2024/08/22

NEXTブレイクは?ミステリー最前線!│海外ミステリーの最新トレンドからおすすめ小説&ドラマをご紹介【早川書房×東京創元社×扶桑社×ミステリーチャンネル】

「特集もっと楽しむミステリー!」第6弾のテーマは、ミステリー界隈の最新トレンド!ミステリー専門チャンネルとミステリー老舗出版社が見つめる海外小説&ドラマの“今”の動きとは?これからも目が離せないミステリー最新情報が詰まった座談会の内容をお届けします!各社イチオシの小説&ドラマ情報もありますのでお楽しみに。

早川書房 ミステリマガジン編集部 井戸本様:(井)
東京創元社 編集部 宮澤様:(宮)
扶桑社 翻訳出版編集部 吉田様:(吉)
ミステリーチャンネル 編成制作部部長 秋山:(秋)

海外ミステリー小説の近年のトレンドについて

(秋)まずは海外ミステリー小説の近年のトレンドや、注目しているジャンルについて教えてください。

(宮)十年以上前に『ゴーン・ガール』という作品が爆発的に売れまして、それ以降海外の版権エージェントからの売り文句に「Like a Gone Girl(ゴーン・ガールっぽいもの)」が急増した時期がありました。そのときほど大きな流れではありませんが、アンソニー・ホロヴィッツが出たことで、いわゆる正統派の謎解きを売りにしている作品、ホロヴィッツを好きな人向けというか、クラシックなミステリーを志向した作品が増えてきている気がします。ホロヴィッツもそうですが、よくできている作品がヒットを飛ばすとそれがサブジャンルになっていくのかな?という感触です。ホロヴィッツも最初は、あの有名な脚本家が大人向けのミステリーを書いた、という触れ込みで紹介されて、作品そのものが高く評価された結果だと思います。ほかのジャンルでいうとトゥルー・クライム系が増えていますかね?

(井)増えていますね。実話犯罪ものというんでしょうか。

(宮)弊社の作品だと、ホリー・ジャクソンの『自由研究には向かない殺人』のポッドキャストや SNS を駆使して女子高生が事件の謎を解いていく…という展開はトゥルー・クライムでも見られるものですね。

(吉)うちだと『キル・ショー』はバリバリのトゥルー・クライムものですね。


『自由研究には向かない殺人』
著:ホリー・ジャクソン 訳:服部 京子
出版社:東京創元社

『キル・ショー』
著:ダニエル・スウェレン=ベッカー 訳:矢口 誠
出版社:扶桑社

(秋)今のお話を聞く限りだと、トゥルー・クライムものというのは実話をそのまま描いているんですか?

(井)海外では犯罪事件を追うポッドキャストが流行っていて、ポッドキャストのオーナーが実在する事件を追う、というコンテンツが非常に人気なんですね。この流行りを引き継ぐために、少し内容にひねりを加えて小説にしたものがトゥルー・クライムものということなのではないでしょうか。小説なのでもちろんフィクションなんですけど、「実際に起こった事件」として描いています。

(宮)手段というか、主人公の立ち位置のジャンルですね。

(井)素人探偵の条件をクリアしやすいのだと思います。

(宮)警察だと武力や法律が武器になりますし、私立探偵であれば何かしらノウハウや後ろ盾があるところを、ポッドキャストの配信者の場合には本人の知名度であったり、多数のフォロワーによる人海戦術であったりをたのみに捜査していきます。

(秋)海外でそれだけ人気なのに、映像化はあまり盛んではない気がしますね。

(吉)メタミステリー(推理小説の形式そのものを題材にした作品などを指す)みたいになっている作品もありますから、映像化しづらい部分もあるのかもしれません。

(井)一時期配信サービスでモキュメンタリー形式(フィクションをドキュメンタリー風に見せかけて演出する映像手法)の作品がドバッと出てたときがあったじゃないですか?あれと流れは一緒なんじゃないかなと思いますね。

(宮)『自由研究には向かない殺人』は原題が「A Good Girl’s Guide to Murder」なんですが、本作のヒット以降は、「Guide to」や「How to」ではじまるタイトルの作品が一気に増えましたね。

(井)『白薔薇殺人事件(HOW TO SOLVE YOUR OWN MURDER)』もそうですよね。

(宮)内容は全然違いますけど、タイトルのつけ方は同じですね。「ミステリーっぽいタイトル」の新しいイメージになってきたのかもしれません。次に何がブームになりそうか、「まだ流れが来ていないジャンルはなにか」を考えてみたのですが、はっきりわからないです。どのジャンルも順番にスポットライトが当たっていますから、むしろ何が来てもいいように準備しておくだけ、ということになるのではないでしょうか。

(吉)来たものを逃さないように努めるのが我々の仕事でもありますからね。

(宮)向こうで何か新しいブームが起こった時に、一番早く、うまくキャッチできるのは誰か、みたいな感じです。

(吉)先ほどの「Like a ~」みたいな話題でいうと、欧米のエージェントが本を紹介してくるときって、だいたい「○○×△△」という形を使うことが多いんですよ。すでに流行っているものに何か新しいことを掛け合わせる形で作品を紹介されますね。我々も「ああ、あれとあれか」という感じで考えています。ひと昔前には、毎回のように「ダン・ブラウン×△△」ばかりだった時期もありました(笑)。そういう意味では、先ほどの『ゴーン・ガール』も確かに流行ったのですが、それ以降日本に入ってきた『ゴーン・ガール』ライクな作品の人気が出たか、というとそこまででもない。クセのつよいどんでん返しがあって、家族間の騙し合いに焦点を当てたドメスティック・サスペンスというジャンルは、海外では本当に流行っていて、著名な作家も生まれていますが、日本では大きな流行として続きませんでした。トレンドに関してですが、海外小説の“今”という点で考えると、女性が主人公の作品や、ミステリーという形をとりながら社会問題に焦点を当てたものが多い印象ですね。

(秋)それはやっぱり、いわゆる「ダイバーシティ(多様性)」の観点で増えてきているという感じでしょうか?

(吉)そうですね。典型例でいうと『ザリガニの鳴くところ』だと思うのですが、小説や映像作品において、登場人物の女性が過酷な運命に晒されるサスペンスの形式は、「この時代に、女性はこういう厳しい立場に置かれていた」という状況を説明する上で思った以上に相性が良いのかもしれません。

(秋)アメリカ・イギリスを筆頭に、近年ドラマ界におけるダイバーシティの流れは非常に勢いがありますね。新たに制作されたアガサ・クリスティー原作のドラマ『殺人は容易だ』でも黒人キャストが主人公を演じています。毎回原作とは異なる結末でファンを驚かせるなど、アガサ・クリスティーに対するリスペクトを忘れることなく、常に新しいチャレンジに挑んでいるシリーズですね。

『殺人は容易だ』ミステリーチャンネルで12月、独占日本初放送予定!
© Agatha Christie Productions Limited MMXXI

注目され始めた日本小説

(吉)あとは、ここ数年の傾向として、今まで日本の小説って中国・台湾・韓国にしか版権が売れない…という感じだったのですが、ここにきてヨーロッパやアメリカでも取引が盛んになってきた印象です。そうなってくると、日本では本格ミステリーが特殊な形で発達してきた背景があって、韓国や中国では、小さいころに島田荘司先生の作品や綾辻行人先生の新本格作品に触れて育ってきた世代の人達がそういう本を書こうという動きがありまして、それが今度はヨーロッパでも起きてくるかもしれません。

(秋)ちょうどうちで今度の 10 月に『退職教授ハリーの名推理』というドラマが放送されるんですが、退職教授が主人公のアイルランドのドラマになります。『007 死ぬのは奴らだ』でボンドガールを務めたジェーン・シーモアが主演でして、作中に島田荘司先生のタイトルが登場するんですね。こんなにアイルランドで人気なのか、と驚きましたね。


『退職教授ハリーの名推理』シーズン2、ミステリーチャンネルで10/20(日)夕方4:00独占日本初放送!シーズン1は10/15(火)夜10:00から放送!
© Harry Wild S1 Productions Limited 2022

(井)島田荘司先生はアイルランドでかなり人気ですね。北アイルランド出身のエイドリアン・マッキンティという作家が熱心なファンで、弊社で<ショーン・ダフィ>シリーズを出版しているんですが、かなりガッツリした警察小説にもかかわらず、非常に凝った密室トリックが登場することがありまして。それはマッキンティ自身が、島田荘司先生の影響を受けているからだとインタビューでこたえたこともあって、アイルランドでは一時期島田荘司ブームが起きていたらしいです。


『コールド・コールド・グラウンド』
著:エイドリアン・マッキンティ 訳:武藤 陽生
出版社:早川書房

(秋)なるほど。島田先生自身も海外に向けての発信を熱心にされている方ですからね。お話を伺ったことがありますが、海外の若い作家を育てることにかなり意欲をもって取り組んでいらっしゃる印象でした。

(吉)もともと本格ミステリーというジャンルは、エドガー・アラン・ポーによってアメリカで創始され、それがイギリスへ飛び火し、新聞カルチャーの中でホームズや彼の「ライバルたちの短編」が現れてきました。フランスを経て、イギリスで本格ミステリー長編のブームが勃興したのち、かなり早い時期ーー1920 年代くらいには成熟したカルチャーになりました。今度は、それが再びアメリカに飛び火するわけですよ。美術史家だったヴァン・ダインだったり、イギリスが好きすぎて移住しちゃったジョン・ディクスン・カーだったりと、ヨーロッパの本格ミステリーに憧れを持つ人たちはたくさんいました。ずっとアメリカにいながら英国的な本格ミステリーを突きつめ続けたエラリー・クイーンもそうですね。そして、それを読んだイギリスの人達が再び影響を受けて…というピンポンゲームが続いていた中で、ずっと蚊帳の外だった日本にも戦後になってそれらが怒涛のように流入してきて、一気に人気が燃え上がって、横溝・高木ら一部の作家が本格ミステリーを書き倒していくわけですよね。そういう下積みがあって、一時人気が廃れた後、また鮎川哲也先生や島田荘司先生をはじめとする方々の作品によって本格ものが再興されてきました。そして、長い期間をかけて生み出されてきたこの流れがヨーロッパへと帰っていく…ということを考えるととてもいい話だなと思います。自分が高校時代、新本格ブームの只中にあって布教とかもしていた世代ですので、(日本の作家に)影響を受けたということが明確にわかる海外の作家が出てくるとすごく嬉しいですね。ただ、最前線かと聞かれると…傍流かもしれませんが(笑)。

「ロマンタジー」ブームとミステリージャンルにおけるロマンスについて

(吉)あとは、ミステリーじゃない話でいうと、今の海外小説の最前線は「ロマンタジー」かもしれません。各エージェントからたくさん話が来ますから。

(秋)ロマンスとファンタジーですか?

(宮)ロマンス要素が非常に強いファンタジーですね。これは本当に海外で流行っています。基本的には異世界を舞台にしたファンタジーで、主要キャラクターの恋愛模様の描写が非常に大きなウェイトを占めている作品のことを指します。

(井)そのブームの火付け役となった『フォース・ウィング―第四騎竜団の戦姫―(上・下)』という作品が 9 月に弊社から出ます。第四騎竜団という、竜に乗って戦う人々を描いていて、そこにかなりロマンス要素が入ってきます。これが海外で大ブームとなり、ニューヨーク・タイムズ紙のランキングにも何週間も掲載され、続編が出るというだけでニュースになるほどの人気となりました。それによって「ロマンタジー」というジャンルの拡大にもつながったのかなと。

(吉)本当に(ブームの潮流が)読めないところがあって。弊社でもずっとジャンル・ロマンスをやらせてもらっているんですが、日本においてはロマンス小説は少し勢いが弱まってきている感じがあったんです。以前は読者層がうまく循環していて一定数のお客様に支えられているジャンルだったんですが、最近はちょっと減ってきているかな…という印象でした。ところがいま「ロマンタジー」を支えているのはヤング・アダルトがベースとなる若い層なので、日本における試金石として早川さんのこのシリーズが成功するかどうかを、けっこう業界全体がドキドキしながら見守っています(笑)。

(秋)中国ドラマはそういう意味では「ロマンタジー」っぽい作品が多いですね。

(井)(中国ドラマの傾向は)欧米でのブームとはまた異なる流れなのかな、とは思います。なぜ欧米で今「ロマンタジー」のブームが来ているのか、きちんと分析しきれていないところはあるんですが…。

(秋)でもこの傾向はかなり興味深いですね。まさに中国では、「ロマンタジー」に加えてミステリーの要素が加わる作品も多いですから。

(井)ただミステリー読者には、ロマンスを嫌がる人の割合が多いような気が…。東京創元社さんの読者の方はその点は大丈夫そうですね。

(宮)弊社でも、作品を選ぶときにはなるべくミステリー成分が濃いものを選んではいます。ただ、サブの要素としてロマンスがある分には、登場人物の関係性の変化も楽しんでいただいているのかな、という印象です。

(井)そっち(ロマンス)がメインになったとたんに離れていってしまう傾向がある気がします。

(宮)我々も、ミステリー読者のツボはある程度把握できているかな、と思う一方で、ロマンス読者のツボはまだはっきりとつかみかねている部分があるからかもしれません。

(吉)僕なんかはオヤジ世代なんで本当にわからないんですけど、井戸本さんぐらいの世代の人だと例えば森博嗣先生の本なんかはどうなんですか?恋愛要素が強い作品も多いですけど、ミステリー読者はみんな好きですよね。

(宮)あくまでも恋愛がメインの要素じゃない、というのが大事なのかもしれませんね。

(井)森博嗣先生や、米澤穂信さんの本も好きですけど、やっぱりミステリーとしても読めるし、恋愛や青春ものとしても読める、というどちらにもとれる作品だから、というところはあると思います。

(吉)もともと新本格からはじまるミステリーの流れの上に、森さんも米澤さんも立っていると思うんですけど、一方で日本にはラノベ(ライトノベル)カルチャーがありまして。若い子たちはこぞって膨大な数のラノベを読んでいて、ラノベの大半はファンタジーであり、バトルであり、ロマンスなわけで。逆に言うと恋愛要素のないラノベはほとんどありません。そういう流れの中でだんだん両者の読み手も書き手も混淆してきて、先ほど挙げたようなラノベ的感性を包含した本格作品も登場してきました。ただ、先ほど井戸本さんもおっしゃっていたように、ミステリー読者は微妙に峻別して読んでいるところもあって、たとえ恋愛要素があってもあくまでミステリーとしての質で語る傾向はありますね。

(井)「ミステリーとしてはこう読めるよね」という話をしたがるところはあると思います(笑)。

(吉)本心は「いつくっつくのかなこの二人…」とときめきながら読んでいるのかもしれませんけどね。

(井)それはそれとして、コージー・ミステリーファンは一定数必ずいますね。

(宮)コージーだと、読者の方々は主要登場人物に対してすごく愛着を持っていただいて、その人気で長く続く…ということが多いですね。弊社で取り扱っているコージー・ミステリーは、しっかりとした謎解きがあるものから、「なんとなく怪しいと思った人が犯人だった」みたいなものまでいろいろで、ミステリーとロマンスに関してはバランスというか、匙加減が重要なのかもしれません。

(吉)アメリカでも、ロマンスとミステリーはある程度ジャンル分けされていますね。弊社で長く出版しているノーラ・ロバーツも、デビュー当時は「ロマンスとミステリーを融合させた作風が斬新」という評価でした。逆に言うと、それまではミステリーとロマンスを同じ比重で書くことを避ける傾向があったということですね。その後ロマンス業界には「ロマンティック・サスペンス」というジャンルが登場しました。ミステリー要素、ないしはアクション要素があって、事件に巻き込まれた二人の間で恋愛関係が育まれていく…という小説ですね。ノーラ・ロバーツのようにサイコ・サスペンスっぽい作品もあれば、スーザン・ブロックマンみたいに、ムッキムキの男性が女性を守りながら戦うみたいな話もあります。

(秋)海外小説において、ロマンスというジャンルが確立されていることに少し驚きました。ドラマ界ではまだあまりそこまでの地位を確立できていないので…。あまりにも恋愛要素が全面に押し出されていると、視聴者さんから距離を取られてしまうこともありまして。

(吉)日本国内でもジャンルとしてのロマンス小説が確立されていないからこそ、ハーレクインから出版されるロマンス作品を待つ読み手がたくさんいるわけですよね。かつては月に 40 冊以上翻訳されて出版されるほどに読者層が分厚いレーベルでしたから。ロマンス小説の代わりに日本では少女コミックが発展してきたのだと思います。あれはジャンルとしては間違いなく恋愛ものですからね。そういう棲み分けがあった中で、コミックを作風のベースとするラノベという新しい形態が登場してきたのだと思います。

南部小説の勢いと日本輸入の難しさ

(井)ちょっと前までは「サザン・ノワール」や「サザン・ゴシック」などのいわゆる南部小説というジャンルがアメリカではすごく流行っていました。S・A・コスビーや、弊社でも出版した『メキシカン・ゴシック』のシルヴィア・モレノ=ガルシアとか、そういったアメリカ南部のコミュニティ発祥のブラック・カルチャーを汲んだ作品がアメリカですごく流行っていた時期が 2~3 年前まではあった気がします。


『メキシカン・ゴシック』
著:シルヴィア・モレノ=ガルシア 訳:青木 純子
出版社:早川書房

(秋)日本ではどうだったんでしょうか?

(井)そこが問題で、正直に言うとジャンルを定着させることはできませんでした…。「サザン・ノワール」や「サザン・ゴシック」と言われても、日本の読者には想像がつかなかったのだと思うんですよね。

(宮)アメリカ南部と北部の違い、文化的な差異があまりよくわからなかったというのが一つと、あとはそももそも「南部」って具体的にどこからが南部なの?となってしまったのかもしれません。

(井)日本でも南部小説の波に乗ろうとして、扶桑社さんの『ゴスペルシンガー』や弊社の『メキシカン・ゴシック』、ドラマ化もされた『悪魔はいつもそこに』など邦訳もさまざま出ましたが、日本で受け入れられたのはおそらく S・A・コスビーの『黒き荒野の果て』にはじまる作品群だけだったと思います。南部小説が日本でもっと受け入れられたならば、一つの大きな波になっていた可能性もありますが、やはり用語的にとっつきづらいイメージがあったのかもしれません。

(宮)コスビーの人気も、南部小説としてというよりも、単純に犯罪小説としてのクオリティが高かったから、という部分が強いと思いますしね。

ミステリーの源流を探る

(吉)宮澤さんがはじめにおっしゃっていたように、本格っぽい作品を海外のエージェントからおすすめされる機会は増えましたね。

(井)イギリスで本格ミステリー復興の流れがありますよね。弊社でも出版しているマーティン・エドワーズという作家は、もともと CWA 賞の会長も務めていた方なんですが、今はかなり精力的に昔の本格っぽい作品を発掘して復刊したり、短編集を編んだりという活動をしているので、その流れに乗っかる形で執筆している作家が増えてきたのではないかなと思っています。また、アンソニー・ホロヴィッツが非常にクオリティの高い作品を出して評価されたことによって本格っぽい作品を書こうという機運も高まっているのかもしれません。…が、それとはまた別に、「どんでん返し」や、作者に騙されることを期待する読者が増えてきているんじゃないかな、とも思います。これまでもずっと人気でしたけど、改めてクリスティーがまた人気になっていますよね。

(宮)アンソニー・ホロヴィッツもそうですけど、クリスティーのエッセンスを取り込んだ謎解きがやはり人気ですよね。本当にクリスティーはシンプル。登場人物も多くないし、事件も派手なものは少ない。奇をてらったことをやっているわけじゃないのに、犯人や真相を気づかせない…というあの「上手さ」を汲み取っている点では、ホロヴィッツはピカイチです。『名探偵ポワロ』の脚本などに携わっている間に学んだんでしょうかね。

(井)クリスティーは源流なので、ミステリー要素を高めていけばホロヴィッツなどにつながり、人間の面白さを高めていくと『ガマシュ警部』のルイーズ・ペニーをはじめとしたコージー・ミステリーにつながっていくのかなと思っています。コージー・ミステリーには、小さな村を舞台に描いていくという傾向があり、マリス・ドメスティックが主催するクリスティーの名を冠した文学賞のアガサ賞にはいわゆるコージー・ミステリーのジャンルに分けられる作品がいつも選ばれています。イギリスのミステリーの源流をたどるとクリスティーに行き着くので、いまだに新作の作品紹介の際に、「クリスティー×○○」と言われがちです。「クリスティーの作品をいかにひねるか」という視点で書いている人が多いのは、今に限らず、ずっと続いていることですけれども。

長い歴史の中で流れの変化をみつめる

(吉)30 年代~40 年代にかけて本格ものは一番活気があった時代があったわけですが、50 年代~60 年代になるとゴリゴリのパズラーは廃れ、その代わりにコージー・ミステリーだったり、謎解き要素を含んだアクションだったり、どんでん返しのあるエスピオナージュ(スパイ小説)だったりと、本格っぽい要素を「裏にひそませた」作品が多く登場しました。そういう意味では、本格ミステリー自体は見えなくなっていたけれども、あらゆる作品の裏で「読者を驚かせてやろう」という本格風の意志は常にあったのかな、と。逆に、『名探偵ポワロ』のようなテレビドラマのミステリーの影響も大きかったと私は考えていて、探偵が登場して、お客さんを集めて種明かしを披露する、という古風な面白さは小説ではなくドラマの方で生きながらえてきたのだと思います。それを小説世界に復興させたのがおそらくホロヴィッツということになるんでしょう。

(井)流行りもの一つが出てくると、それに対応するかのような別の動きが出ることもまた事実でして。先ほどのお話にあった、伝統的な本格ミステリーの流れがある一方で、私が担当したクリス・ウィタカーのように、アメリカに強い憧れを持つイギリス在住の作家も登場し、国内外でも売れて CWA 賞でも評価される…ということもあります。体感として今イギリスで本格ミステリーの流れが来ている、と先ほど話していましたが、10 年後に振り返った時にどうなっているかは正直わかりません。後から考えてみると、この本格ミステリーの盛り上がりは傍流で、もっと大きな流れの一端がこの時に起こっていた…ということもあり得ます。まさに我々は、「最前線」にいるからこそ潮流を読みづらくなっているというところはあるかもしれませんね。

時差の良し悪し&真なる最前線 

(宮)翻訳というシステム上、どうしてもタイムラグが発生してしまいますから、日本で紹介するために準備している間に話題が出つくしてしまい、世相を反映した作品が時流からはずれてしまうということはあるかもしれません。ただこれは逆のパターンもあり得ます。作品理解に欠かせない知識がある程度社会に浸透したあとだからこそウケるということもありますので。

(吉)最前線という話でいうと、出版社などに囲い込まれずに一人で書いている作家が増えているのは間違いないですね。

(宮)セルフパブリッシングの環境がどんどん整ってきていて、例えば電子書籍などは、ちょっと勉強すれば自分で簡単に出せるようになったんですよね。

(秋)それは日本もですか?

(宮)日本でも可能ですね。ただ、日本の場合は小説投稿サイトがいくつもあってにぎわっているので、そこに投稿しよう、となりますが、海外ではまず自分で出版したものが世間に見つかって、そこから人気に火がついていく…ということが多いですね。

(井)犯罪ポッドキャストをやっていた人が小説を書いてそれが大人気になることもあります。

(吉)TikTok で本を紹介する人のことを「BookToker」と呼んだりするんですが、これも非常に盛んですね。彼らがブームを牽引している感じです。それまでほとんど注目されていなかった主婦の自費出版が、ある日突然数百万部売れる、みたいなことが本当に起こっているんですよ。

専門誌だからできることを 

(井)来年から弊社で発行している『ミステリマガジン』が季刊になることが決定しまして、3 か月に一回のペースでの刊行となります。ミステリー作品の最前線に寄り添っていくためにも、海外の短編ミステリーをどんどん紹介するべく山のように読み漁っている最中なんです。短編になると長編で書かれているものとは様相が全く異なりますし、日本では全く無名の、短編しか執筆していない作家が、海外では巨匠として賞賛されているケースもありますから、弊社ももっとその方面に力を入れていかなければならないと考えています。

(宮)短編の紹介が大変なのは、やっぱり書籍になっていない人が結構いるところだと思うんですが、最近だと電子書籍で出している人も増えてきましたし、発表媒体も雑誌に限らずウェブサイトに掲載する人も多いですから、作品を探しやすくはなっているかもしれません。

(井)SF はそういった動きへの順応がかなり早いですね。海外の投稿サイトも豊富ですし。

(宮)初出がオンラインの作品が大きな賞を受賞することも多いですね。

(井)そうですね。SF ではヒューゴ賞やローカス賞、ネビュラ賞といった名だたる賞をオンライン掲載の作品がとるということもありましたが、ようやくミステリーにもそうした動きが出始めたかな、くらいの感じです。ほかにもFacebook などのコミュニティには本当に各国のいろんな人が集まっているようで、そこでかなり熱心な情報交換が行われています。そこ以外でもインターネット上の情報共有のスピードはものすごく速いですし、日本で話題になった瞬間にそこで情報が共有され、それをいち早く目にした編集者が版権を求める(逆もまた然り)…という構図になっていくのかもしれません。「こういう小説が流行っているらしい」「じゃあこんな小説はどうだろう」という情報がどんどん蓄積されていきますし、まさに日進月歩の世界です。そのスピードに追いつきながら、我々も自分なりのものを見つけていくのが大事かな、と。…ただ、あまりそこにこだわりすぎないのも大事なんですよね(笑)。難しいんです、常に最前を追っていればいいわけでもないので。「これは日本でウケるだろうか」ということもしっかりと考えなくてはなりません。

(宮)その観点は間違いなく大切ですね。「最前線なのはわかるけど、たぶんウケないだろうな」というものはありますから。

【新刊・復刊】出版各社、今おすすめしたいミステリー小説紹介

ここからは各社から発売のミステリー小説をご紹介します!

●東京創元社

(宮)東京創元社からはまず、7 月に発売されたばかりの『白薔薇殺人事件』です。クリスティン・ペリンという作家が書いた、クリスティーの流れを継ぐ、小さな村が舞台の謎解きミステリです。主人公の大叔母は若いとき、占い師に「あなたは将来何者かに殺される。そしてそれは避けることができない」と未来を予知されます。絶対に回避できない死。犯人はおそらく村に住む誰かだろうと予測した大叔母は、せめてもの抵抗として村の人々の詳細な記録をつけることで、自分が殺された暁には誰かが遺志を継いで犯人を突き止めてほしいと願います。そして実際に予言通りに大叔母は殺され、発見者となった主人公は 60 年分の記録をもとに「誰が大叔母さんを殺したのか?」を推理する、というお話です。いわゆるクリスティーの「スモール・ヴィレッジもの」に、「予言」という新しいエッセンスを加えた非常によくできた作品で、おかげ様で評判も良く、順調な滑り出しです。


『白薔薇殺人事件』
著:クリスティン・ペリン 訳:上條ひろみ
出版社:東京創元社

(宮)8 月には『終着点』というイギリスのミステリが出ます。主な登場人物はふたりの女性。そのうちひとりがもうひとりに呼び出されて集合住宅の一室に行ってみると、「見知らぬ男に襲われ、身を守るために殺してしまった」と言われます。そのまま死体を隠すのを手伝うのですが、時間が経つにつれ「なんだかおかしいぞ」となってきます。「本当に彼女の説明通りのことが起きたのか?」と状況を怪しんでゆく……それと並行して、過去へとさかのぼる章も紡がれます。現在と過去が交互に語られ、一体何があったのかが少しずつ明らかになっていき、最後には驚きが待っている…という作品です。


『終着点』
著:エヴァ・ドーラン 訳:玉木 亭
出版社:東京創元社
2024年8月23日発売

(宮)そして 9 月にはホロヴィッツの最新作『死はすぐそばに』が出ます。ロンドンの門で周囲からへだてられた高級住宅街で、そこに越してきた新入りが殺されます。ほかの住民全員から嫌われていたため、誰が犯人でもおかしくない状況で、どうやって謎を解いていくのか…という、クリスティーを現代にアップデートするとこうなるのか、とうならざるをえない、非常に巧妙な設定の作品です。実は時系列では<ホーソーン&ホロヴィッツ>シリーズで最も古い事件なのです。


『死はすぐそばに』
著:アンソニー・ホロヴィッツ 訳:山田 蘭
出版社:東京創元社
2024年9月13日発売

(宮)最後に、R・J・エロリー15 年ぶりの翻訳となる『弟、去りし日に』が 9 月に発売されます。保安官の主人公はある日、長らく関係を断っていた弟の死を知らされます。どうやら何者かにひき殺されたらしい弟の忘れ形見である十歳の姪との交流を通して、弟の死の真相を突き止めるとともに、仲違いしたあとの弟がどうやって生きてきたのかを知っていくという物語です。兄弟の絆、おじさんと姪の交流による家族の再生…。好きな人は絶対に多いとおすすめできる作品ですので、どうぞよろしくお願いいたします。


『弟、去りし日に』
著:R・J・エロリー 訳:吉野弘人
出版社:東京創元社
2024年9月27日発売

●早川書房 

(井)早川書房からはまずは 7 月に刊行された『モルグ館の客人』をご紹介させてください。先ほども名前が挙がったマーティン・エドワーズによる<レイチェル・サヴァナク>シリーズの最新作になります。なかなか館にたどり着かない珍しい「館もの」ミステリーなのですが、最後には館の客人全員を前にして探偵が謎解きを披露するシーンもあり、巻末には「手がかり探り」というどこに伏線があったのかをまとめた資料もついていて、いわゆる黄金期の本格ミステリーにリスペクトを捧げた作品となっています。ちょっと怪しげな名探偵レイチェル・サヴァナクとその相棒である新聞記者のジェイコブ・フリントの前に犯罪学者を名乗るレオノーラという女性が現れます。完全犯罪を成し遂げて罪を不当に逃れた人物たちを集めて館でパーティを開くという彼女の誘いを受けて参加したところ、そこで連続殺人が起きて…というトラディショナルな本格ミステリーですので、ミステリーチャンネルの視聴者さんにはきっと気に入っていただけると思います。


『モルグ館の客人』
著:マーティン・エドワーズ 訳:加賀山 卓朗
出版社:早川書房

(井)8 月には、陸秋槎さんのハードボイルドミステリーで、ロス・マクドナルドにオマージュを捧げた『喪服の似合う少女』が出ます。舞台劇『喪服の似合うエレクトラ』のオマージュ作品となります。ロス・マクドナルド、サラ・パレツキー、結城昌治さんを読んで書き上げたゴリゴリのハードボイルドとなっておりますので、楽しみにしていただけたらと。


『喪服の似合う少女』
著:陸 秋槎 訳:大久保 洋子
出版社:早川書房

(井)あと同じく 8 月に、M・W・クレイヴンの<刑事ワシントン・ポー>シリーズの最新作『ボタニストの殺人』が出ます。ボタニストと名乗る連続殺人鬼との戦いになるんですけれども、壁をすり抜ける毒殺魔が密室状態の人間を手にかけていくという事件と同時並行して、ポーの同僚の病理学者が逮捕されてしまう事件が発生します。そちらの事件では雪が降り積もる現場にはその病理学者の足跡しか残っていない、という「雪密室」の状態で、果たしてこの二つの密室殺人にポーはどう立ち向かっていくのか…?という不可能犯罪ものとなっています。シリーズ第 5 弾となる今作では、登場人物の人間関係にも大きな変化が訪れますので、ぜひチェックしていただけたらと思います。


『ボタニストの殺人』
著:M・W・クレイヴン 訳:東野 さやか
出版社:早川書房

(井)9 月には今年イチオシの『ターングラス-鏡映しの殺人』も発売されます。舞台は 1880 年代のエセックス。孤島にあるターングラスと呼ばれる館の、ガラスで仕切られた一室に軟禁された女性が登場します。かつて人を殺したから、という理由で彼女を軟禁する叔父に呼ばれた医者は、その叔父から相談を持ち掛けられます。「あの女は俺を殺そうとしている」。そう口にした叔父はその後本当に死んでしまいます。しかし、ガラスで仕切られた部屋から女性が出られるわけもなく、しかも彼女が大切に持っていた『ターングラス』という本には、1930 年代、つまり未来の話が書かれていました。実はこれが、本をひっくり返して裏から読み始める 1930 年代アメリカの物語と一致する…という構成になっています。1930 年代アメリカでは、カリフォルニアで一人の推理作家が謎の死を遂げます。彼の死の真相は、直前まで書いていた本に隠されているはずだと紐解いていくと、それは 1880 年代エセックスで起きた毒殺事件を描いていて…という、お互いの出来事が本として登場して、それぞれの存在が伏線となって読み進めていくことで謎が解き明かされていくという少し不思議なつくりとなっています。ちゃんと原書通りに裏と表から読み始めることができるよう製本を進めています。あとは、まだ時期が少し先になりますが、アンドリュー・クラヴァンのクリスマス作品と、MWA賞をとったジェームズ・リーバークの作品も発売予定ですので、こちらも楽しみにお待ちいただければ。

●扶桑社 

(吉)まずはミステリーとは関係のない話を先にしますが、某配信サービスのドラマで話題沸騰の『将軍』の原作本を6~7月に復刊いたしました。ドラマの方は9月のエミー賞の結果がとても楽しみですね。それに合わせてたくさん並べられるといいなあという感じです。単行本全4巻の大ボリュームですが、ドラマに負けないくらいめちゃくちゃ面白いのでぜひ読んでみてほしいです。


『将軍(1-4)』
著:ジェームズ・クラベル 訳:宮川 一郎 監修:網淵 謙錠
出版社:扶桑社

(吉)ミステリーの方は、レギュラーで出版しているトム・クランシーのシリーズだったり、クライヴ・カッスラーのシリーズだったりも順番に出てくるんですけれども、単発ではスウェーデンの作家アンデシュ・デ・ラ・モッツの『山の王』が9月に出ます。本国でベストセラー1位にもなった小説で、<迷宮入り事件簿>シリーズの第一作としてうちで出してみようという運びとなりました。ジャンルとしては警察小説なんですけれど、連続殺人鬼が登場する北欧独特の雰囲気が漂うミステリーに仕上がっています。

あとは8月に、久しぶりに『5分間ミステリー』を復刊いたします。それと合わせて『新5分間ミステリー』も復刊します!さらに 11 月には、この春から出している『1 分間ミステリー』の続編である『新 1 分間ミステリー』も出ます。本書に収録されている作品は、実は 1930 年代の新聞で連載していたミステリークイズなんですね。フォーマットとしてはホームズものの短編と変わらないんです。読んでいる方にはなかなか気づかれにくいところではありますが、実は 1930 年代当時の本格ミステリー黄金期の一角を担ってきた作品だということをミステリーファンの方にはぜひ知っていただきたいですね。たとえ毎回「書斎で男が殺されている」からスタートしているとしてもですね(笑)、それは毎日違う読者が読んでいたからだということを知っていただければと。「人が死ぬ」ということをゲームとして楽しむカルチャーの一角の中に、新聞に毎日掲載されていたミステリークイズがあり、その流れの中で面白い短編小説が生まれてきたのだ、という角度からマニアの方はぜひ楽しんでいただけたらと。マニアじゃない方は普通にクイズとして楽しんでいただければ幸いです。


『新5分間ミステリー』
著:ケン・ウェバー 訳:片岡 しのぶ ほか
出版社:扶桑社
発売日:2024年9月3日

(吉)あと弊社で発売を控えている作品としては、CWAのヒストリカル・ダガー 賞を受賞した『ヴァイパーズ・ドリーム』があります。1930~60年代の激動の時代を舞台にしたミステリーではあるんですが、ジャズをテーマに置いた音楽小説としての要素も強い作品に仕上がっています。ミステリーの読者はもちろん、ジャズが好き、音楽が好きという入り口から入った人も非常に楽しめると思います。さらにもう少し先になりますが、スティーヴン・ハンターの中編集が出ます。おじいちゃん、お父さん、息子の三世代の物語を上・中・下の三巻で、おそらく今年中には出せるかなという感じです。お楽しみに!

【クリスティー最新作ほか】ミステリーチャンネルおすすめ作品をご紹介!

(秋)小説界においてもクリスティーが源流であるというお話がありましたが、ドラマでもクリスティー作品はいつの時代においても人気です。10 月、ミステリーチャンネルでは『マーロー殺人倶楽部の事件簿』を独占日本初放送します。この作品は、大人気シリーズ『ミステリー in パラダイス』のクリエイター、ロバート・ソログッドの同名ベストセラー小説を映像化した作品で、ソログッドは、英メディアに「アガサ・クリスティー風の物語」を書くことに注力していると語っており、『ミステリー in パラダイス』の主人公がポワロだとすれば、この新シリーズはマープルへの挑戦であると語っています。

『マーロー殺人倶楽部の事件簿(全2話)』ミステリーチャンネルで10/6(日)夕方4:00 独占日本初放送
© Monumental Television 2024 All Rights Reserved. Licensed by ITV Studios Ltd.

(秋)イギリスの、特に大手メディアは、社会情勢を編成に反映させる必要もありますし、かつ、専門チャンネルではないので特定の人たちに向けた偏った編成ではなく、いろいろな属性の人たち向けて、様々な番組を展開していく必要があるため、ここ最近、イギリスといえども、”クリスティー的なるもの”が減少していましたが、本作を放送したところ異例の大ヒットをしました。『マーロー殺人倶楽部の事件簿』という古式ゆかしいミステリー作品の大ヒットは、あらためて、<映像業界もやはりクリスティーがいつも求められている>ということのあらわれではないかと感じました。そう世界中が、やっぱり Everybody loves Christie!なのだと感じました。

また、12 月には先ほども出ていたクリスティー最新作『殺人は容易だ』も放送予定!どうぞお楽しみに。

最後に

「特集もっと楽しむミステリー!」第6弾となる今回は、海外ミステリーの“今”に焦点を当てた非常に密度の濃い座談会となりました。ドラマの世界においても文学の世界においても、時代の変化に合わせて巻き起こるムーブメントが次々に変わる中、世界の変化や流行に遅れることなく、それでいて自国で作品を待つファンの関心をしっかりとおさえておくというのは並大抵のことでは達成できません。SNS の普及に伴って、個人が世界のトレンドを知る方法も細分化されていく中、プロフェッショナルの方々がこれ!とオススメしてくれる作品に対する信頼性はより高まっている気もします。今回の座談会の中では既刊・新刊・復刊と数多くの小説の名前が挙がりました。今後放送を控えるドラマの話題では、クリスティーへのリスペクトを感じられる新作骨太ミステリーも登場しましたね。ぜひ一つでも心に残る作品と巡り会えたなら嬉しいです。

(文:うりまる)

特集「もっと楽しむミステリー!」では、プレゼントキャンペーンも実施中です。ミステリーのスペシャリスト厳選のおすすめミステリー作品をプレゼント!

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世界各国の上質なドラマをお届けする日本唯一のミステリー専門チャンネル。「名探偵ポワロ」「ミス・マープル」「シャーロック・ホームズの冒険」「ヴェラ~信念の女警部~」など英国の本格ミステリーをはじめ、「アストリッドとラファエル文書係の事件録」などのヨーロッパの話題作や「刑事コロンボ」といった名作、人気小説が原作の日本のミステリーまで、選りすぐりのドラマが集結!ここでしか見られない独占放送の最新作も続々オンエア!

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うりまる
2017年ごろから海外ドラマ・映画について執筆中。ミステリー作品ならなんでも好きですが、特にまったりとした(COZYな)ミステリーが好きです。