Drama Column from ENGLAND

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高野裕子yuko takano ロンドン在住ライター

ブリティッシュ・ロックに感化され、80年代大不況の英国に移り住む。以後イギリスの音楽、映画、現代美術についてCUT、アエラ、キネマ旬報、PEN、装苑、FLIX、フィガロ、クレア、GQ、ロッキング・オン、ミュージック・マガジン、ローリング・ストーン・ジャパン、日経エンタテイメント!、流行通信、宝島、などで執筆。NHKラジオFMホットラインのロンドン・レポートなどラジオ・レポーターやテレビのインタビュアーなども手がける。
小学生のころホームズとルパンで推理小説に目覚め、現在はスカンジナビアのテレビ・スリラーと推理小説に熱中。
CWA(英国推理作家協会)賞受賞の作家特集

CWAとは?
 シャーロック・ホームズやアガサ・クリスティの国イギリスでは、推理小説は文学のジャンルとして長い間確立された分野だ。イギリスには70ほどの大小文学賞があるが、その中でも推理小説の賞CWA(Crime Writers' Association)賞は、多くの人気推理作家を世界に送り出す登竜門として重要な役割を果たしてきた、60年近い歴史を持つ文学賞だ。



 CWA(Crime Writers' Association)英国推理作家協会は、1953年人気推理作家ジョン・クリーシイが設立した、推理小説を出版したことのある作家なら誰もが加入できる協会だ。その目的は作家同士の交流を促し、年間賞を設けることで推理小説の伝播を推進し、イベントや作家クラスの後援や援助することなど。そしてこの協会が主催するのが、CWA賞ということになる。現在は10の部門からなっており、ゴールド・ダガー賞は最優秀長編に与えられる賞。他にイギリス以外の国で出版された英語作品に送られる賞やスリラー賞、歴史ミステリー賞、新人賞、短編賞、生涯の功績の賞などからなっている。 2000年あたりからイギリスでは出版が右肩あがりで、新しい文学賞がいくつか設立された。CWA賞は2008年以後、新しいCrime Thriller Awardsという映画やテレビなど映像媒体を対象にした賞と共同授賞式を行うようになり、これはITVテレビで毎年放送されるようになった。ともすればきな臭かった文学賞だが、最近の文学賞はセレブなども招待し華麗な催しとして再生、イメージ・アップされたのは興味深い。現在CWA賞には宝石のカルティエがスポンサーについており、2011年の授賞式は、名門サヴォイ・ホテル(新装開店)でシャンペンを振る舞い華やかに行われた。歴史的に見れば、CWA賞とアメリカのアメリカ探偵作家クラブ賞=MWA賞(Mystery Writers Of America)は、英語圏の中では世界で最も古く権威のある推理小説の2大賞と言える。

 さてCWA賞を受賞した作品の多くは、ベストセラーになるばかりでなく、その多くがテレビ化されお茶の間の人気番組となる。最たる例が、現在のイギリス推理作家の最高峰、一番の人気を誇るP.D.ジェイムズだろう。CWA賞には過去4回ノミネートされ、2度受賞。他に米MWA賞も受賞しており、91歳で現役の彼女の作品は世界中で愛読されている。イギリスでは『アダム・ダルグリッシュ警視』シリーズなど13本がテレビ化されており、他『人類の子供たち』が『トゥマロー・ワールド』としてクライヴ・オーエン主演で長編映画化されたのが気憶に新しい。

 CWAの設立者であるジョン・クリーシイと同様、P.D.ジェイムズは貧しい家庭の出身で、逆境にも関わらず努力で作家の道を開いた。結婚後家計を助けるため執筆をはじめ、後は2次大戦で負傷した夫を40代で失い家族を支えるために役所勤めしながら小説を執筆した。彼女の作品は法律、医療、教会などの世界の矛盾や腐敗、疑惑といったテーマがたびたび登場するが、それは彼女が実際に身をもって体験したり観たりした事実が色濃く反映され、それが作品の最大の強みであり魅力だ。

 2006年にCWAのゴールド・ダガー賞を『Raven Black』で受賞したアン・クリーヴス。80年代から活動しているがCWA受賞で、一気に知名度があがった。彼女は4つの推理小説のシリーズを手掛けており、その中のひとつ女性警部ヴェラ・スタンホープのシリーズ『ヴェラ~信念の女警部~』が去年5月にイギリスで映像化され人気をさらった。ヴェラを演じるブレンダ・ブレシンは社会派英国映画監督マイク・リーの映画でアカデミー賞にノミネートされたこともある名優で、労働者階級の中年女性を演じさせたら右に出る者がいない。真実味のある彼女の熱演が大反響で、現在『ヴェラ~信念の女警部~』のシーズン2が制作進行中だ。

 もう一人CWAに5回もノミネートされた(3度受賞)女性推理作家といえばミネット・ウォルターズ。デビュー作である『氷の家』はCWAの新人賞を受賞したばかりでなく、BBCが即座にテレビ化した。なんとその時の主演は、今や007のジェームズ・ボンド役で人気のダニエル・クレイグ!また『女彫刻家』をはじめ初期5作品はCWA賞以外にアメリカでの賞も受賞。10年の間にその全てがテレビ化さたから驚きだ。彼女の作品には毎回異なる主人公が登場する。現代社会の孤独や疎外感、家庭崩壊などがテーマで、多くの場合実在する場所を背景に実際に起こった事件を織り込んだりするのも手法的な特徴だ。多くの人に馴染みのある現実の世界を挿入することで、読者や視聴者の好奇心をぐいぐいと引く、その誘因力は大。その点はP.D.ジェイムズとも共通するが、彼女の場合より現代的社会色が強いのが特徴だ。ここで紹介した3人の他にも、実力ある英国女性推理作家は多い。多くの作品は文学的なレベルが高いと同時に、娯楽性も大。それが彼女たちの小説が頻繁にテレビ化される秘密だろう。
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