるのは、バーティ・カーヴェル。英国の名門演劇学校RADA(王立演劇学校)出身で、イギリスで最も権威のあるローレンス・オリヴィエ賞(その年に上演された優れた演劇、オペラ、ダンス、ミュージカルに贈られる)を2回受賞した経歴を持つ人物です。
日本でもよく知られた代表作としてまず名前が挙がるのは、『女医フォスター』(2015-2017)でしょうか?容姿端麗、頭脳明晰、充実した医師としてのキャリア、愛する夫と息子との生活…と、この世の何もかもを謳歌していたはずの女性が、夫の不倫をきっかけに復讐に駆られる愛憎劇を描いた人気ドラマであり、バーティ・カーヴェルはまさにその夫役を熱演しています。あの時は髭を蓄えた姿で出演されていたので、『刑事ダルグリッシュ』の彼とは少し印象が異なるかもしれませんね。また、英国の作家スザンナ・クラーク原作の歴史ファンタジードラマ『ジョナサン・ストレンジとミスター・ノレル』(2015)では主演を務め、イギリス女王エリザベス2世の治世を描く大ヒットドラマ『ザ・クラウン』(2016-2023)では、英国の第73代首相トニー・ブレア役で出演していました。
(「刑事ダルグリッシュ」シーズン3)
© NEW PICTURES LIMITED 2024
気になるシーズン3では、『神学校の死』『女の顔を覆え』『策謀と欲望』が映像化!警部(シーズン1)、主任警部(シーズン2)と順調に昇進してきたダルグリッシュは、シーズン3でついに警視長になりました。
エピソードごとにダルグリッシュ警部と共に捜査する部下の顔ぶれにも変化が現れるのが本作の特徴。一つひとつの手がかりをじっくりと調べ、小さな違和感でも立ち止まって捜査するミスキンや、捜査もスピード命の野心家タラントなど、どの巡査部長もキャラクターが大きく異なるため、優秀でどこか影のあるダルグリッシュ警部と部下のコンビネーションはエピソードごとに全く違います。「作品としてどのコンビが面白いと感じるか」と質問すると、視聴者によって感想が分かれそうで、みなさんの意見がとても気になりますね。
シーズン3第1話&第2話「神学校の死」では、廃校の危機にある神学校に新たに赴任した大執事が遺体で発見される事件が発生。神学校の運営改革の一環で、学校が所蔵する由緒ある名画「最後の審判」と学校の領地の一部を売却するという提案を巡って意見が大きく対立していたさなかでの事件に、ダルグリッシュが挑みます。広大な森に囲まれた静謐な神学校で、一体なにが起こったのか…?
(「刑事ダルグリッシュ」シーズン3)
© NEW PICTURES LIMITED 2024
ロンドン警視庁犯罪捜査課の刑事でありながら、詩人として本も出版する…という異色の経歴(ミステリーの探偵役は得てして異例の経歴を持ちますが)の持ち主であるダルグリッシュ警部の活躍を描く『刑事ダルグリッシュ』。原作を忠実に映像化したことで高い評価を得てきた本作もついにシーズン3に突入します。二部構成で製作されたことで、細部にまでこだわりを感じるクオリティに加え、「うわ、次はどうなるんだろう…」と引き込まれてしまう術中に見事にハマって続きを観たくなる人気シリーズですね。
詩人としての繊細な感性で、彼にしかできない捜査で数々の難事件を解決に導いてきたダルグリッシュ警部。きっちりと成果を出す姿勢が評価され、その結果ほかの刑事には任せられないと上層部が判断した「特別な配慮が必要な事件」ばかりに送り込まれるという、少し損な性分でもあります。過去の悲しい出来事を経て、孤独であることを自ら選択したダルグリッシュ警部だからこそ、事件の裏に潜む人間の醜悪さにも怯むことなく切り込んでいくことができるのかもしれません。
(「刑事ダルグリッシュ」シーズン3)
© NEW PICTURES LIMITED 2024
今回は、英国が誇る推理作家の重鎮の一人であるP・D・ジェイムズの作品を紹介するとともに、ミステリーチャンネルで独占日本初放送となるシーズン3の見どころをご紹介しました。1970年代という、現代から少し遠くなった時代の再現度も高く、原作を知っている方も、ドラマ版が初めてという方も楽しめる作品だと思います。新シーズン放送に合わせて過去シーズンの一挙放送もあるので、気になる方はぜひチェックしてみてください!
(文:うりまる)
【放送情報】
刑事ダルグリッシュ(シーズン3・全6話)
字幕版:4/26(土)夕方4:00 一挙放送
★シーズン1・2再放送 字幕版:4/20(日)~22(火) 毎日午前11:00
番組公式サイト
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