2024/03/22

【偉人にも名もなき人物にも発見がある!】ワクワクが止まらない歴史ミステリ―小説おすすめ28選

歴史ミステリーとは、歴史上で解明されていない謎がからんだ事件を現存する資料などから解きほぐし、事件を解決するミステリー小説のジャンルのひとつです。時代背景や設定に歴史の解釈が絡み事件や歴史を“当時の人間”が謎解きをするもの、現代の人間が歴史の謎を追っていく“安楽椅子”ものなどタイプは様々です。ミステリーと歴史の“ロマン”が楽しめる日本、海外の歴史ミステリー小説をご紹介します。

歴史ミステリー小説の魅力とは?

歴史上の偉人たちだけでなく、名もなき人物にフィーチャーし、彼らが向き合った戦いや事件、出来事、葛藤や秘められた思いなどが描かれる歴史ミステリー小説。意外な真相や一面を知り、よりその人物に惹かれることも。思いもよらない説や推理劇に「もしかしたら、こんな歴史になった可能性もあったかも……」とワクワクできるのも、歴史ミステリー小説の魅力です。

絶対読んでおきたい歴史ステリー小説おすすめ28選

六の宮の姫君

北村薫(著)
出版社(レーベル):東京創元社

主人公は最終学年を迎えた〈私〉。卒論のテーマ「芥川龍之介」を掘り下げていくかたわら、出版社で初めてのアルバイトを経験。その縁で、図らずも文壇の長老から芥川の謎めいた言葉を聞くことに。王朝物の短編「六の宮の姫君」に寄せられた言辞を巡り、円紫師匠の教えを乞いつつ、浩瀚な書物を旅する〈私〉なりの探偵行が始まる。

芥川龍之介、菊池寛など、有名な作家の著書や手紙から「六の宮の姫君」の謎を解いていきます。彼らにも若い時代があり、リアルに生きていたんだなと感じられる一冊。芥川、菊池はもちろん、有名日本作家の文学作品は読んでおこうかなと読書欲が広がる作品です。

義経幻殺録

井沢元彦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

時は大正十年春、舞台は中国・上海。新進作家・芥川龍之介は、源義経"清朝の祖"説を証明するという秘本を求め、上陸。ロシア・ロマノフ王家の秘宝・ペテルブルグの星の行方は?清国再興をもくろむ日本陸軍の黒幕とは?連続殺人と歴史の謎に挑戦する芥川探偵の名推理が展開!

義経の謎としてテーマに挙がる“ジンギスカン説”とはひと味違うのが本作の魅力。源義経が中国に渡る…という有名な説から「義経清朝の祖」説を証明する秘本を求め、探偵・芥川龍之介が上海に上陸し義経伝説を追うストーリー。ロマノフ王朝の秘宝や殺人事件、盗難事件なども絡みミステリー展開もモリモリ。第1弾の『猿丸幻視行』もぜひ!

タイムスリップ森鴎外

鯨統一郎(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

何者かに殺されかけ、大正11年から現代の渋谷にタイムスリップしてしまった明治の文豪・森鴎外。道玄坂で若者に袋叩きにされているところを女子高生・うららに助けられる。彼女の友人達の助けを借り、元の世界に帰る方法を探るうちに、文学史上の大疑問に突き当たり、鴎外を狙う意外な犯人の名が浮かぶ。

明治の文豪が平成の世にタイムスリップ。カルチャーショックがありながらも異文化に順応していく鴎外の姿に「もし、この時代に鴎外がいたら…」などとウキウキする一方で、タイムスリップしたきっかけとなる鴎外を殺そうとした犯人を探すというミステリー要素もたっぷり。森鴎外を皮切りに、現代から過去にタイムスリップするなど、「タイムスリップシリーズ」では様々なタイムスリップが楽しめます。

アーサー王の墓所の夢

アリアナ・フランクリン(著) 吉澤康子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

1154年、グラストンベリー一帯を襲った地震の直後、ひとりの老修道士が息を引き取った。アーサー王の埋葬を見たと甥に言い残して。月日は流れ1176年、話を聞きつけたイングランド国王ヘンリー二世の命により、町ごと大火で焼失した大修道院の墓地から、二体の骨が掘り出される。遺骨は伝説のアーサー王とその妃グウィネヴィアのものなのか?住み慣れたケンブリッジを追われた女医アデリアは国王の依頼により、供を連れ骨の鑑定に赴くが、その途上で友人エマの身に異変が起きたことを知る。

謎解きの面白さはもちろん、女医のアデリアを取り巻く人々の描写がとても魅力的なので、ヒューマンドラマとしても読み応えあり。中世が舞台の医療ミステリーのような楽しみ方もできます。すぐに次が読みたくなる、続編への伏線のようなラストシーンにも注目です。

写楽殺人事件

高橋克彦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

謎の絵師といわれた東洲斎写楽は、一体何者だったのか。後世の美術史家はこの謎に没頭する。大学助手の津田も、ふとしたことからヒントを得て写楽の実体に肉迫。そして、ある結論にたどりつくのだが、現実の世界では彼の周辺に連続殺人が起きていて……。

素性についてはほとんど知られておらず、実質10ヶ月程度しか活動していない日本美術史上最大の謎、“写楽”が何者かにどんどん迫っていきます。写楽を取り巻く江戸時代の浮世絵文化に興味が湧く一冊です。横浜流星主演の2025年大河ドラマの主人公、江戸のメディア王・蔦屋重三郎が生み出したスター絵師のひとり、写楽の“あったかもしれない一面”を知るのにもおすすめ。第29回江戸川乱歩賞受賞の本格ミステリーです。

相棒

五十嵐貴久(著)
出版社(レーベル):PHP文芸文庫

時は幕末、京の都。大政奉還を目前に控え、徳川慶喜暗殺未遂事件が起こった。幕閣から犯人探索の密命を受けたのは、坂本龍馬と新選組副長の土方歳三。しかし、二人に与えられた時間は、わずか二日間。いがみ合い、衝突しながら捜査を続ける二人が最後に行きついた人物とは?そして龍馬暗殺の真相を知った土方は?

歴史上の人物の中でも人気の高い坂本と土方がコンビを組んだら……。ありえないと思いながらも歴史好きの「もしも……」の心をくすぐりまくる設定だけでなく、ストーリーも面白いのがポイント。時代設定も丁寧で信じたくなるようなワクワクに駆られます。幕末維新オールキャストで贈る豪華歴史ミステリー。エンタメ色も濃いめで、入門編としてもGOOD!

徳川埋蔵金はここにある -歴史はバーで作られる 2-

鯨統一郎(著)
出版社(レーベル):双葉社
©️ 鯨統一郎/双葉社

大学で歴史を学ぶ安田学が気鋭の歴史学者・喜多川教授と通う場末のバー。ここで美人バーテンダーのミサキと歴史学者を自称する村木老人と歴史談義を繰り広げる。「竜とドラゴンの違い」から「天草四郎の正体」そして、「徳川埋蔵金」のありかまで、歴史の新事実が披露される!

『歴史はバーで作られる』シリーズの第2弾。4つの連作短編集であること、またバーでお酒を片手にバーテンダーと歴史学者とその弟子・安田くんが繰り広げる歴史談義なので気楽にサクサク読めます。安田くんの語り口は好みが分かれそうですが、苦手かなと思った方はバーでたまたま居合わせたくらいにとらえると気にならないかも(笑)。

鷹の城~定廻り同心 新九郎、時を超える~

山本巧次(著)
出版社(レーベル):光文社文庫

激動の戦国を経た安土桃山時代の天正六年。織田信長配下の羽柴秀吉は東播磨の城を攻めようとしていた。一方、江戸南町奉行所の同心・瀬波新九郎は下手人を追うなか、崖から転落し、なんと天正時代にタイムスリップしてしまう。気づけば、新九郎の目の前には甲冑をまとった戦国の武士たちが現れ、そして事件が起きた。そこから始まる壮大すぎる物語とは。

同心・新九郎シリーズ1巻目。見どころは家来たちとの狐と狸の化かし合いと新九郎と奈津姫との恋。さらに新九郎が戦国時代の播磨に飛ばされたことへの仕掛けにも面白さあり。江戸から戦国へ。着物にちょんまげと見た目もそれほど変わらない時代ですが、時の差は200年。時代のギャップも楽しめます。

ごきげんいかが、ワトスン博士(上)

キャロル・ネルソン・ダグラス(著) 日暮雅通(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

1889年夏。アイリーン・アドラーと親友のペネロピーは、パリで意識を失った男性を助ける。彼はペネロピーが家庭教師をしていたときの知人・クウェンティン。彼はかつて戦場で助けられた軍医に迫る危機を知らせるため、危険を承知で彼を捜しているというのだ。軍医の名はワトスン。アイリーンたちはアフガニスタンに端を発する事件をめぐり、名探偵ホームズとまたもや相まみえる!

主人公はアイリーン・アドラー。タイトルに“ワトスン”とありますが、登場自体はそれほどありません。しかし、パリ近郊に始まり、パリ、そしてロンドン・ベイカーストリート221B番地という流れがあるだけでも、ホームズ好きの心をくすぐります。注目描写はアイリーンのファッション。華やかな宝飾について細かく描かれているので、楽しい絵が想像できます。

チャーチル閣下の秘書

スーザン・イーリア・マクニール(著) 圷香織(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

アメリカで育ったマギーが、ロンドンで暮らしはじめて1年余り。その間、この国はナチス・ドイツと開戦し、チャーチルが首相になり、そして今、空襲の時が迫っていた。そんな折、舞い込んできたのは数学の能力を活かせる秘書官ではなく秘書としてのオファー。女性にタイプとファイリングしか任せようとしないこの国に苛立ちを感じながらも、その誘いを受け入れるマギーは、官邸を取り巻くいくつもの謀略が待ち構えていることなど知るはずもなくーー。

表紙からは想像できないハラハラさと緊張感に満ちた歴史ミステリー。見どころは、目の前を通り過ぎていく気になる機密情報を見過ごせず、体当たりで陰謀に挑む才気煥発なマギー。探偵やスパイ的な要素、そしてどんでん返しもあり。時代の空気感はちょっと重めですが、応援したくなるキャラクター、マギーの存在が爽やかさをプラスしています。

エジンバラの古い柩

アランナ・ナイト(著) 法村里絵(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

エジンバラ城の崖下で男の遺体が発見された。捜査を始めたファロ警部補は、現場付近で男性の肖像が描かれたカメオを拾う。さらに父の遺品から、ある事件の記録と、現場で発見したものと対のメアリー女王のカメオを見つけ……。

エジンバラ市警の警部補ファロが主人公のシリーズ第2弾。相棒は義理の息子で新米医師のヴィンスです。第1弾ではミステリー×ロマンスのストーリー展開、第2弾となる本作では、国家的陰謀が絡むサスペンス色濃いめの物語が描かれます。33年前のファロの父の真相から300年間エジンバラ城内に葬られていた歴史の闇まで緻密にそして意外性を持って描き出します。

豊臣探偵奇譚

獅子宮敏彦(著)
出版社(レーベル):早川書房

豊臣秀吉の弟・大和大納言の養子として、13歳で当主となった豊臣秀保。権力から距離をおき、書物で魔物の奇譚等に親しむ秀保だが、本当の怪異が襲い来て……。少し気弱だが頭脳明晰な少年・豊臣秀保と、強く美しい散楽芸の娘・日魅火は、魔性や災厄など超常的に見える事象を解明してゆく!

ちょっぴりダメダメな秀保が謎を解き、大名としての自覚が芽生えていく中で、避けられない運命へとたどり着いていきます。2026年の大河ドラマ『豊臣兄弟!』は仲野太賀演じる豊臣秀吉の弟で秀保の兄、秀長が主役。豊臣秀吉の兄弟、読んでおけば大河ドラマが違う角度からも楽しめるかもしれません。

蝶として死す 平家物語推理抄

羽生飛鳥(著)
出版社(レーベル):東京創元社

一一八三年、源氏の木曾義仲軍が平家を破って都入りした。しかし、平頼盛は異母兄・清盛に疎まれていたため、都落ちした一門と決別し、都に留まっていた。そんな頼盛が、義仲に「首がない五つの屍から恩人を特定してほしい」と依頼され、難題に挑むことになるが……。

なぜ惨殺されたのか?高倉天皇の庇護下にあったはずの寵姫は、どのようにして毒を盛られたのか?源平合戦の時代を舞台に、推理力を武器に生き抜いた平頼盛の生涯を全5編で描く歴史ミステリー連作集です。探偵・頼盛への依頼元が清盛、天皇、木曾義仲、源頼朝、北条時政と超豪華。謎解き、歴史背景、頼盛の生き様が堪能できる一冊。

サムライ・シェリフ

戸南浩平(著)
出版社(レーベル):早川書房

明治11年、凶悪な拳銃使いモーガンが米国から日本に逃亡してきた。同心から横浜の刑事へと転身した三崎蓮十郎は、モーガンの行方を探ることになる。しかしその背後には、三崎の亡き父が追い求めていた猟奇殺人犯の影が……。

アメリカから逃げてきた凶悪犯を元同心の刑事が追うという設定、時代遅れの刀VS早撃ちガンマンの対決もユニーク(派手派手しくなく、ちょっと控えめなのもGOOD)。舞台となる開国後の横浜の空気感、エンディングの雰囲気もよき。殺人事件の絡む重いストーリーながら、スピーディーな展開でサクサク読み進められます。

ヴェルサイユ宮の聖殺人

宮園ありあ(著)
出版社(レーベル):早川書房

王妃マリー=アントワネットの元総女官長マリー=アメリーは、ヴェルサイユ宮殿の施錠された自室で刺殺体に遭遇する。そして、傍らに意識を失くして横たわっていたのは戦場帰りの陸軍大尉ボーフランシュだった……。18世紀ブルボン王朝終焉目前のパリ。公妃マリー=アメリーと大尉ボーフランシュが密室と血文字に彩られた謎多き殺人事件に挑む!

日本発の作品ですが、海外のそれを読んでいるような感覚に。最初は反発しあっていたマリー=アメリーとボーフランシュがバディとして信頼関係を築いていく過程、華やかなヴェルサイユ、貴族の生活、音楽や芸術なども楽しめます。単行本も文庫も書影が美しい!

箸墓幻想

内田康夫(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

邪馬台国の研究に生涯を費やした考古学者・小池拓郎が殺される。浅見光彦は小池が寄宿していた当麻寺の住職から事件解決を依頼され、早春の大和路へ。小池の部屋に残されていた古い写真と一通の女性からの手紙を手掛かりに事件の真相を追う浅見がたどり着いた驚愕の真相とは?

邪馬台国、古墳、卑弥呼というキーワードだけでもロマンを感じる方は多いのではないでしょうか。考古学の知識もたっぷりと盛り込まれ、読み応え十分。最後まで犯人が分からないミステリー展開にも引き込まれていきます。注目ポイントは浅見光彦安定の推理力と、相変わらずのモテっぷり。犯人が分からないなぁと思っても、浅見光彦が解決してくれるという安心感ありで読み進められます。

遺跡発掘師は笑わない ほうらいの海翡翠

桑原水菜(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

西原無量は、天才的な若き遺跡発掘師。古墳での発掘調査中、幼なじみの相良忍と再会するが、その夜、発掘を主導していた教授が死体で発見される。その死には無量が発見した“ほうらいの海翡翠”が大きく関わっているらしい……。

遺跡、発掘という単語だけでワクワクのミステリー展開を期待。ちょっぴりオカルト的な味付けもありつつ、考古学の専門的な説明や描写は魅力的。遺跡発掘の素人的登場人物に説明してくれる体で展開する遺跡発掘初心者にも優しい構成。トリビアがたっぷりで“知った気”になれるのがうれしい!

天使と悪魔

ダン・ブラウン(著) 越前敏弥(訳)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

ハーヴァード大の図像学者ラングドンはスイスの科学研究所長から電話を受け、ある紋章についての説明を求められる。それは16世紀に創設された科学者たちの秘密結社“イルミナティ”の伝説の紋章だった。紋章は男の死体の胸に焼き印として押されていたのだという。殺された男は、最近極秘のうちに反物質の大量生成に成功した科学者だった。反物質はすでに殺人者に盗まれ、密かにヴァチカンに持ち込まれていたーー。

上・中・下の3巻で展開する壮大なミステリー。ヴァチカン、十字軍、イルミナティなど、馴染みがないながらもよく聞くワードでなんとなく意味を知っているものも、謎を絡めた小説として読むことによりグッと理解が深まります。ヨーロッパの歴史、美術史も学べます。

新装版 猿丸幻視行

井沢元彦(著)
出版社(レーベル):講談社文庫

奥山に紅葉踏み分け鳴く鹿の声聞くときぞ秋は悲しき。百人一首にも登場する伝説の歌人、猿丸大夫が詠んだ歌に秘められた謎。そして“いろは歌”に隠された1000年の暗号とは。友人の不可解な死に遭遇した、後の民俗学の巨人・折口信夫の若き日の推理が、歴史の深い闇をあぶりだす!

民俗学を専攻する大学院生が孤高の天才民俗学者・折口信夫の推理を追体験するというSF味のある歴史ミステリー。折口信夫の推理とは、万葉の天才歌人・柿本人麻呂と謎の歌人・猿丸大夫の正体、そして「いろは歌」に隠された暗号に挑むこと。暗号解読に少々難しさを感じつつも、恋愛要素もあり、軽快にページがめくれます。

邪馬台国はどこですか?

鯨統一郎(著)
出版社(レーベル):東京創元社

カウンター席だけのバーに客が三人。三谷敦彦教授と助手の早乙女静香、そして在野の研究家らしき宮田六郎。宮田の爆弾発言を契機に始まった歴史検証バトルは、回を追うごとに熱を帯びて……。

ブッダの悟り、邪馬台国の比定地、聖徳太子の正体、光秀謀叛の動機、明治維新の黒幕、イエスの復活をテーマに激しい論争を繰り広げるバーが舞台。奇想天外、突飛な説も気にならない、「そんなはずはない!」とツッコミを入れたくなるけれど、真偽のほどはどうであれ、どんな結論に落ち着くのかワクワクしながら歴史にロマンを感じる一冊。

しゃばけ

畠中恵(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

江戸有数の薬種問屋の一粒種・一太郎は、めっぽう体が弱く外出もままならない。ところが目を盗んで出かけた夜に人殺しを目撃。以来、猟奇的殺人事件が続き、一太郎は家族同様の妖怪と解決に乗り出すことに。若だんなの周囲は、なぜか犬神、白沢、鳴家など妖怪だらけ。その矢先、犯人の刃が一太郎を襲う……。

事件解決はもちろん、登場人物のセリフや動きがとても魅力的。普通の江戸の生活と妖たちの世界も堪能できます。江戸という時代もあって、ほろりと人情ものとして楽しめるのもポイント。笑ったり、泣いたり、考えさせられたり。いろいろな感情が動く愉快で不思議な大江戸人情推理帖。表紙もかわいいので集めたくなります!

麒麟の舌を持つ男

田中経一(著)
出版社(レーベル):幻冬舎

70年の時を超え、謎に包まれた幻のレシピが甦る-。「満漢全席」に拮抗する「大日本帝国食菜全席」とは一体何なのか。死を目前にした人にかつて食べた最上の味を完璧に再現する“最期の料理請負人”が挑む、料理ミステリー。

戦時中の天才宮廷料理人の直太朗と、現代に生きる「最期の料理請負人」佐々木の物語を交互に描き、次々と明らかになる真実、レシピに隠された本当の意味に涙がこみ上げるミステリー。「麒麟の舌」の歴史に翻弄された料理人とレシピをめぐるロマン溢れる壮大な物語のラストは爽やかな読後感を残します。

女信長

佐藤賢一(著)
出版社(レーベル):新潮文庫

群雄を次々と打ち破り、覇王となった織田信長。だが“彼”には大いなる秘密があった。女に生れるも、父にその才を見込まれ、嫡男として育てられたのだ。知るのは近親と臣下のごく一部のみ。大胆な人材登用、新たな戦法の採用、楽市楽座、それらは全て女ならではの発想によるもの。猛将・知将との隠された恋、そして本能寺の真相とは。

信長が女性だったという設定で、斎藤道三、前田勝家、浅井長政、明智光秀、豊臣秀吉、徳川家康ら、おなじみの天下の名将が続々と登場し、さまざまな説のある「本能寺の変」の真相までも描く物語。男女逆転で描くのではなく、信長だけが女性という設定。そこに違和感を感じないのは、史実との関連づけの巧さ。天下の名将、女性に弱かったのかなとクスっとできる箇所も散りばめられています。

ばけもの好む中将 平安不思議めぐり

瀬川貴次(著)
出版社(レーベル):集英社文庫

中流貴族の宗孝は、怪異を愛する変人と名高い名門貴族・宣能に気に入られてしまい、彼と共に鬼の正体を追うことに。結局、人の仕業と分かるのだが、その後も続く怪異の裏には、とある陰謀が隠されていて……。

平安時代に関する知識がなくてもサクサク読めるのは、舞台を平安にした日常ミステリーが描かれているから。登場人物の個性は強めですが、平安時代の暮らしをのぞき見するような感覚で楽しめます。ばけものが苦手な宗孝がばけもの好きな変人・宣能のつきあいで振り回される様におかしみあり。

子麻呂が奔る

黒岩重吾(著)
出版社(レーベル):文藝春秋

厩戸皇太子に仕える調首子麻呂は、今日も事件を追って東奔西走。雪女のように謎めいた旅の女性の正体、獣婚を装った殺人事件、精力絶倫の秘薬として評判の毒茸など、6つの難事件が待ち受ける!

親近感たっぷりの主人公・子麻呂の活躍から当時の庶民の暮らし、子麻呂を取り巻く人々、役人たちの駆け引きなどにフィーチャー。活き活きとした文章で一気に読み進められる一冊。親近感がありながらも凄腕な感じが漂う子麻呂のモテキャラぶりにも注目!

遺譜 浅見光彦最後の事件

内田康夫(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫

浅見光彦は、本人が知らない間に企画された34歳の誕生日パーティに際し、ドイツ人ヴァイオリニスト、アリシアに頼まれ共に丹波篠山へ赴く。アリシアは祖母に、彼の地で男に託された楽譜を預かってくるように言われていた。祖母が託した「遺譜」はどこにあるのかーー。

日本とドイツ、過去と現在を行き来しながら展開する物語。「最後の事件」の文字に終わる寂しさを感じつつも、先が知りたい欲が勝ってしまい、ページをめくる手が止まりません。光彦さんが過去に知り合った女性たちがたくさん出てくるところに、ラストだと実感させられます。ラストなのかどうなのかは下巻まで読んでから最終判断を!

古代天皇の秘密

高木彬光(著)
出版社(レーベル):KADOKAWA/角川文庫
※現在は電子書籍のみ発売中

名探偵・神津恭介がバイクにはねられ入院した。病床を見舞ったよきパートナー松下研三は、療養中の恭介の退屈しのぎに、ひとつの提案をした。「成吉思汗の秘密」「邪馬台国の秘密」に続き、もう一度ベッドディテクティブを試みてはどうかというのだ。日本古代史の大きな謎、神武天皇は実在したか、ヤマト朝廷の統一は何を意味しているのか……。厚いベールに閉ざされた日本の成立を推理しようと。恭介の名推理は果たして歴史の闇に光を当てることが出来るのかーー。

療養中でも名探偵・神津恭介は鮮やかな推理で読者を魅了します。神津恭介がベッドの上で推理を披露するのはこれで3度目。神津恭介の推理で全貌を知り、日本古代史に興味を持つ入口にするのも良いかもしれません。知った上で、となるとちょっぴりハードルは高め。日本古代史はあまり詳しくない……という方は、神津恭介の頭の回転の速さなど、推理力の凄さにシフトして楽しむのがおすすめです。

ミス・マープルと13の謎

アガサ・クリスティ(著) 深町眞理子(訳)
出版社(レーベル):東京創元社

「未解決の謎か」。ある夜、ミス・マープルの家に集った客が口にしたその言葉がきっかけで、<火曜の夜>クラブが結成された。毎週火曜日の夜、ひとりが個人的に知っている謎を提示し、ほかの5人が推理を披露する。

凶器なき不可解な殺人「アシュタルテの祠」、動機と機会の奇妙な交錯「動機対機会」など傑作ぞろいの13編からなる短編集。ウィットに富んだマープルの魅力がたっぷり詰まっています。謎解きに参加するメンバーは前半の6編、後半の7編で違っていますが、いつも謎を解くのはミス・マープル。侮れないおばあちゃんぶりをフルに発揮しています。

最後に

歴史ミステリーは謎解きと歴史が一緒に楽しめるジャンルです。シリーズものが多いことからも人気のジャンルだと分かります。時代背景を知れば、没入感もグッと深まり、よりトリックにうなる!なんてこともしばしば。歴史とミステリー、一粒で二度おいしいジャンルにハマるきっかけになる一冊を探してみてください。

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タナカシノブ
紹介文:2015年9月よりフリーライターとして活動中。映画、ライブ、歌舞伎、落語、美術館にふらりと行くのが好き。